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鹿の王 上

以下の文章は自分の読書感想を思いつくまま書いたもの。個人の主観を多分に含んでいるため、苦手な方は回れ右してください。

本の情報(読了日2022/2/23)
書名:鹿の王 上 生き残った者
作者:上橋菜穂子
出版社:角川書店
ISBN:978-4-04-101888-0

この本は、2人の主人公元奴隷のヴァンと医術師ホッサルが織りなす物語である。

8年前、この本が書店に並んでいた頃ちょうど「獣の奏者」を読んでいた。「守り人」シリーズを次に読もうか、新刊のこの本を読もうか迷った。しかし、その分厚さと日々の忙しさからどちらも読まず、獣の奏者を読み込むことにした。

今、この作品が映画化しており上映中だそうだ。友人がこの映画は泣ける、とてもおもしろかったと熱弁を振るっていた。これを機に読んでみようと思い、文庫本ではなくあえて発刊当時読みたかったハードカバーを手にとった。

まだ上巻しか読んでいないにも関わらず、この本が映画化されるのは当然だと思った。獣の奏者以上に面白い。

とくに、ストーリー展開が最高だ。奴隷落ちした主人公ヴァンはある病にかかるも、なんとか生き延びユナという幼子を拾い、各地を放浪するようになる。一方、医術師ホッサルはこの病の治療法を追って旅をする。

こんな内容だ。半分作品を読んだにも関わらず病の真相の全体像がうっすら見える程度なのが腹立たしく、もどかしいものの、待ち遠しく感じる。大きく複雑で驚くような真相が隠れているみたいでハラハラする。

あらゆる分野に関する専門知識、それらをわかりやすく物語に組み入れる手腕は相当なものだと思う。医学や部族文化、社会学の要素を組み込んでおり一冊の本に対して膨大な量の情報量が込められている。これにも関わらず、まったくくどくない。単なる冒険小説としても読むことができ、専門知識の入門書としても読むことができる。

しかも、獣の奏者以上の詳細な情景描写が凄まじい。森に関する描写ひとつとっても、まるで実際にその場にいるかのように感じることができ、臨場感がすごい。この感覚は読んだことがある人にしかわからないのではなかろうか。

登場人物たちのキャラクターも魅力的で、どの人物をとっても1つの物語として成立しそうだ。無限に解釈できそうだと思った。

この度映画化された内容ではどうやら、ヴァンが拾った幼子ユナが主人公らしい。原作とは違う視点から語られるであろうことから、下巻を読み終わったら映画のほうも見に行きたいと思う。

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