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自分に気づくことは、相手に気づくこと

看護コーチは、看護とコーチングを実践する中で、患者・その家族・チームメンバー・他職種のスタッフ・地域の人々・その他関わる全ての人々がその人らしく輝いて生きるための支援をしています。
看護コーチトレーニングを卒業し、その後「認定看護コーチ」となった看護師の皆さんの日々の輝きを紹介することで、やっぱり看護っていいな、看護コーチングっていいなと思う瞬間をインタビューを通してたくさん見つけていきたいと思います。

「〇〇な自分がいるかな」インタビューの時に海津由美さん(以下由美さん)がなんども口にしたフレーズが印象深く残っています。自分の在り方や、自分の感情・感覚に自分で気づく大切さを語ってくださいました。相手に興味・関心・好奇心をもって接すること。人は環境によっても変わるけど、自分が変わることで周りが変化していくことを体験した由美さんの話には気づきがたくさんありました。


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海津由美さん
NCT4期
療養病棟看護師
2児の母

【仕事に追われても大切にしていること】

(奈津美)最近、看護のお仕事はどうですか?

(由美さん)日々の仕事に追われてる感じがあって(笑) ただ、そんな中でもいつも思っているのは人を傷つけないような言葉を使わなきゃってことかな。忙しい毎日の中で、つい患者さんにきつい言葉をかけちゃったりする人もいるし、私自身も忙しければ忙しいほど心に余裕が無くなっちゃうのはあるけど。
不穏で寝ない患者さんを目の前にして、何を言っても伝わらないこともあったり、どうしてもイライラすることもあるし、療養病棟で、体の不自由な人とか経管栄養をしている人が病棟の半分くらいだから、ケアの量も特に多くて。でも大変だからといって、あんまり変な言葉掛けとか、きつい言葉は口にしないようにしたいなって思ってる自分がいるな~。

(奈津美)感染の第六波もあって疲弊している看護師さんもいっぱいいるし、イライラしたり、どうしても言葉がきつくなったりってあるあるかもしれませんね~。そんなとき由美さんはどうしているんですか?

(由美さん)一呼吸置こうっていうふうに思う。イライラすることもあるよな、苦しいよなとか、、、まずは感情を否定しない。仕事に追われると「この忙しいのに‥‥」って思う気持ちが出てくるけど、その気持ちをどうやって自分の中で変えていこうって思いながら仕事をしてるかな。

(奈津美)イライラしている自分にまず気づくっていうことが起きているんですね。

(由美さん)そこが必要だよね。「いまイライラしてる」とか「今焦ってる」とか気づくこと。「焦ってる」だから、じゃあ何を優先したらいいだろうって考えるようにしてるかな。どういうふうに自分の気持ちを開放するか?というすべを持っていると、自分が大事にしている価値観が看護に出やすいと思うの。

(奈津美)例えば由美さんの目の前にイライラしていたり焦ったりしているスタッフがいたとしたら、どうするんですか?

(由美さん)そういうスタッフがいるのを見ても、まずそれをとがめることとか、何か伝えることは今はしないこうしちゃいけないよ、ああしなきゃいけないよって意見を言ったり提案をする自分はいないかな。この対応ってよくないんじゃないかなって思うことがあっても、まずイライラしていることを否定するのは違うような気がする。それって素直な感情だし、自分もいらっとすることはあるし。

(奈津美)自分の感情を受け止めたのと同じように、相手の状況や感情をそのまま受け止めてるっていう感じですね!

(由美さん)受け止めきれてるかどうかわかんないけどね(笑) 現状見れば、どれだけ大変なのかも、状況もわかるから。例えばなかなか寝ない患者さんに困ってる時は「本当に寝ないね~(笑)」「どうなっちゃってるんだろうね」って声をかけているかな。

(奈津美)その声掛けって、言われた相手も、「確かにどうしてなんだろう…??」って考えそうな気がしますね~。イライラも薄まりそう(笑) 由美さんの周りのスタッフ癒されてそうですね。

(由美さん)毎回じゃないけどね。心に余裕があるときとない時では変わってきちゃうし。結構モヤモヤしてる自分もいるっていうのが本当のところ(笑)

(奈津美)そんな自分にも気づいているっていうのが素敵ですよね。

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【チームをまとめるメンバーシップ】

(奈津美)看護師がチームとして動くときに、大事にしたいなって思うことはどんなことですか?

