2c 露出の三要素の2〜絞り

⚫「絞り」はレンズの中の「絞り羽根」の機能。

⚫「F値」の数字が小さいほど絞りは開いている=明るい。

⚫絞りにも「段」があるので覚えておくと便利。

⚫「F値」は小さいほどアウトフォーカスはボケる。

『絞り』とは

さて、三要素のその2、は絞りです。

絞りは2aでご説明した通り、カメラという暗い箱に開いた窓の広さ、大きさのことです。レンズの中の「絞り羽根」という部品が動くことで窓の広さを調整するのですが、その広さを数字で表します。

光を通す部分はほぼガラスでできているレンズの中で、唯一ガラスじゃない部品が絞り羽根で、レンズの口径をぎゅっと絞る「窓」としての機能を果たしています。なので「絞り」という日本語は的を射ていますね。

絞りの単位は「F値」で表されます。f1.2、f1.4、f2.8、f4、f5.6……という具合です。

画像1

シャッタースピードの場合は1秒の何分の1、ということで分かりやすいと思いますが、F値はちょっと直感的ではないですね。

さらに、F値は「数字が小さいほど窓が広い状態を表す」というのがますます直感的ではないです。というのは、F値の数字はしっかりと計算式で求められるものなんですね。詳しくはワタシも説明できませんが(笑)、

レンズの最小F値 = レンズの口径 ÷ 焦点距離

で求められます。というわけで難しいので、もうこれは「F値は数字が小さいほど窓が広い状態を表す」と覚えていただくしかありません。

しかし、上の公式をみておわかりいただけると思いますが、最小F値はレンズごとに違うのです。

F値が小さいほど、窓は大きく開いていて、より多くの光を取りこめます。

レンズごとに「最小F値」は物理的に決まっていますから、最小F値の値がレンズの個性を現す最も大きな手がかりとなります。

最小F値が小さいレンズほど、「明るいレンズ」なんて言い方をします。

画像2

絞りの『段』

さて、シャッタースピードの項目で「段」についてご説明しましたが、絞りにも「段」の考え方があります。

絞りの1段ごとの数列は、以下のようになります。

画像3

シャッタースピードのときと同じく、この数列も1段あがるごとに光の量が1/2になっていきます。言い換えると、1段ごとに暗くなっていく、ということですね。

さて、ここで「露出トライアングル」の考え方を思い出してください。露出の結果はトライアングルのバランスによって得らるものですよね。

では、いま現在あなたの手元のカメラの設定がこうなっているとしましょう。

シャッタースピード1/125
絞りf4
ISO400

さてこのとき、あなたはシャッタースピードを2段落として1/30にして、ちょっとだけスローシャッターの写真を撮りたいと思いました。

その場合、得られる露出はそのまま同じにしたいと思ったら、絞りをいくつに調整したらいいでしょう?

そうです。その場合、絞りを2段絞ってf8にすればいいわけです。

シャッタースピードが2段分明るくなったので、その分絞りで2段分暗くしてあげれば、全体としての露出バランスは変わらないということです。

これが、「段」という考え方の便利なところなのです。

逆の場合もまた同じです。より速いシャッタースピードを得ようと思ったら、絞りを開いてF値を小さくしてやればいいわけですね。

なので、英語の場合は、最小絞り値の小さい、明るいレンズのことを「ハイスピードレンズ」などと言います。速いシャッタースピードを得られるレンズ、という意味ですね。

​「ボケを生かした写真」 の台頭

ここまでは、「露出」の考え方に基づいた、絞りの役割についてご説明してきました。

しかし、最近の流行りでは、絞り値に求められるのは「ボケ」の方かもしれません。

詳しくはレンズのご説明の項目に譲りますが、ここでは簡単に「絞り」と「ボケ」の基本的な関係をお話しましょう。

画像4

F8  1/250  ISO6400

ボケ、とは何か。ボケとは単純に、フォーカスの合ってない部分、アウトフォーカスした部分の状態のことをいいます。ピントが合ってないからボケてる、というわけですね。

もともとは、「ピンボケ写真」なんて言葉もあった通り、ピントのボケた写真は失敗写真の代名詞でした。一般名詞としても、ボケた人、ボケた答え、など「ボケ」にいい意味はありませんでした(お笑いの世界は別ですが)。

そもそも、人間の肉眼の世界には基本的に「ボケ」はありませんよね。人間の目は基本的にパンフォーカス(全てにピントが合った状態)として認識されるため、ボケをボケとして認識するためには、写真として出力される必要があるのです。

ところが写真の世界で、アウトフォーカスの部分を写真の表現として認識するようになると、ボケというものがにわかにクローズアップされてきました。ボケの美しい写真、ボケを生かして被写体を浮かび上がらせるような写真を撮りたい、とみんなが思うようになってきたのです。

最近では、「一眼レフみたいな写真」といったらそれはボケの大きな写真、というイメージでしょう。一眼レフのレンズだからこそ得られる大きなボケ、というわけですね。

​絞りとボケ

画像5

F2.8  1/125  ISO2500

では、「ボケ」という観点から絞りを考えてみましょう。

まず、ボケが大きい(より形を残さないほどボケてる)のは、F値の小さな、絞りを開いた状態です。f8よりf5.6、f4よりf1.4の方がよりアウトフォーカスがたくさんボケます。

なので、最小F値が小さいレンズは、よりボケやすいレンズ、と考えていただいていいでしょう。

特に、ズームレンズより単焦点レンズの方がより最小F値が小さい(レンズの構造上の問題で)ので、よりたくさんボケを得ようと思ったら、最小F値の小さな、より明るい単焦点レンズを使うといいわけです。

ただし、ボケというのは、被写体と背景(前景)との相対的な距離感で決まります。なので、より大きなボケを得ようと思ったら、被写体の背景を工夫して、より遠くなるようにしなければなりません。どんなにF値の小さな単焦点レンズを使っても、モデルのすぐ後ろに壁があるような状況では、背景のボケた写真にはならないということです。

​絞りたいときもある

ボケを生かした写真が一眼レフらしくて人気、ではありますが、写真のジャンルや撮影状況によっては、絞りを絞りたい(変な日本語……)ときもあります。

下のクルマの写真を見てください。

まずこれは、クルマを主題にしていますが風景写真です。なので、背景もボケさせずにキレイにフォーカスが来ていてほしい。

さらに、撮影状況として、太陽が画面右手に見切れれたところにある半逆光の状態にあります。逆光の場合、絞りを絞らないと画面内に「フレア」や 「ゴースト」が出やすく、画像の解像度が低下することもあるのです。

もちろんレンズの性能や特性にもよりますが、人間の目だって、太陽光線が入ってきたら目を細めますよね。​

画像7

F11  1/200  ISO200


それと全くいっしょで、光が多すぎるときは絞りを絞ります。この場合はF11まで絞っていますね。

「絞り」の本来の役割は、「カメラの窓の大きさの調整」です。

最近のレンズやカメラは、極端な状況でもなるべく画像が破綻しないような高性能なものが多いですが、レンズの性能を生かしてムリなく高画質を得るためにはある程度絞った方が無難です。

基本的には絞りの役割は「適性露出のための光の調整」であるということを覚えておいてください。


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