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Fontana Muraの夏

johiroshi
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Fontana Muraの夏

2023年の8〜9月の間はRifugio Fontana Muraという山小屋で過ごしていた。

「Rifugio」とはイタリア語で「避難所」という意味だが、日本語で言うところの山の避難所とは少し趣が異なる。日本の山では山頂、または山道に古屋があることは稀で、行ったことがないけれど富士山の山小屋はイタリアのRifugioと同じと思われる。寝るところがあって、ご飯が食べられる場所。登山の道中で寝ることをビバークと言うが、イタリアの「ビバッコ」は食べ物の提供がない宿だけの場所を指す。それでも日本で言う避難小屋よリはかなりマシで。暖炉もあるし、調理器具もあったりする。ベッドがあるだけでなく、毛布があることもある。水や薪は流石に自分で調達しなければならないが、一度でも本格的な山登りを経験したことがある人ならばこの待遇に快適さを覚えることは間違いない。

Fontana Muraはピエモンテ州のトリノ県にある。近隣の町はCoazze。そう、あの有名なCervin di Coazzeが生まれた町。バルバレスコで働いていた時にとっても好きなチーズだったからどんな町かと思えばほんとうに小さな町。Cervin di Coazzeの生産者も片手で余裕で数えられるくらいしかない。びっくりした。Fontana Muraの標高は1,700mほどで、山小屋からはトリノの夜景が眺められる。Provaの時にオーナーにそのように紹介してもらったが、正直なところ山から夜景が見えるのは僕にとってはあまり意味を持たない。星空の方がずっと好きだから。

Fontana Muraは山の頂上にあるわけではなく、その道中にある。頂上からはさらに別の山や山小屋へ縦断できるので登山者、と言うよりもハイキングの方が適切、は山小屋で食事を摂ったり、疲れた体にビールを流し込んだり、眠りに来たりする。

Fontana Muraの夏は毎日営業しており、平日はそれほど多くの人は来ないが土日はまあまあ来る。といっても多くても100人はいかないくらい。僕は朝8時半に起きて朝食を摂り、それから営業の準備。たいした準備はないので12時までには大体終わり、お客さんの到着を少し待ち、昼の営業が終わるのは15時くらい。その後はご飯を食べて、少しだべったり休憩をして、17時半くらいから夜の営業に備える。終わりの時間はその日の予約状況によるが、夜は多くても20人くらい。準備さえすればキッチンは一人でも回せる。お客さんの帰りを待って、21時から23時くらいに晩御飯を食べる。

当時一緒に働いていたのはオーナー夫妻を覗くと全員20代前半の若者で、そんな中に30代の日本人が入るのはなかなか貴重な体験だった。使うイタリア語も今まで学んできたものとはちょっと違くて。いわゆるFワードを沢山覚えた。一つ前の職場も、その前の職場も日本人がいる環境だったので、突っ込んだ会話は日本語でなんとかできたけれど初めてイタリア語だけで仕事をした場所。仕事でよく使うイタリア語もここで結構な数覚えた。

この職場はいろいろあって1月に去ることになるのだが、夏の時期は本当に良かった。ここに来る前も標高1,400mのヴァッレ・ダオスタで過ごしていたけれど、標高が1,700mになると本当に快適。夏なのに涼しい。僕は2022年の秋にイタリアに来たので、本来初めてのイタリアの夏を体験するはずだったのだが、ずっと標高の高いところで過ごしているのでイタリアの夏をまだ知らない。1年半も夏から遠ざかっていると夏が来るのが怖くなってくる。

夜は若者どもはタバコを吸って駄弁ったりカード遊びに興じたりする。流石にそのノリはもう持ち合わせていないので僕はさっさと寝ていた。でもアニメ好きな子と一緒に呪術廻戦を観たのはいい思い出。

(2024年4月23日現在の記録)

Grazie per leggere. Ci vediamo. 読んでくれてありがとう。また会おう!