(由美さん)話し合いをすれば、反対とか同感とか、いろんな意見がでるけど、中立の人がいないとチームってまとまらないのかなと思う。反対意見、賛成意見、そうじゃない人って必ずいるけど、私は いちスタッフとして中立の人でいようってしてるかな。引っ張っていったりまとめるのは上の人たちだけど、私は、自分にできることは何か、どう協力したら、チームワークとしてできるのかなって考えていて。私が中立であることで「協力する」っていう感じが大きいな。

(奈津美)協力の仕方って色々ありますけど、すごく心強そうですね。

(由美さん)昨日同級生とたまたまメールしてて、勤めてる病院での感染対策をどうしているかって話になって。同級生が言うには、ガウンテクニックとか標準予防策の研修を11月にしたけど、それがスタッフの間で徹底できるかってなかなかすぐには難しいんだよね。実際のところ、自分の病院にコロナの患者さんが来たときにみんなで協力できるのか考えちゃうこともあるな。自分もだけど、イライラしてたりそういうときって協力できないかもしれないと思う(笑)
研修をしっかりやってたとしても、結局はみんながどれだけ協力できるのかっていうことかもなあと思ったなぁ…。

(奈津美)一人一人の意識も大切でしょうけど、みんなで協力して頑張ろうっていう感覚がないといけないってことですね。看護コーチングを学んだ由美さんにできることがあるとしたら、どんなことですか?

(由美さん)実際自分が何をできるのかって日々模索してるんだよね。
ただ、大事にしようって思うのは、相手に興味をもって、感心と好奇心を寄せることが一番強いかな。物事や相手の見方はなるべく偏らないようにするとか、何か起きたとしても じゃあ自分としてはどうできるかなって考えるようになったのはコーチングを学んでから変わったところだと思う。だから、イライラしているスタッフにも、「イライラしちゃだめだよとか」アドバイスをしたりしないで、共感するようにしたり声をかけたりするんだよね。

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(奈津美)由美さんが興味・関心・好奇心をもって病棟のスタッフに接し続けていくとどうなっていきそうですか?

(由美さん)それはね、空気が変わっていくと思う。みんなの周りに協力する人たちも出てくるんだけど、自分の周りで協力してくれる人たちも出てくる。実際に今、一緒に部屋持ちをした人、夜勤を一緒にやる人、お風呂介助を一緒にする人、それぞれ声掛けが増えていってるような気がしてて。なんかギスギスして仕事をしている人たちっていうのは、お互いにけなしあっている感じがして。
声掛けが増えると、みんなの笑顔も出てくるかなっていうのは最近思う。


【怒られているスタッフへ声をかけるとしたら】

(由美さん)「このお腹をみてどうおもう?」って先輩に言い放たれている20代の看護師さんに出くわしたことがあって。あー、この子黙っちゃったーって思ったの(笑)

(奈津美)怖い場面ですね(笑)

(由美さん)私その頃、病棟にいって最初のころだったし、その20代の子、ぽろぽろ泣いたりしてたのも見てたから、当時はアドバイスしかできなかった自分がいるんだよね。

(奈津美)今の由美さんが同じ場面に出くわしたとしたら、どんな対応をするんですか?

(由美さん)目の前では何も言わないけど、あとから、「私さっきドキドキしたんだけどさ、大丈夫?でも何かわかったことはあったでしょ?どんなこと?」って声をかけるかな。興味・関心・好奇心を持ってね。

(奈津美)素敵ですね、「ドキドキしたんだ」って、いいとか悪いとかジャッジしない言葉ですね。その子も救われそう。

(由美さん)医療や看護ってどんどん進んでいくし、看護ってすごく変わってきてるから、人も変わってくるんじゃないかなって思うの。私が働きだしたときは怒られまくってたけど、今はそうじゃないし、厳しくするだけがいいわけではない。看護の周辺の環境が変われば看護も変わるし、今の子どもたちが大きくなれば、また違った看護や教育が出てくるから、私たちが言われてきたことをそのまま伝えるのは違うかもって思うな。
そして、そうやって変化していくものに乗り遅れたくないんだよね。周りが変われば変わるし、自分が変われば変わるし。長く働いてそう思うんですよね。

(奈津美)これからも変化していく看護の世界で、由美さんはどんな看護師でありたいと思っていますか?

(由美さん)いつまでも看護師さんって優しいイメージがあって。小さいときは看護師さんてふんわりしてて優しいものだと思ってたけど、実際に働くと過酷な環境のせいで強くないといけない人に変わっていったりするんだよね(笑) でも私はどんな環境にあってもとにかく一本芯がぶれない看護師でいたいなと思う。その芯はまだ言語化できてないんだけどね(笑)

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【インタビューを終えて】

人を傷つけない言葉を使う、興味・関心・好奇心をもつ、中立でいる、由美さんが大切にしていることは、相手を大切に思う行動だなと思いました。そして、「何がいいか、何が悪いか」という判断を手放して、その人やその状況をありのまま受け止めるということを常に実践されています。自分自身にも相手にもそのような接し方ができる由美さんだから、周りのスタッフもますます協力してくれるようになるのだなと気づかされました。「いつもできるわけじゃないけどね(笑)」と言いながらインタビューではにかんでいた由美さんの表情もとても優しくあたたかでした。
自分の中にいる たくさんの「○○な自分」に気づいていくことは自分だけでなく、相手を理解する一歩なのかもしれません。皆さんの中にはどんな「自分」がいますか?


次回もお楽しみに★


日本看護コーチ協会

由美さんも学んだ看護コーチング公開講座も続々お申込みいただいてます!



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