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もうひとりの自分 第6話

私がどこの場所か知らない空き家に住み始めて
大体半年が経った。この空き家は二階建てであるが
二階の部屋には上がったことがない。
何故なら階段が壊れているからである。崩れるように
階段が壊れ、どこかに脚立がないかぎり昇れない。
しかし昇る気なんかさらさらない。上がっても
どうせいい部屋ではないからだ。
お金があるから修繕すればいい。だがそもそも
私の所有でもないし、まだ子供だし、こういった
潜伏生活もいつかは破綻を迎える。私は今それを
考えながら生活している。

さて夢の中の私はなぜか中学2年になっていた。
前回見た受験勉強や好成績とはうって変わって
成績が悪い。悪いどころか一生懸命勉強しても
テストとなると「あれ?これ習ったかな?」と
思わんばかり全く見たことがない問題文ばかりだ。
三角関数、数列、統計。しまいにはなぜか会計の
問題まで出てきたことがあった。どう見ても
高校かあるいは簿記の資格試験に出てきそうなもの
ばかりである。

通知表を見ればオール1。しかし影が薄い、私の前の
席が前回は女子だったのが今回はいかにもプロの力士だろと思うほど巨漢の男子。前回よりも数倍黒板が見えない。

写真はイメージです。
写真はイメージです。

何よりもひどいのが忘れ物である。しかし好きで
忘れ物をしているわけではない。
実はその原因が時間割である。

毎回コロコロ変わる。ある曜日では1日中、
国語だったことがある。

コロコロ変わるせいで忘れてしまう。こんなことしてはいけないが、他のクラスに忍び込み次受ける科目の
教科書を拝借と称して盗んでいる。本当はやっては
いけないが。
そんなことしているうち学校内で案の定教科書の
盗難騒ぎが起こってしまい、これに怒った生徒指導が
全校生徒を体育館に集めて犯人探しを始めた。

「さあ正直に出てこい!そうすれば俺様特製の
歯が飛ぶほど痛いビンタをお見舞いしてやるからな!」

特製ってなんだよ?結局正直に名乗り出る者は
いなかった。そのころの私はトイレに隠れていた。
教科書を拝借と称して盗んだ張本人は今トイレにいる。
生徒たちの声が聞こえてきた。しかし楽しい雰囲気では
なかった。中には大泣きする生徒もいた。
何があった?私はこっそり屋上に来た。聞こえてくる
言葉は
「誰も名乗り出ないせいで全校生徒全員教師たちから
ビンタを受けたぜ」
「俺なんかそのせいで歯が2本取れたよ」
「僕なんか耳から出血して右耳が聞こえないよ」

屋上にいた私はその会話を聞いて戦慄する。
私はこのままではまずいと思い勝手に早退すること
にした。どうせ目立たないしやってもいいだろう。

私はブツブツと呟きながら校門から出ようとした。
「大体時間割コロコロ変えてたらわかんねえだろ!
勝手な学校だ!心がないのかあいつら。大体何をして
も優しくないし、あの前に座っているデブのせいで
まともに勉強できねえし。潰れてしまえこんな学校!」
「わかった。潰してやるよ!おまえごとな!」
「誰!?」
後ろを振り向いた瞬間、そこにいたのは全校生徒と教師たち。全員私を鋭いほどの眼差しで睨みつける。
それぞれ口から鼻から耳から血が流れていた。
「知ってたよ。おまえの仕業ってことをな。
別にいいだろ。俺たちが決めた時間割にケチつけて
何になる?」
竹刀を持った生徒指導の教師が生徒たちに合図する。
それぞれ包丁、ナイフ、鉄パイプ、鋸など持っていた。
「さあ、やっちまええええ」
「ギャーーーーーーー!!!」

目を覚ました。大量の汗が流れていた。
もう学生時代の夢はゴリゴリだ。

第6話おわり

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