僕と彼と球技大会

朝が早くなり、一日が長くなる夏。
今日も彼に会える。少しばかりだけ、いつもより長く。
今日も彼の汗をかく姿を目に焼き付こう。

球技大会。

高校2年、夏終わり。
同じクラスになってから時間は早く過ぎていった。
時間というものは、こんなに早かったんだろうかと、
ふと思う下校も増えた。

そんな季節に訪れた、汗をかくイベント。
陸上部が活躍する体育祭ではなく、
ボールさばきに長けた人たちが活躍するイベント。
そう、球技大会。

誰が何の競技をやるのかを決める。
陸上やら水泳やらで、専ら個人競技が得意な自分は
あまり乗り気ではなかったが、
ひとつだけ好きな競技があった。
バレーボールだ。
好きといっても、上手な訳じゃないし、経験者って訳でもない。
遊びでやる分というか、見る分にはというか、まあそんな感じ。
だから僕はバレーボール一択な訳なので、
今回は大好きな彼とは同じチームにはなれないだろうなと思った。

なんていう考えに更けていた頃。
「俺もバレーボールやろうかな」と、彼の口からそんな一言が。
え、なんで?と皆から言われる始末。
だって彼はサッカー部でレギュラーで、彼がサッカーをやれば
僕たちのクラスはサッカーで優勝できたかも知れないから。

そんな皆の期待を裏切るかのように、
「せっかくだし、違う競技をやってみたい」と。
人望も厚かった彼だから、特に皆は何も言わなかった。
「そっか、じゃー一緒にできるね」と、思わずそんな言葉を彼にかけた。
「頑張ろうな。」

そんなこんなんで、彼と一緒にバレーボールをやることになった。
5分休みの間に弁当を済ませ、昼休みのチャイムが鳴ると同時にボールを持って
体育館に向かった。
なんせこの時期、体育館の奪い合いだから。
コートが取れなかった時は仕方なくグラウンドで練習した。

照る照るお日様。
半ズボンにTシャツ姿の彼は、
とってもかっこよかった。
思春期真っ最中の人もいれば、
もうとっくに体の変化に慣れた人もいるだろう。僕なんかがそうだ。
けど、生えている毛とか、鍛えられた筋肉とか、
彼を男だと認識せざるを得ない。
あぁ、かっこいい。
自分の中の、男性同性愛者の部分が沸き立つ。

ありきたりだが、シャツで顔の汗を拭った時には、
見える肌に目が釘付けだ。
後、完全に自分の趣向だが、シャツから少しでる腋毛がたまらない。
毛フェチって訳でもないんだが、
普段見えない部分が見れるっていうのは、何とも言えない気持ちになれる。

球技大会当日。
惜しくもすぐに敗れてしまったが、
この思い出は忘れられない。
練習をして、汗をかいて、
普段見えない部分が見れて(体や無我夢中にボールを追いかけるところとか)
僕にとっては特別な思い出になった。

周りは勝敗で一喜一憂したり、
カップルで試合を見に行っていたり、
写真を撮ったりで、
青春を謳歌していた。

僕はといえば、
ごく普通に練習して、ごく普通に試合をして、
写真撮ろうと言えば写真を撮ったりして、
ごく普通に球技大会をしていると映っていただろう。
でも、僕だって青春をしたんだ。
皆には伝わらないだろうが、僕だって。。。

彼と撮った一枚の写真を眺めながら、
誰にも言えない思い出を噛みしめていた。


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