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パピルス

葉に文字を書き始めたのが手紙の起源らしく,そこに五線を引いて譜面とした.譜面は楽器演奏者同士の手紙のやり取りと言えるかもしれない.

音楽を手紙と表現するにはいささか不自由すぎるけれど,譜面に言葉を書き連ねているからそう表現してもよいだろう.言葉は誰のものでもないから自由で,耳に届く速さは音速のそれだ.解釈は人それぞれ.独り言のように書き連ねていき,言葉は感情を巻き込みながら特別な意味を持ってそこに存在し始める.君の言う言葉と僕が言う言葉に込められた意味は異なってしまうのは仕方がない.回転するように音と言葉に意味が練り込まれて行って,不思議と感情を動かすようになる.僕は過去の僕の言葉に耳を傾けて,あのときに戻ることができる.

記号的なモチーフとしての言葉ではなく,伝えるための手段としての言葉はいくらでも飾ることができて,飾ることで美しくできてしまうから罪である.もう君の本心はどこにもない.吐き出した言葉は体裁を整えられてしまっていてそれが許される世界なのだろうと思う.嘘によって守られている.それは優しさなんて言葉で惑わしてはいけない.いつまで繰り返すつもりだろうか.自分一人だけが悲しさを背負っていると思いこむと楽だが,みんなそれぞれがそれぞれの悲しさを背負っている.リュックがでかくて入れ過ぎた.そろそろ買い替え時かもしれない.僕は物持ちが良い.

実態を持たない言葉は他より滑らかに口元から流れ出ていくので心地よい.周りの目を気にしていくらでも加工することができるから,人間は加工産業の従事者だ.本質はとても単純明快で,綺麗なものを集めるのは成金と変わらない.自分の周りに置いておきたい耳馴染みの良い言葉は宝石のように輝かしくて喉から手が出るほどほしい.自分の周りにおいておくことで優しく慣れたなんて錯覚してしまう.

冬に食べるアイスクリームは罪の味がして良い.健康に生きさえすれば良いなんて時代は終わってしまった.ポジショントークは役割がはっきりしているからより負の密度が高い.体に悪いことをすることで生を実感しているところは自傷行為と指して変わらない.表現の自由の中で不自由さを感じており,醜い本質こそがリアルなのにそれを出せないでいるんですね.嘘と欺瞞で溢れたインターネット.今日も誰かの命が閉じられた.

誰かを責めることは不正解だから誰のことも責めない.とても不健全だ.ぬるま湯の方に流れていくのは心地よいが,そればかりだと自分を見失ってしまう.宝飾品は虚栄心の現れだということはみんなが知っていて,言葉も同じだ.磨き上げられた宝飾品はしっかり自分の首を切り裂いており君の言葉は消えてしまった.そんなことばかり.虚栄で着飾った耳馴染みの良い言葉と本当の言葉の境目は曖昧で,自分を律して言葉を並べていくことしかできない.

今日眠れないなら,明日眠れば良い.


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