獣医学校への受験


受験の形

アメリカは日本と違って、獣医学部、医学部、法学部などは大学院のような扱いになります。まず、4年の学部を卒業してから、再度受験を行います。獣医学部の場合はもう4年大学へ通うことになります。受験の基準は大きく2段階:VMCASと面接。

VMCASとは Veterinary Medical College Application Service (獣医療大学受験サービス)の略で、AAVMC(Association of American Veterinary Medical Colleges - アメリカ獣医学校団体)が使用している受験のアプリケーションをまとめてくれるサイトです。これを通して各学生は平均では年間6校ほどに受験します。

VMCAの書類

VMCASは春に開き、9月半ばの締め切りです。学校によっては早く出した者から合格者を選ぶ学校もありますが、基本的には9月半ばまで待つ学校が多いです。

VMCAには大きく以下の物を提出します。
①GPA・GREの試験結果
②獣医関係の経験の時間
③エッセイ
④推薦状

GPA(Grade Point Average)は大学のGPAを提出します。大学によって多少の計算の差はありますが、ほぼ日本と同じで基本的には A = 4.0、B = 3.0、C = 2.0、D = 1.0 の計算です。獣医学校によって、合格に必要なGPAは異なりますが、全米の平均は3.6ほどです。

GREとはGraduate Records Examinationで、大学院レベルの入試試験のようなものです。医学部はMCAT、法学部はLSATと別の試験があります。GREは3カテゴリーに分けられます:Verbal (英語)、Quantitative (数学)、Analytical (作文)。採点は少し複雑ですが、点数そのものと、全米ランキングのパーセントの点数が出ます。Analyticalはそこまで重要視されませんが、残り二つカテゴリーの合格者の平均は70%ほどです。

獣医関係の経験の時間数は一つ日本と大きな違いだと思います。受験するにはある程度の経験が必要です。各大学に差はありますが、前提条件には最低経験時間数500時間ほどがあります。経験について詳しく別の投稿で説明しますが、大きな目的は実際に獣医療を経験した上で、獣医師になりたいかの確認です。

エッセイは2つ種類があります。VMCASを通して受験する全学校に送るものと各学校が要求するものがあります。VMCASのエッセイでは「獣医師として社会にどのような貢献をしたいか」、「獣医師として成功するに必要な特徴は何か」など非常にオープンでディープなトピックを聞かれます。各学校のは、似たような質問を聞かれる場合や「なぜこの学校に受験するのか」など聞かれます。

推薦状は3つほど必要です。獣医師に書いてもらえる推薦状が一番強いです。

面接

VMCASを提出後から次の年の2月ほどまで、面接の招待が送られます。

コロナ前の面接の多くは実際に学校へ行って行います。面接は基本的に12月から2月末まで行われ、招待状は面接の1週間から2週間前ほど送られるので、12月から2月までは週末を開けておく必要があります。

面接までに50%以上の生徒に不合格通知が出されます。面接は各学校によってやり方が違いますが、大きな目的は紙で見えない人間性などを見られます。中では、面接の一部として、泣いている飼い主様との対応を観察されるものもあるとか。面接の日には面接以外にも学校の案内、学費についてのプレゼン、カリキュラムの説明などもあります。

合格

合格率は比較的に低いです。自分のペンシルベニア大学を例にすると、およそ1300人の受験者数から125人が実際に通うことに(9%)。全米の大学を見ても平均は10%ほどですが、学校によって15%までの物もあります。

合格は面接の後に決まりますが、合格通知がいつ届くのかは各学校で違います。ペンシルベニア大学の場合、面接を金曜日に行って、次の月曜日に電話で面接官から直接報告がありました。その2週間ほど後に正式の合格通知が届きました。

まとめ

受験して感じたのは、「勉強できる人」より「いい獣医師になれる人」を選んでいます。GPAがいくら優れていても、経験のない人、人間性がよくない人は入れません。日本では高校生から直接選びますが、アメリカでは大学を経験した後なので、より厳しく審査されます。

米国ではGap Year(日本でいう浪人)を取ることは一般的で、1~3年間テクニシャンとして、または研究などをして経験を積む人が多いです。なかでは、完全に違う職業から移る場合もあります。合格者の平均年齢が24歳です。

最短でも8年かかる獣医師への道ですが、10年以上かかる人も少なくはありません。その後はあと2~4年かけて専門医になる選択肢にあります。日本よりも長い道のりですが、周りにはモチベーションの高い仲間がいて、獣医学に長く専念できる環境が整っていると思います。

リンク

AAVMC/VMCASのリンク
https://www.aavmc.org/becoming-a-veterinarian/how-to-apply/

ペンシルベニア大学の合格者の統計
https://www.vet.upenn.edu/education/vmd-admissions/admissions-process/incoming-class-profile

US Newsの獣医学校ランキング
https://www.usnews.com/best-graduate-schools/top-health-schools/veterinarian-rankings


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