宇宙の気配_2022.04.30
寒い。日中は太陽が出ているせいで「春来たね〜」と思わせるほど暖かいが、北海道に22年間住んでいる私はそのフェイントに騙されない。太陽が落ちると気温は一気に3度くらいまで冷え込み、薄着で外に出たことを後悔しながら家路に着く。北海道はそういう場所。今日もまさにそんな夜だった。
今日は東京から心の師匠が北海道に遊びに来てくれた。
アパレルデザイナーのシュウトさん。実際に会うのは今回で4,5回目であるが、デジタル上の隣人なので『お久しぶり感』がそれほどない。なぜ心の師匠と呼んでいるかは秘密である。
札幌へ友人が遊びに来る時は決まって『豊平峡温泉』に案内する。源泉掛け流し100%・加温なし・地中からの源泉を直接浴槽に注いでいるという、全国的にもかなり希少な温泉施設。
この温泉はヒグマが頻繁に出没する森の中に位置していてまさに"自然の温泉"。木々が生い茂る露天風呂では、天気が良ければ綺麗な星々をみることができる。今日も天気が良さそうだから、その景色を見せれたら良いな….。
車を運転する。夕暮れで境界が曖昧になっている山々の稜線を眺めながら、札幌の温泉街「定山渓」を目指す。隣人たちが好きな曲を思い思いに追加した月間プレイリストの音色が心地よい。
……..
以降この曲を聴きながら読み進めてほしい。
露天風呂には満点の星空が広がっていた。
僕たちは、息を呑むほど美しい星空を眺めながら沢山語り合った。
将来の話・価値観の話・人生の話・ブラックホールの話……。
自然は人を語り部にさせる。
星空や自然を前にすると無意識に話のスケールは大きくなる。
その時、アラスカの自然の中で人生を刻んだ写真家・星野道夫さんの言葉を思い出した。
手が届きそうな天井の輝きは何万年前、何億年前の光が、やっと今辿り着いたらしい。無数の星々がそれぞれの光年を放つなら、夜空を見上げて星を仰ぐことは、気の遠くなるような宇宙の歴史を一瞬にして眺めていること。
そんなことは論理的に分かっていても、その意味を体感することは難しく、僕たちはただ自分の無力さに絶望するしかない。所詮人間が生きている時間・影響力は宇宙規模で考えると儚い点でしかない。僕たちは自然の歴史に爪痕、かすり傷すらも残すことなんてできない。
でも僕たちはその絶望を受け入れ創造し続けなければならない。僕たちは、それによってのみ救われる。
時刻は22:15。もう2時間も語り合った。露天風呂にはもう僕たちしかいない。急いで体を流して温泉を出た。のぼせることもなく最高の湯加減だった。
私たちはその後、更に美しい星空を目指して湖へと車を走らせた。
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深夜の日記帳
junnosukeの心や脳に浮かんだ事柄を写真付きの散文調で記録します。このマガジンは私の心の安全地帯であり、感情をそのまま保存する場所で…
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