3a “Photographer's Eye”を獲得しましょう


⚫“Photographer's Eye“とは「写真家的ものの見方」のこと。

⚫“Photographer's Eye“はまず最初に獲得したい写真家の感覚であり、最終的にふたたびたどり着くべき目標。

⚫見飽きたはずの身の回りのモノ全てが被写体であると知ろう。

⚫写真を撮ることによって、世界を 「見る」 ことの素晴らしさに気付くことができる。

“Photographer's Eye”とは

第三章は「よい写真のための撮影術」と題してやっていきますが、まず最初に目指したいのは“Photographer's Eye”を獲得しよう、ということです。

“Photographer's Eye”とは、私が写真を体系的に学んだアメリカの“New York Institute of Photography”で提唱されていた言葉なのですが、日本語にするとすれば「写真家的ものの見かた」と訳せるかもしれません。

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カメラを持ってシャッターを切る前に、写真に撮るべき被写体を見つける。その場にあるモノ、風景、人物、あらゆる対象物に「おっ?いいな」と思ってカメラを向ける、
そういった感性(あまり多用したくない日本語ですが)のことを、“Photographer's Eye”といい、それを身に付けることが写真家たる第一歩であると教えられたのです。

もちろん、そういった感性、価値観はそれぞれ違っていて、写真家の数だけあるものと言っても過言ではありません。しかし、それを持っていると持っていないとでは歴然とした違いが現れるのが『Photographer's Eye』なのです。

しかし、一体全体、どうやったら身に付くものなのでしょうか?


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残念ながら、これという手段が確立されているわけではありません。実に抽象的な、それぞれの心のもちようのお話ですからね。

しかし、どうやっていけばそれが身に付くのか、それためのヒントはいくつかあります。
そのための道筋をお話するのが、実はこの第三章の目的でもあるのです。

第三章全体を通じて、いかに“Photographer's Eye”を身に付けていくか、そのヒントをお話していきたいと思います。

それはそのまま、写真撮影の基本的考え方であり、写真の基礎そのものでもあります。

しかし、それを改めて順を追って確認していくことで、誰にも負けない“Photographer's Eye”を身に付けることができるはずです。

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さて、“Photographer’s Eye”を身につけるために、まず最初に申し上げておきたいことがあります。

それは、カメラを持ったら、まずあらゆる先入観を捨てて、赤ちゃんのように新鮮な目で世界を見てみよう、ということです。

例外なく全ての人がそうですが、それぞれ今日まで生きてきた積み重ねの中で、知らず知らずのうちに世界を「見慣れたもの」として、何もかも知っている気持ちになってしまうものです。

毎日通る近所の道、家族や近所の人の顔、乗り慣れた交通機関、季節ごとの植物の変化や毎日の空の色……目に映るあらゆるものは、全て何ら驚きもない、見飽きた風景として認識しているでしょう。

しかし、カメラを持ってファインダーを通して見たとき、写真に撮ってパソコンのスクリーンやプリントで見るとき、あなたは気付くのです。

見飽きて全て知っていたはずの身の回りのモノが、全て写真の被写体だったことに。

これは実は、私自身の体験談でもあります。カメラを持ち、ファインダーをのぞき、レンズを通して見た世界、写真として切り取って持ち帰ることのできる世界を知ったとき、世界のあらゆるものが違って見えた気がしたものです。

そこではじめて、世界の美しさ、素晴らしさに気付いたような、まわりの世界が一瞬にして模様替えをしたような感覚。

見慣れた世界、見飽きたはずの世界が、立ち止まってファインダーを通して見るだけですべてが被写体であると気付いたのです。

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カラー写真によるストリートスナップの元祖とも言われる写真家、ソール・ライターは

「あらゆるものに、被写体としての価値がある」

と、映画「写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと」の中で述べています。

そして、写真が人生に与えてくれたこととして

「写真は「見る」ことを教えてくれる。世界(の素晴らしさ)に気付かせてくれる」

と語っています。

写真の素晴らしさ、カメラ趣味(プロアマ問わず)の素晴らしさは、この「世界を見る新しい目」が獲得できるところにある、と私は思います。

そしてそれはただひとつの正解があるわけではなく、カメラマンの数だけ正解があるのです。そんな、自分だけの視点、自分だけの価値観、自分だけの“Photographer’s Eye”を見つけることが、ひいては自分だけの作風をもつ、一人前のフォトグラファーへ至る道でもあるのだと私は思います。

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