#6-1 空前絶後の器用家的偉人〜レオナルド・ダ・ヴィンチ〜
お久しぶりのUmicaです!
今回からJo-ATが選ぶ、「器用家的偉人伝」をお送りしたいと思います.「器用家的偉人伝」とは、タイトル通り器用家のようなマルチに生きた偉人について、メンバーそれぞれの観点から紹介していく企画となっております!
その記念すべき第一弾として、タイトルにもある通りレオナルド・ダ・ヴィンチについて、今回から3本連続で取り上げていきます!
メンバーそれぞれの視点からまとめた器用家的偉人の姿をぜひ楽しんでいってください!
レオナルド・ダ・ヴィンチって?
レオナルド・ダ・ヴィンチ(以降、レオナルド)と聞いたら何を思い浮かべますか?
「モナリザ」や「最後の晩餐」といった芸術家としての姿では無いでしょうか。しかし、それはほんの一部に過ぎません。実際は解剖学、建築学、土木工学、結婚式プランナー、ファッションデザイナー、機械工学、楽器デザイナーなど、芸術のみならず科学技術にまで及んでいます。
え、こんなにやってたの?
てか、結婚式プランナー?(笑)
幅あり過ぎでしょ!と突っ込まずにはいられない経歴です。私がキャリアコンサルタントで、こんな履歴書を持ってこられたら思わず笑ってしまいます.
レオナルドから言わせれば、「絵も描けます。」ってなわけです。
こんな非凡な実績を聞くと、神からもらった才能だと一掃して、自分と彼の間に境界を作りたくなるかもしれません。こんな多様な領域で、これほど実績を残すなんて人間の成し得る技ではない。私たちには遠い存在だな…と。
しかし、そんなことはないんです。
なぜなら、レオナルドは婚外子であったため正式な学校教育をほとんど受けておらず、実績のほとんどが独学によるものなのです。また、レオナルドは自身の制作を途中で放棄し、計画破綻や未完の作品も多いことで知られており、仕事が遅いことでも知られています。私みたいな常人でも共感できそうな側面を持っていたりします。
つまり、レオナルドの多様な実績は、神から与えられた才能などではなく、彼の意志や野心の賜物なのです。そんな空前絶後の器用家的偉人レオナルドだからこそ、私たちが学べるものはあるはずです。
本記事では、そんなレオナルドの習慣や哲学の一部を紹介します。
メモ魔で聞き上手
レオナルドはメモ魔でした。参考文献にも載せた、伝記作家のウォルター・アイザックソンは、レオナルドの伝記を書くために、残されたメモ書きを読破したそうです。その数なんと7,200ページにも及び、ジョブズの伝記も書いた彼が言うには、その容量はジョブズのメモ書きよりも多かったそうです。
新聞紙サイズからメモ帳サイズと紙の大きさに幅はあるものの、上質な紙は高価で、無駄に使うことはない彼は、紙一面にびっしり記録をとっていました。
さらに驚くべきは、この7,200ページは、彼が残した1/4量の程度でしかないそうです。つまり、およそ30,000ページくらいあったそうです。
レオナルドは興味のひいたものなどを記録するために、常にノートを持ち運んでいました。具体的なメモの内容として目を引くのは「やることリスト」です。現代も「to doリスト」が流行り、アプリやノートに記している人は多いですよね。彼もそれを実践していたわけです。
そんなやることリストの中には、次のような記述がありました。
ここから、レオナルドが積極的に人の知恵を借りようとしている様子が伺えます。先述のとおり、彼はまともな学校教育を受けられていません。しかし、そこで諦めることは一切なく、自分の気になることは専門家に積極的に質問をしていました。そして、自身のアウトプットへと繋げ、その中でまた疑問が出たらやることリストに記入するということを繰り返していたのです。
この記事を書くまで、レオナルドの芸術作品や実績を独学によってのみ成し遂げてきたと思っていました。また私自身の思想として、ひとりで一気通貫して創作をすることが正義で人に頼るなんてダサくてカッコ悪い、こういった思想で溢れていました。しかし、独りで何もかもをこなしているように見えた万能の天才は、取り組む過程で出た疑問をその道のプロに積極的に頼り、吸収するという姿勢を大事にしていることがわかり、驚きました。プロの能力を盗むように質問することで自身の知肉にしていき、自身の創作に昇華させる、レオナルドの習慣からそんな姿が読み取れます。
今からすぐにとはいかないかもしれませんが、この姿勢を見習い、私も何かわからないことや疑問が浮かんだら、頼れる友人や専門家に直接質問をして、自分をアップデートさせていきたいと思いました。私自身、とても人を頼るのが苦手なので何かあったときは友人はじめ、皆さんを頼らせてください!
