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シナリオ作法入門―発想・構成・描写の基礎トレーニング(新井一)

※ざっくりいうと

この書籍は、「シナリオ・センター」創立者の故・新井一氏(97年没)が月刊「ドラマ」誌に発表したシナリオ講座を単行本にしたもの。氏は、シナリオでシーンの場所を書く部分(柱)の名づけ親。長年、映画やドラマのシナリオを執筆し、またシナリオライターの指導育成を行う。

良いところ:多くの場数に裏打ちされた類型と基本。ハリウッド至上主義ではない。日本人による日本市場向けのシナリオ作りがある。日本のテレビ(テレビドラマ)全盛期のノウハウが垣間見れる。
良くないところ:引き合いに出す作品が古くなってしまっている。


シナリオは教えられるか、学べるか?

・技術は教えられる。何を書くかは教えられない、教えてはいけない。
・間違っているところは教えられる(統計すると35種類ぐらい)。
・良いところは教えられる(統計すると64種類)。
・20枚シナリオのススメ。絵描きがデッサンで練習するのと同じ。200字詰原稿20枚のシナリオを50枚書けばプロの腕に。

初心者の誤りやすいセリフ10の落し穴

・シナリオは省略の芸術(by城戸四郎)
・無駄なセリフ3つ(過剰セリフ、長ゼリフ、挨拶セリフ)
・伝わらないセリフ4つ(抽象ゼリフ、過少セリフ、分裂セリフ、飛躍ゼリフ)
・面白くないセリフ3つ(説明ゼリフ、英会話ゼリフ、文章体ゼリフ)

シノプシスの上手な書き方

・制作決定させる訴求力(スポンサーが出資したいと思う、制作者が作りたいと思う、視聴者が見たいと思わせるもの)。
・その要因は4つ(今日性、大衆性、魅力、アイデア)。
・ハッキリさせる必要があるもの3つ(どこのテレビ局で何時に放送するものなのか、作品のテーマは何なのか、説得力のある文章になっているか)
・企画意図、様式、キャラクター表も作る

シナリオ上達法十則-「二十枚シナリオ学習法」のすすめ-

・基本を忠実に
・実習をくりかえしする
・一点集中の考え方をする
・ドラマとして無駄省略を知る
・映像技術を理解する
・発想につよくなる
・常に浸っていることが必要
・コツを知る
・書き始めたら途中でやめない
・映画、テレビをよく見る

コンクール応募の要チェックポイント

・オリジナルとは真似だと見えないもの。シナリオはディテール。役が違っていてもディテールが同じなのは注意。
・独自の視点が必要。
・陥りやすい156の欠陥
・コンクール応募の10則(募集規定を守る、ひとくちで言えるストーリー、意表を突いたアイデア、特徴的な素材の取り上げ方、ひとりよがりにならない、俳優さんの言えるセリフにする、ドラマとストーリーを間違えない、段取り芝居にしない、人間を類型的にしない…欲望・目的、ストーリーに感動を。わかりやすく)
・コンクールで出る褒め言葉

ストーリー・23の基本形式とカセの効用

・ストーリーを分類すると23通りある
・カセがドラマ

「出だし」と「素材」の研究

・「張り手」型より人間関係を出せ(テレビドラマのような連続ものは)
・主役の出し方
・トップシーン
・われわれの行動は3つしかない(出会い、中身、別れ)。
・素材は旬のもの。今日性。
・企画でシナリオは決まる。作りたいと思わせる企画書、文庫本の帯にあるような3行ぐらいの文でアピールできるようになれ。
・事件より事情

最新版 シナリオの書き方

・切り口
・語り口

企画書と題名

・企画書5条件(誰にでもわかる記号で書く、二つとない独創力がある、実践を前提としている、極めて論理的構造的と同時に感情的でなくてはならない、説得力がなければならない)
・体裁(要素)5つ(表紙、形式、企画意図、キャラクター表、シノプシス)

カセ(枷)の解説と活用

カセの種類12
・時間的なもの
・秘密性をもつもの
・場所によるもの
・人間関係のもの
・内心
・誤解
・社会的つながりのあるもの
・約束とか掟といわれるもの
・物に関するもの
・状況的なもの
・目に見えないもの
・肉体的なもの
その他

ストーリー創りのヒント

・世界さだめ
・抽象から具象へ
・横の筋-設定
・縦の筋-話のころがし方
・ストーリーの構成

超「シナリオ執筆術」第一章-第十二章

・シナリオは全部シーンである
・シーンは右脳から飛び出す
・シナリオは面白くなければならない
・魅力ある人物は右脳で作れ
・人間関係がドラマを作る
・ストーリーの書き方、作り方
・シノプシスは何につかうのか
・構成とは何か、ストーリーとは何か
・寅さんの死
・図説「起承転結」
・エンターテイメント
・世界さだめと右脳


※最後に

ハリウッドのメジャー作品で良く採用・指導されている、3幕構成とぶつかるようなことはありません。むしろ、「起承転結」「序破急」などという言葉に迷わされにくくなるでしょう。そして、日本で研究され、培われたノウハウがあることの有難さを感じられます。ハリウッド・メジャーを狙う方には参考にならないかもしれませんが、日本ならではのドラマ作品を志向する方にはおススメです。

▼新井一樹氏による、現代版とも言うべき書籍が出版されました。
 極めて正しく・公式にアップデートされていると思います。


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