母がいなくなった恐怖を想像してしまった、あの頃。
いくつの頃だったろう。
小学校低学年だったろうか。
もし、母がいなくなったら。
不意に、そんな想像をしてしまったのだ。
自分が、死と言うものを生まれて初めて意識したのは、いくつぐらいだろう。
それとほぼ同時期だったと思う。
今、あたりまえにそばにいると思ってる人が、ある日突然いなくなる。
その恐怖を感じたんだ。
私は何の前触れもなしに、母の膝下に駆け込んだ。
しがみついて。
ひっくひっくと、しゃくりあげて。
泣きじゃくりながら。
かろうじて一言一言、こまぎれに、伝えた。
「お母さん、」「死んだら、」「やだよ…」
母にしてみれば、なんのことかと、驚いたであろう。
でも、まもなく、なにかを察したようだった。
母は、穏やかに繰り返した。
「いなくなんか、ならないよ」
親に甘えるということ自体、そんなに上手ではなかった私。
でも、こういう瞬間もあったんだ。
ひさびさに、そんな記憶を思い出した。
母が好きだとよく言ってた、コスモスの花。
ようやく、それが似合う陽気となったかな。
いい天気だ。
きれいな夕焼けだ。
短い秋が訪れ。
冬が近づきつつある。
2024.11.22