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竜とそばかすの姫の感想

最近は仕事から帰ってきて自炊して食べたあと,そのまま寝てしまって起きてから色々片付けたりするということをやっている.例にならって今日もそうなんだけれど,洗い物もしたのでnoteに感想を残しておきたい.(最近は感受性が高まっていて良い悪い問わず吸収してしまい疲れている)

公開初日の一発目にIMAXシアターで観た竜とそばかすの姫だけれど,まず右側奥のスピーカばかり聴こえてしまって,左スピーカーとのMIXイマイチだった.IMAXなのに.ちゃんと点検してあるのかなー,今回は中村佳穂さんが主演だし音楽なのでとても楽しみにしていただけにそこは残念だった.作品とは直接は関係ないけれど.

批評したいわけではなくあくまで感想の域を出ませんのあしからず.まず前提として僕は細田守監督の作品が好きです.時をかける少女から未来のミライまで全部観てるし,やっぱりこの監督は考える世界が独特で毎回驚いている.未来のミライとかどういう思考してたらこの世界観にたどり着くのかと不安になった.あとは人物描写がとても丁寧だとおもう.これは絵の話ではなくて感情の表現や待ちの作り方の話.特に高校生の男女の恋の駆け引き的なところ,見るたびにニヤニヤしてしまう.うまいと思う,ちょっと甘酢っぱくて若干恥ずかしいけど悪い気はしない感じ,わかるでしょ?

それで,今回の竜とそばかすの姫(通称:竜そば?知らないけど長いからこう書きます,正しい通称があれば気軽に教えて下さい)だけれど,音楽最高だった.本当に最高だった.中村佳穂さんの配役は完璧でそれ以外感g萎えられないレベル.IMAXで観たというのもあるけど,音楽の豊かさであったり歌い手の感情がもろに出ていてとても良かった.聴いててもここまで「歌」をメインに出した作品ってあんまりなかったんじゃないだろうか.特にアニメ映画において.

あと中村佳穂さんもYOASOBIのIkuraさんも声優初挑戦らしかったけど,意味わからんくらいうまかった.違和感なし.でもよく考えると声優が歌うたうくらいだから逆も普通にあるよねっていう.今回の中村佳穂さんの配役は完璧だったと思う.ちなみに未来のミライのくんちゃんの声優は正直ミスマッチだったと思ってる.最後の子どもたちと自転車練習のシーンで,明らかにくんちゃんだけ年齢高いんだもの.(本筋とは外れるので割愛)

あとはやっぱり高校生男女の青春恋愛の部分.告白のシーンがあるんだけれど,数分女の子が顔を赤らめて隠して,男の子がぎくしゃくしながら話しかけるところとか,「こんな時間つかう!?」っていうレベルだったけど,その間のもたせ方が細田守だなと思った.あの時間があったからこそこそばゆい青春の感覚を感じられるんだろうと思う(この点を俯瞰できてしまっている時点で,青春とは異なる地点にいてしまっている自分に気づいて絶望している)

良い点はこのくらいで,あとは気になった点(辛口).良いと思った人はごめんなさい,あくまで僕の主観であり感想なのでここに書きなぐることを許してください.

まず,映画を観終わって一番最初に感じたのが

・プロメア
・千と千尋の神隠し
・美女と野獣
・PIXER作品(上とかぶるか)
・サマーウォーズ

を大合体した映画だったなという感想.サマーウォーズの世界観(つまりもう一つの世界)は細田守の醍醐味だから許容できるけど,悪役として出てくるジャスティスの立ち位置や思考はプロメアだったし,竜のベルを守って壁にぶつかるシーンとかまんま千と千尋のハクの暴走シーンじゃんってなった.細田守のキャラは目が小さくてだけどアニメっぽくて,少し懐かしみを感じるところが好きだったのに,今回のベルはPIXER作品に寄っていたと思う.アナ雪とか.その割に周りの妖精的なキャラクターはサマーウォーズのアカウントのような細田守節マシマシのキャラでそこが世界観とアンマッチだったと思う.竜がお城に住んでいて,そこの広場でPIXER風のキャラデザのベルとダンスをするところとか美女と野獣でしかなかったし,オマージュにしては必要あるオマージュなのか?と疑問に思った.少し調べたら「海外もターゲットに向けて作った」という記事を読んで「えー!そういうこと!?」ってなった.ミュージカル的な映画を作りたかったのかと思えばそうは見えなくて,どっちつかずだったなー.Uの世界と実世界の感覚共有のところは設定雑過ぎて設定厨としては「うーむ」と思ってしまった.

