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顧客動画は会社を変える「銀の弾丸」

顧客インタビューを動画資料として社内で活用している会社はどれくらいあるだろうか? ほんの数分間のビデオクリップ付きパワーポイントが、時に数十ページの調査レポートやプレゼン資料を凌駕する効果をもたらす。この威力を経験したことのない人たちに伝えたい。

この記事で伝えたいのは「もし社内で動きが悪い」「改善すべきことが滞ってるな」と感じることがあったら・・・お試ししては? ということだ。

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どんな効果があるのか

迷っている経営者の背中を押す、社内に顧客の現状認識を伝える、職場のムードを明るくする・・・など、利用用途は広いが、こうした動画付きパワーポイントは一度納品すると翌年ほぼ100%リピート利用される超人気メニューだ。

 CXリレーションシップ調査実施  
→ 協力可能顧客のグループインタビューを実施 
撮影動画を編集してパワポ資料化 
社内ミーティングなどでの利用 

といった流れで顧客調査の深堀りに利用されるケースが多い。アンケート調査で判明した課題について具体的な体験コメントを取ったり、解決仮説に対するコメントを取ったりと戦略的に利用できるからだ。

証言1
「長年社内で保留されていた案件があったのですが、役員にお客様のインタビュー動画を見せた途端、大号令が出て動き出しました」
証言2
「何度説明してもポカンとした顔をしていた現場スタッフにお客様インタビュー動画を見てもらうようになってから、動きが変わりました!」

顧客インタビュー動画は「シルバーバレット=銀の弾丸」だ。誰にとってもわかりやすく、誰にとってもショッキングで、その衝撃ゆえに閲覧した社内の人々が自発的に問題解決に動き出すのである。

聞き出すテクニックにもよるが、体験上、顧客を5人集めて2時間程度のインタビューをすれば、十中八九の確率で誰も想定していなかった「えっ! 本当?」という体験が出てくる。そのコメント(ほんの数十秒から数分程度)を動画にしてパワーポイントファイルに取り付ける。

こうした顧客インタビュー動画をキッカケに「顧客中心」のへと舵を切って動きだした企業の例をいくつも目撃している。顧客インタビュー動画は企業文化を変える力を持っているし、今後そうした事例は増えてゆくと思う

動画は簡単に撮影&編集できる時代に

数年前までインタビューの動画撮影や編集には専門技術が必要だった。しかしスマートフォンカメラの高機能化と動画編集アプリの進化のおかげで、自作できる環境が整った。専門のサービス会社を使わなくても実行できる。

インタビュー動画撮影に必要なもの
 ● スマートフォン
 ● 動画編集アプリ
 ● 三脚とスマートフォン固定用ステイ

こだわりだすといろいろ欲しくなるが、最低限必要なのは上記の3つ。iPhoneやMacを使っているなら付属のiMovieでそこそこの動画編集ができるので、実質三脚とスマートフォン固定用のステイを購入すればOK。数千円程度の予算だ。

インタビュー対象者はどう集める?

顧客インタビューを自力で実施するのはハードルが高く感じられる(だからこそ、われわれのようなサポートの仕事が成立しているのだけど)。しかしデジタルメディアで募集をかければ協力的な顧客に簡単にアクセスできる。顧客の立場からしても「あなたの体験を聞かせてほしい」とオファーをもらうのは悪い気はしない。

1. WebやSNS、メルマガなどでインタビュー参加希望者を募集する
2. 応募者をWebアンケートに誘導して回答してもらう
3. アンケート回答から対面インタビュー候補者を選んでメールなどで連絡する

顧客の購入履歴やサービス利用履歴の把握をしたほうがよいので、顧客情報との紐付けをする情報をWebアンケートで収集する(またはシステム的に紐付けする)のが望ましい。Webアンケートでは以下の設問を設定しておく。ここでの回答は招待する顧客を選定する基準になる。

・究極の質問または商品やサービスのお気に入り度(0〜10点)
・上記の点数の理由フリーコメント
・これまで利用して「すごくよかった!」と感じた体験フリーコメント
・これまで利用して「がっかりした」体験」と感じた体験フリーコメント

事前に課題やテーマを決めたくなるけれど、最初はあえて欲張らず、「リアルな顧客体験」を聞くとしておいたほうがいい。

・インタビュー場所は会社の会議室がオススメ
・平日夜の1時間半ほど、または土日の開催が集まりやすい
・協力顧客には謝礼や交通費は準備する
・インタビュア役1名と記録係1名

なお、B2C企業だけでなくB2B企業でも顧客インタビューは可能である。ただし自社の営業担当を通じて対応してくれそうな方をリスト化して個別に依頼の連絡をする形になる。依頼の際に動画撮影したい旨を含めてお願いするのだ。B2B企業のWebページにある利用企業担当者のインタビューの段取りだ(動画が一般公開されない前提であればWebページ用インタビューよりは交渉しやすいはず)。

インタビューはどう進める?