経験至上主義
レオナルドが無学であることはすでに書きました。そろばん学校と呼ばれるところで、簡単な算術を学んだこと以外は独学だったのです。周りの人は、ラテン学校と呼ばれるところで古典や人文学を学んでいましたが、レオナルドはそれを受けていない。そんな彼は次のようなメモを残しています。
「口さがない人々」というのは、他人のことを無節操に悪くいう人のことを意味しています.ラテン学校で学ぶ周りの人に対して、経験という事実こそ全てであり、書物からの知識は借り物に過ぎないと言い放つのです。このように学校教育による人文的教育がなかったからこそ、自然を鋭く観察し、そこからの経験や事実を重視するようになったのです。何事にも疑いから入る批判的思考を身につけたレオナルドだからこそ、偏見や先入観にとらわれず、様々なイノベーションへとつなげることができたと言えそうです。
ヴェロッキオ工房での経験
また、レオナルドのマルチ性を伸ばした経験として、ヴェロッキオ工房での活動が挙げられます。少年期から30歳にミラノに旅立つまで、レオナルドはフィレンツェという街のヴェロッキオ工房で働いていました。
ヴェロッキオ工房はフィレンツェでも1, 2を争う工房で、仕事が次々と舞い込んでくる環境でした。そして、日本の寿司職人修行のように、いわゆる工房でのキャリアも初めはアシスタントから始まります。
ヴェロッキオ工房での経験で特筆すべきことは制作物の多様性です。ヴェロッキオ工房では絵画だけではなく、彫刻や建築といった様々なアウトプットの形があり、広い分野に携わることができたのです。
実際、レオナルドは当時18歳前後で大きな建築工事のプロジェクトに携わり、大成功を収めています。絵画などの芸術に縛られず、工学に近い建築など幅広い分野での成功体験が、スーパージェネラリストの素養を養ったと言えるでしょう。
のちにレオナルドは解剖学や自然科学から学んだものを自身の芸術に昇華させたり、結婚式プランナーとして務める際に舞台装置を演出する際の機械仕掛けに上記建築工事の経験が役立てたりしています。興味に従いマルチに学ぶことで一見関係のない点と点を結ぶ力、つまりドッツ味溢れる仕事っぷりを見せていったのです。
私は創作をしていく上で、何を学ぶかを示す「コンテンツ」、それをどのように表現するかを示す「手法」の2つが重要だと考えています。例えば、ひまわりを視覚的に表現したいとします。ひまわりを絵の具でキャンバス上に表現した時、ひまわりがコンテンツで絵の具による絵画表現が手法となるわけです。しかし、視覚的表現は絵の具だけに限らず、粘土や彫刻による立体物、タブレットやデジタル表現によるアート、もしくはプログラミングで表現したっていいはずです。
上記例は手法に限定した話ですが、コンテンツも同じです。何かを学習・表現する上でよく知っているコンテンツや使い慣れた手法に限定せず、未経験の手法に触れてドッツ味を上げることがレオナルドから学べる器用家的素質と言えるでしょう。
学び慣れた「コンテンツ」、使い慣れた「手法」から一歩抜け出し、未経験のことにどんどん触れてドッツ味をあげていきたいですね!
おわりに:内なる好奇心の重要性
「キツツキの舌を描写せよ。」
これは、レオナルドのメモにあった問いです。こんなニッチな問いを誰が知りたがるのかって感じですが、彼は子供以上に何事にも純粋な好奇心を持っていたのです。
余談ですが、キツツキが木をつつく時、キツツキの脳には、(人間が死ぬ強さの10倍の)衝撃が加わります。しかし、くちばしの3倍以上の長さにも及ぶ長い舌を持っており、使う時以外は頭蓋骨に収納され、脳の緩衝材の役割を担っています(下図参照)。これがクッションとなり、衝撃で死ぬことなく安心して木をつつくことができるそうです。
普通に暮らす人にとっては、このことを知っておく必要は全くないと思います。そして、それはレオナルドにとっても同じはず。この情報が暮らしを効率化したり、何か機能的に豊かにすることは無いでしょう。
ただ彼は損得で考えず、普通の人なら気にも留めないようなこと、ふと気になったことを純粋に追い求めていました。それは、お腹が減ったら食事をする、眠くなったら寝る、というように知りたくなったら、調べるというわけです。彼のこうした哲学、内なる好奇心への向かい方が彼のマルチ性を伸ばしていったのは、言うまでもありません。
何かを打算的に学ぶのではなく(時に打算的に学ぶことも時には大事かも知れませんが…)、純粋な好奇心から「学びそのものを目的とする」、レオナルドの生涯からその哲学を学びました.
皆さんも、レオナルドのように自身の好奇心を大切に、日々を鋭く観察するように過ごしてみてください.
最後まで読んでいただきありがとうございました!
次回以降のメンバーによるレオナルド・ダ・ヴィンチもお楽しみに!
参考文献:
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