内容的にはこのSNS大時代に対しての細田守の考え(誹謗中傷や,その奥には生身の人間がいる)ということを軸に,ではなぜそんな怖いSNSに逃げ込む人もいるのかというところを説いていると思っているんだけれど,状況の説明にソシャゲのCMで見たことのあるようなカットが入ったり全体的に統一に欠けたなーと思って苦笑いしてた.突然戦地取り合いアプリのカット入ってきて笑った.あとは,規模を世界に広げたはずなのに,結局ヒロインと竜は日本にいたっていうのが拍子抜けた.だったら風呂敷をここまで広げないで日本だけの話として終わらせるべきだったと思う.「ここまで拡げといて結局最強のふたりは共に日本なの!?」ってなってしまった.


もう一つの世界として現実ではありえない世界で出会えないはずの自分や他人と出会って新たな世界を描く,で良かったと思ってる.竜はUの伏線か?と思ってたけどそうでもなかったし(母音が同じだからひょっとするとと思ったけど)そこが残念だった.またクジラ出てくるんだけど「またクジラかーー」となってしまった頃には心は離れていた.僕が求めているのは「なぜクジラなのか」というところなのである.


※ここからは僕の妄想を書いていくけど,ずっと竜はお父さんだと思ってた.背中に痣が増えていくのは,鈴との心の距離や妻を失ったことによる心の傷が癒えていなくて,鈴に負担をかけてしまっているという自分の不甲斐なさとかが相まってずっと心を蝕まれている,その表現なのかと思ってた.もちろんお母さんと音楽を作って歌っていた鈴も,母親を亡くしてから歌えなくなるのだけれど,それをお父さんも知っていて,ただ最愛の妻を亡くしたお父さんも未だに立ち直れていなくて世界を恨んでいた.Uを通して同じ立ち位置でお互いの傷を見つめ合って,

「お父さんも辛かったんだね.気づけなくてごめんね.」

「いや,僕も鈴のことが見えていなかった.怖くて避けていたのかもしれない.父親としての役目を果たそうと必死でどこに行けば良いのかわからなかったんだ.僕は妻を愛していた,だから妻を奪ったこの世界が憎くて仕方なかったんだ.でもそれと同時に僕は鈴の父親でいつまでも引きずってはいけないとわかっていた.でもうまくできなくてどうどうめぐりだ.」

「あの日,お母さんはなぜ私を置いて救助に行ったのかやっとわかった気がするの.私もお父さんのことをちゃんと見ていなかった.こんなに守られていたのに.」

みたいな.

だから最初は高校の同級生とかが竜とミスリードさせつつ,本当は親子愛を伝えたかったっていう映画だったら感動したと思う.浅いですかね?

【2021.7.22 追記】


この解説動画がとてもわかりやすかったのでご紹介します.

あと,事前に監督の方から「現代版美女と野獣を描きたい」という意向のもとに作成された映画だったという情報をいただいたので,その点に関しては納得しました.ベルのキャラデザは塔の上のラプンツェル等のキャラデザの方に依頼したとか.

ただ,やはり僕としては細田守は人情の描き方や人と人との交わり方について描くのがとても上手だと思っているので,物語をもっと綿密に詰めてほしかった.ミュージカル映画を作るというには取ってつけた感が強く,物語とミュージカルが完全に別個のものとなっていた気がしてならない.物語だけを切り取って作ったほうが納得する方も多いと思う.どうしても無理やり美女と野獣の世界観をくっつけた感覚がしてしまう...

僕はミュージカル映画も当然とても好きで,でも何が好きかというと,物語の合間にものすごく自然に歌のシーンが入ってくるところです.物語と歌が有機的に繋がってすっと入ってくることで非現実感というものを味わうことができる.そこが好き.生活上で急に歌い出す人とかいたらびっくりしてしまうけど,ミュージカルではそれが当然のように入ってくる.それが今作では違和感になってしまっていたように感じる.

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