顧客インタビューの進め方・聞き方には名著がある。「お客様の"生の声"を聞くインタビュー調査のすすめ方」(福井遥子著)だ。2010年の書籍だがユニ・チャームに勤務されていた著者・福井さんの実体験ノウハウが詰まっている。

こうした書籍やWebなどのノウハウは非常に参考になるが、どんなに準備をしていても、準備をしていなくても「はじめてお客様の声を聞くので不慣れですが」と前置きして丁寧に顧客の利用体験感想を聞き出せればよい。2〜3名程度の顧客に来てもらって話を聞くグループインタビューのスタイルがお互いに緊張しにくく、進めやすいと思う。

・協力顧客には「インタビューを動画撮影して社内で利用する」ことを伝える
・上記について事前承諾を取っておく
・インタビュー中は飲み物やお菓子などを提供する

インタビューはこんな内容がオススメだ。

1. 自社製品やサービスブランドに限らず・・・
 ・同様の商品やサービス利用の際にどんなふうに情報を得ているか
 ・購入までには通常どんな検討手順を踏んでいるか
 ・面白いと思った/印象に残っている商品やサービスは?

2. 自社製品やサービスについて・・・
 ・購入しようと決めた理由
 ・利用して好感した体験(Webアンケートで聞いたことを深堀り)
 ・利用してがっかりした体験(Webアンケートで聞いたことを深堀り)
 ・利用して「もっとこうなるといいな」と感じたこと

このインタビューの様子を録画する。
自社製品やサービスについていきなり聞きたくなるのが人情だが、顧客がどういう背景の中で生活しているかを知るためにも、周辺情報から聞くほうが話もはずみやすくなる。

顧客インタビューでのいちばんのポイントは顧客が実際に過去に実際にした行動とその理由を聞くこと。顧客にはひたすら過去のことを思い出してもらい、それを丁寧に聞き出すようにする。

「この商品(サービス)について、どう感じてるか教えてください」「もっと購入したくなるためにはどう変わったらよいですか?」など、その場の思いつきで回答できてしまう質問は、聞いてもいいが、本音とはまるで異なる回答を得ることが多い。過去の経験を聞くのが大切だ。

動画撮影時のポイント
・回答者の顔がよく写る場所から撮影する
・声がよく撮れるように、できるだけ近くで撮影する
・記録者はスプレッドシートなどに発言時刻と発言内容をメモする
 (どのタイミングでどんな話をしたか、頭出しするための資料として使う)
・動画撮影は区切らず、頭からお尻まで撮り切る。
 (撮影開始時間を合わせれば記録との突き合わせがラク)

音声を明瞭に録音できないとあとで「これ、なんて言ってたっけ?」と辛いことになる。スマートフォン撮影では2メートル以上離れてしまうと、拾える音量が小さくなったり、音がこもったりして不明瞭になる。インタビューに利用する部屋で事前に確認しておくなど注意が必要だ。

撮影動画をどう編集・管理するか

1. 記録メモをもとに「注目の発言」をピックアップする
2. ピックアップした発言部分の動画を切り出す(最大3分程度に)
3.  切り出した動画をパワーポイントに貼り付けて、タイトルを付ける

社内で見せるシーンを考えると、動画は1テーマ1カットで、できるだけ尺は短いほうがいい。そして切り出したシーンごとにパワポに貼り付ける。

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こうすることで顧客インタビュー動画はパワーポイント書類として管理できるようになる。タイトルを見れば何についての話題なのかがすぐにわかるし、必要な発言部分だけをパワポのページとして手軽に引用できる(顧客のプライバシーの問題があるので、取り扱いについては細心の注意が必要)。

パワポのnote機能などのメモ部分を利用して、「開発部に周知させたい話題」「メンバーを元気づける話」などのタグづけをしておくのも一手だ。

顧客インタビュー動画の威力をぜひ実感してもらいたい。

中谷健一
トリムタブジャパン代表



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