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火花式着火法(世界最古の火打金)


1991年イタリア、オーストリア国境近くのヨーロッパアルプス、エッツ渓谷で登山者夫婦が氷結の遺体を発見しました。通称「アイスマン」。5300年前の男性のミイラであることが調査の結果で判明しました。


様々な大変興味深い遺品の中に、黄鉄鉱(火打金代わり)の付着したフリント(火打石)と2種類のキノコ(ツリガネタケ、カンバタケ)、火のついた燠を入れたと思われる炭化物の付着した白樺製の容器(カエデの葉が敷かれていた)が発見されました。

2種類のキノコの内、ツリガネタケは成分分析の結果カリウム豊富な火起こし用の「火口キノコ」、カンバタケは薬用としての用途ではないかとの記述を読んで「火口キノコ、火口タケ」なるものに大変興味を覚えました。

日本国内でもアイヌ、東北、信州辺りでかつてはキノコを用いた火口があったそうです。

5300年前にはまだ鉄器でなく、アイスマンが所持していた斧は銅製の製錬されたものでした。
鉄器が人類の歴史に登場するのは紀元前1600年のヒッタイト王国(現在のアナトリアあたり)。鉄器による武器の製造により圧倒的な強さで国の拡大をはかりました。つまりそれ以前に火打金の存在はなかったのです。

黄鉄鉱では鋼鉄の火打金と比較して火花の飛び方も相当劣るわけですから火口が余程、火付きの良い高性能なものでないと火を起こすことは難しかったことは想像出来ます。

世界最古の現存発見された火打金


私のような変わり者は世界各地にいます。Facebookグループで
Strike-A-Light, Flint & Steel, Steel stikers, And Fire Steels
というのがあります。

そのコミュニティーで偶然発見したのが上の写真。紀元前400年頃のものでベルギーで発掘されました。これが私の知る限り、現在最古の製鉄技術で製作された火打金となっています。

日本最古の現存発見された火打金

古事記(712年)・日本書紀(720年)にでヤマトタケルノミコトが、蝦夷征伐に出兵した物語があります。現在の浜松あたりで、蝦夷の火攻めに対して、叔母からもらった火打金で、迎え火で対抗し戦勝したこ事が記されています。考古学上の出土品としての火打金は7世紀後半古墳時代の物が九州から発見されています。
当時の火打金はとても高価なものでとても一般庶民の手の届く代物ではありませんでした。遣唐使などが、中国の皇帝に献上するものとして扱われていたものです。日本で本格的に一般庶民の民具として使われ始めたのは、江戸時代になってからです。それまでは、もっぱら摩擦式着火法でした。これは1万年以上続いたと思われる、まさに「原始の火起こし」であり、そして現在でもアフリカのマサイ族などが生活で利用している着火法なのです。

続く


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