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近況(2024年6月1日)

LA ALEGRAという山の中にあるアグリツーリズモに滞在して2ヶ月が過ぎた。

1月末にトリノを発って、ミラノで2ヶ月過ごして。勢いでフリウリに出てきたけれど、まさかこのアグリツーリズモに2ヶ月も滞在するとは思ってもいなかった。

滞在し続けている(滞在し続けなければならない)理由はいくつかあるのだけれど、その一つは居心地がいいからだと思う。

イタリアに来る前からアグリツーリズモ自体には興味を持っていて。日本でイタリア料理を食べているときに「ロカンダ」という宿泊施設併設のレストランの存在を知ってからというものの、「泊まれる・食べれる」という営業形態になんとなく惹かれていた。イタリアに来てからロカンダ自体はそれほど多いわけでもなく、またロカンダ自体がB&B的なものを指すと知ってからはアグリツーリズもへの関心が強くなった。イタリアに来て初めて行ったアグリツーリズモはピエモンテのIl Buonvicino(余談だけれど"Buonvicino"という単語の意味が今ではすっと頭に入ってくる)。2022年12月。そこでの体験や食事が気に入った、というのも影響している。

LA ALEGRAでは草刈りや農業、動物の世話のお手伝いとレストラン営業を手伝っている。

ここのレストランは少し変わっていて、食材はイタリアの物を使っているけれど、料理は地中海風寄り。コックが元々そっちのお店で働いていたから。トルコ(?)由来の揚げ物ファラッフェルが前菜にあったりする。フリウリではサウニアの燻製プロシュートやじゃがいもとチーズを焼き上げたフリッコ、餃子そっくりだけれど味は全然違うキャルソンなどが有名だけれど、ここではそれらの品は一切出していない。春の野草であるスクロピットのニョッキ、ビーツのニョッキ、ポレンタのニョッキなど山と自然由来のプリモピアットをメインとしている。中でも僕のイチオシは栗のニョッキ。シナモン、干し葡萄、燻製リコッタ、胡桃、きび砂糖、バターで味付けされたこの品を食べたときは美味しくて本当に驚いた。日本にぜひ持って帰りたいレシピ。

何せ2ヶ月もいるから仕込みの類はもうほとんど覚えてしまった。羊の足の捌き方もいくらか慣れたし、ニワトコの花やミントの葉から作るシロップも学んだ。手にちくちくする春の野草、イラクサを使ったペーストやフリッタータも学んだ。ティラミスは実はヴェネツィア発祥だということも知ったし、レシピは完全に覚えた。毎週作ってたからね。アレンジし放題。「アグリツーリズモに滞在したら学びたいなー」と思っていたことがほとんど学べた。というのもレストランは基本コック一人。調理補助としてやりたい放題。トンカツやチャーハンなどの日本食をお客様に提供したり、好きなイタリアのドルチェを作ってメニューに採用されたり。僕としては好き放題遊んでいるつもりなのだけれど貢献できているらしい。

やっぱりどうしても料理にばかり熱が入るけれど、その他のこともいろいろやっていて。平日の晴れの日は山から降りてUdine近辺で草刈りをする。手で押すタイプの草刈機はもちろん、背中に背負ったり腕で持つタイプの草刈機の扱いもある程度覚えた。Soffiatoreという送風機、刈り終えた草を掃除するための機械にも慣れ親しんだ。シャワーを浴びるためには薪でボイラーを温めないといけないので薪の扱いはお手のもの。干草を使ったじゃがいもの種まきも覚えたし、7匹くらいいるらしい猫と一緒に何度も二人っきりで夜を過ごした。最近はレパートリーが尽き始めてピザも作り始めた。もちろん小麦粉から。なんだかんだ言ってイタリア人は小麦が好きだからね。喜んでくれるものを作りたくなるというもの。

それでもって、どうして2ヶ月もここにいたかというと、、、

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