火事について語るときに我々の語ること -0-

この記事はこんな人におすすめです。

・いままさに家が燃えていて、このあとの対処などの流れを知りたい

・家は燃えていないけど、燃えた場合の対応などを知りたい

・家が燃えた人間の話にそこまで深い興味はないが、まあ知りたい。

 「火事っていうのはね、実際に起こるまでよもや自分がそんなことを起こすはずもない、と大抵の人が思っているんですよ。寝タバコの常習者でも、実際に朝起きると運良く必ず火が消えているものだから、まさか火事になるなんて全然思わない。そればかりかね、実際そういう人が起こした火事の原因は、タバコじゃなくて冷蔵庫のコンセントに積もったほこりが、抜けかかった端子部分に触れて発火した、なんてことだったりします。だから、火事は事故なんです。」僕が消防署の副署長から聞いた言葉です。
優しい副署長が言うように、大抵の人間は火事について他人事だと思っていて、私自身もまったくもって例外ではありませんでした。

天才的な泥酔の常習犯であっても、火事となると話は別です。火の始末は流石にするし、刃物などは包丁スタンドに必ずしまう程度の習慣は身についています。トイレはちゃんと流すし、なんなら男性だが、座ったまま小さい用を足し、定期的に蓋裏をチェックしては掃除している。サッカー観戦の最中にスタジアムを何故か飛び出し、電車に乗った挙句宇都宮と上野間を一往復して終電で上野についた、その間の記憶がまったくない、という経験をした人間でも、火事は別です。すくなくとも13年前の自分はそう思っておりました。

 そんな私が火事を起こしてしまった経緯と顛末を今からお話ししたいと思います。なぜ話すのか、と問われればまずはあくまで記録的な目的からですが、同時に幾人かの「潜伏予備軍」に対し、警鐘を鳴らすという意図も含めています。なので、幾分かは教訓めいたものがあるはずであるし、思い当たるようなことがある人間には、即刻習慣を変え、行動変容を求めます。即刻。まじで。
火事は人生を変えてしまいます。少なくとも私はあのとき、物理的には死ななかったが社会的コミュニティ的イデオロギー的に死んでいてもおかしくなかった。ただ、文字通り火中の栗を拾った形で、最強に運が良く生き残れただけなのです。火事ダメ、ぜったい。

ということで、これから火事の話をします。この話は以下1〜3のパートにわかれます。

1.家が燃えたときに何を食う?
2.消防署の攻防
3.火事について語るときに人にはこう言われる

 なおすごく重要なことなので先に申し上げるが、前述の通り私が経験した火災は今から13年前の出来事で、死者・怪我人はおろか隣家の家屋への被害はまったくありません。

 被害は私と私の家族のみ。もちろん健康に被害はなく、家屋と物損のみでした。具体的には:家族の衣類、家財道具の一部。出火元が私の部屋だったため以下は全焼した:私の衣類、売れば300万くらいは稼げたであろうマジックザギャザリングのデッキ4つ、そして大量のレコードとCDと本、画集、大学入学時に購入してもらった古代遺跡の石板のようなダイナブック(実際それは溶けて、古代のオーパーツのような鉄の板になった)、そして大方の写真です。

冒頭に伝えておくべき警告として、火事になってなんだかんだ一番しんどいのは、写真が無くなることだと申し上げておきます。

いまはデジタルだから問題ないでしょうが、平成、昭和をまあまあ生きている皆さんは本当にご注意ください。火事は火と水で、ありとあらゆる紙をボロクズにする。思い出の多寡を判別すらしない。結婚式に出席して「あれ、こいつ幼少期の写真少ねえな」と思ったら、今後は私同様火の記憶を有する者と見ても、あながち間違いではない可能性がありますので、今後出席する際にはどうぞチェックしてみてください。「幼少期の写真はありません」なんてテロップが流れたら、追及せず察してください。あっ火事だな、と。

とまあここまでお伝えしたところでだいぶ皆さんの準備もできたようですが、前置きが長くなってしまったからここまでを本筋の枕としておきましょう。

何故火事が起きたか、何を食ったのか、そして消防署の攻防とは、それはこの次にお話ししていくとして、何故社会的コミュニティ的イデオロギー的、どんな側面からも死ぬはずの私が生き残っていたか。それは全て次回、お話しさせていただきます。


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