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地域の自治会を退会した話。
昨年、一軒家を建てた。
元々一軒家を持ちたいとも特に思っていなくて、
なんとなく妻と一緒に見に行った住宅展示場で、とても良い営業マンの方に出会い、
あれよあれよと話が進んだ結果、ほとんど成り行きで家を建ててしまった。
今となってはもう少しこだわっても良かったかなと思うが、
あの面倒くさい打ち合わせをもう二度としたくないとは思う。
住み始めてみると意外と快適で、建てて良かったなとは思っているのだが、
唯一頭を悩ませるものがあった。
地域の自治会である。
元々住んでいたのがアパートだったこともあり、自治会費は家賃から引かれていたので、
自治会が何をしているのかも、その費用が何に使われているのかも、そもそも誰が管理しているのかも全く知らなかった。
そして、昨年引っ越してきたと同時に、自治会の洗礼が始まった。
隣りの家に住むお婆さんが回覧板を持ってきたことが始まりだった。
そもそも回覧板なんてものがいまだに存在しているなんて思っていなかった。
隣りのお婆さんは開口一番、
「次は山下さんのところへ回して」と言った。
越してきてすぐだったので、山下さんが誰だかも分からなかったので、どこですかと聞き返すと、
「目の前のお家に決まってるじゃない」と露骨に嫌な顔をされた。
こちらも少しムッとして、分かりましたと答えた。
驚いたのはその頻度と内容だった。
ほぼ3日に1回くらいのペースで回覧板が回ってくる。
一体なにをそんなに回覧することがあるのかと思ったのだが、
参加者ゼロの地域のイベントや、無駄だとしか思えない自治会役員の会議の日程などが書かれていた。
中でも驚いたというか少し引いてしまったのが、同じ地区で生まれた子供の名前と性別、住所が載っていたことだ。
「班の皆さんでお祝い金を渡しました」と書かれていたが、
このプライバシーの時代に、子供の名前や住所が書かれた紙が挟まれていること自体かなり気持ち悪いと思ってしまった。
そしてそれから、自治会を抜ける方法はないかと考え始めた。
例えば学校のPTAなどは、自分の子供のためと思えば引き受けられることもあるだろうが、
自治会の仕事といえば、地域のためとはいえ自分が参加するわけでもない祭りの企画や、行政の仕事である地元の堤防の草刈り、
結果自治会役員の飲み会費に消えていく自治会費の徴収など、考えれば考えるほど馬鹿馬鹿しいと思ってしまった。
また同じ班内で亡くなった方がいると、それが誰であれお見舞金として一定の金額が徴収される。
本当は班の全員が揃ってお通夜に参列することが慣例らしいのだが、
これについてはあまりにも納得できなかったので、お見舞金だけを出して丁重にお断りをした。
このあたりから、もう心は決まっていた。
白い封筒に退会届を書き入れ、自治会長の家まで行き、直接手渡しで退会の意思を伝えてきた。
その後、あんなにしつこかった回覧板はきっぱりとなくなり、
自治会費の徴収もなくなった。
確かに地域の交流なんかは、今の時代どんどんなくなってきていて、
そういう関係を希薄だと思う人もいるかもしれない。
ただ、家を建て一生住むかもしれない土地で、
そんな風にストレスを感じながら生きるのは絶対に嫌だと思った。
結果として、自治会を抜けて良かったと心から思っている。
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