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『カゴメの人事改革』を読んで。 #1

これから3月31日まで合計16冊の人事業務関する本の要約をnoteに公開します。第1回目となる今回は『カゴメの人事改革』を取り上げます。カゴメを簡潔に紹介すると、日系大手の食品企業です。代表的な商品としては野菜生活100、野菜一日これ一本があります。

戦略人事とサスティナブル人事とは

筆者である石山さんが考える人事には、戦略人事サスティナブル人事の2つがあります。簡単に2つを説明すると、戦略人事とは正社員の能力を成長させ、会社の独自性を創り出すことを指します。サスティナブル人事とは社内だけではなく、取引先、地球環境等を含めて、皆にとって良い世界を創ることを指します。

この2つを石山さんは他社で実現しようとしたのですが、志半ばで頓挫してしまいます。そこでは思い通りにはいかないことが多かったそうです。

しかし、共著であるカゴメ株式会社最高人事責任者の有沢さんはカゴメで戦略人事とサスティナブル人事を両立させました。有沢さんは銀行で人事業務の修羅場を経験しており、グローバル企業であるHOYAでも人事として第一線で活躍されました。その後、日本の古き大手企業カゴメから声が掛かり、面白い感じて入社を決められたそうです。

戦略人事でカゴメを変革する

有沢さんがカゴメに入社して驚かれたことは、評価制度の脆さです。余りにも浅はかな評価制度が世界各地で広まっており、危機感を感じられました。女性社員で主要な役職就く方は全員中途採用、総合職での悪しき年功序列。これらを振り払うために、有沢さんは人事を中期経営計画で最優先事項にして欲しいと主張しました。社長はそれを引き受けて、カゴメの人事改革が始まります。

戦略人事を実現するにはインフラを構築する必要がありました。そのインフラ構築の第一歩として、役員に職務等級制度と報酬制度を導入しました。職務等級制度とは所謂ジョブ型を指します。この職務にはスキルが必要であり、新卒中途採用関係なく、スキルがあれば重役に登用していきます。この評価制度に伴い、報酬制度も変更しました。具体的には、役員の変動報酬を20%から50%に引き上げました。変動報酬は企業の業績に左右されるため、会社と共に強くなることが求められました。また、この意思決定を社内報で流し、全社で変わる風潮を醸し出させました。

この職務等級制度は日本ではなく海外から先駆けて展開をしていきました。元々ジョブ型が普及している海外で成功しているのであれば、日本でもできると考えさせる思惑があったそうです。このグローバル人事制度のポイントは3つあります。これらに沿って評価が行われました。

  1. Pay for Job(年功序列からの脱却)

  2. Pay for performance(業績と評価に応じた報酬)

  3. Pay for Differentiation(メリハリを付けた処遇の実現)

また、職務等級制度を導入すると必ず抱える問題が年功序列を解消できないことです。しかし、カゴメは同時に年功序列も解消させました。それができた理由は、職務に値段を付け、この職務に相応しい人は誰かを考える視点を導入できたからです。忖度を一切なくしたのです。それにより、社員の自律したキャリアの歩み方が生まれました。今の職務はここに位置しており、この職務に辿り着くには、何が求められるのか明確になっています。その道筋があることで、社員は自律して進んで行きます。

加えて、面白いと思ったことは職務等級制度は一般社員に導入しなかったことです。もともと、カゴメは一般社員には様々な仕事を経験させて、能力を向上させる文化がありました。それは社員の成長を支える上で欠かせないものとなっていました。ですので、わざわざ一つのことに特化せるのではなく、これまであった文化を優先させたのです。これはどのようにやるのかを真似るのではなく、意義と意味を突き詰めた良い事例です。

このグローバル人事制度を全体で俯瞰すると、人材のDB化や人材DBシステムの構築が一部に挙げられます。これは僕が入社する会社で実現できる部分であると認識すると同時に、強い日本企業を作るために僕の働きで貢献したいと実感しました。

そして戦略人事のまとめには、

正解を真似するのではなく、独自に自社に合わせて考え抜くことは、戦略人事のあるべき姿だと思います。

カゴメの人事改革

とありました。これまでの内容を振り返ると納得のまとめでした。

10年先を見据えた多様性のあるカゴメとは

カゴメはサスティナブル人事にも取り組んでいます。どのセグメントを切り取っても、カゴメとの良い関係性を実現させることを目標に掲げています。

例を挙げると、女性の活躍推進です。以前まで、課長と部長ともに女性の登用が少なく、多様性のある人材抜擢とは到底言えない実態でした。そこで、女性3名を指名して、他者の経営者育成講座を受けてもらうと、彼女らは目の色を変えました。過去を悔いて、外で学ぶ意欲に満ち溢れ、自費で社会人大学院に通いました。現在、彼女たちはカゴメの中核を担う存在となっています。

カゴメは採用活動でも特異性を示しています。選考を受けた人全員にカゴメの商品を郵送しています。選考の結果がどうであれ。これは大きなコストになってしまうことは明らかですが、どうしてこのような取り組みをするのでしょか。その理由にはカゴメのマーケティングがあります。食品業界を志望する学生であれば、専門商社や食品業界の他社に入り将来取引をする相手になるかもしれません。その時にカゴメに悪い印象を持たれては取引にマイナスな要素が働きます。カゴメの選考を受けてくれたことへの感謝と、ずっと大切なお客さまであると考えるその姿勢は本当に見習うことが多いです。

有沢さんは単身赴任を是正するために地域カードを導入しました。海外で単身赴任のことを話すと、皆揃って悪い印象を抱き、改善する必要性を実感されたそうです。地域カードとは全社員を対象に、特定の地域に止まるか転勤を望むのか選択する制度です。完全に単身赴任を廃止にしなかった理由は、新たな出会いとして希有な価値があるからです。

カゴメはテレワークを導入しています。出来るだけ時間と場所に縛られない働き方を実現しようと奔走しています。僕は面白いと思った点は、スケジューラーに仕事以外の予定を書き込めることです。これは私生活を通じての社員間でのコミュニケーションを活発化させる意図があります。

カゴメは副業も2019年から解禁しています。副業で多様な経験をして、それを会社にもたらしてくれることを期待しています。極度に副業による離職を恐れるのではなく、飽くまでも会社と個人をフェアな関係性に持ってくるために、副業を解禁しています。個人の力が組織の力となり、組織の力が個人を高めてくれる。そのような関係性を有沢さんは望んでいます。

まとめ

これらの内容を踏まえると、有沢さんはただ単に欧米で実施されている施策を模倣するのではなく、飽くまでも会社を想い、独自性を突き詰める姿勢を大切にされているのだと実感しました。

経営方針を人事戦略に落とし込む。それが浸透することで会社は大きな一歩を着実に踏みしめていける。その一部にでも携わることができることに誇りを感じて、春からの社会人生活に没頭していきたいです。

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