同じ悩みを共有すると、毎日が変わり始める「君は放課後インソムニア」

大型書店の漫画コーナーに目を向けると、毎回作品の種類の豊富さに驚く。大型書店なのだから種類が豊富なのは当たり前じゃないかと思うかもしれないが、今はとにかく様々な漫画が店頭に並んでいるので、ピンと来ない方はぜひ足を運んで欲しい。

私は活字の本が好きでよく読んでいるが、漫画も大好きだ。凄く詳しいというわけではないものの、面白い作品は追っていきたい。活字の本も漫画も、それぞれに良さと驚きがある。どちらが上という話でもない。

そんな私が2020年に読んで、現在進行形で夢中になっている作品がある。オジロマコトさんの「君は放課後インソムニア」だ。

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「君は放課後インソムニア」は、ビックコミックスピリッツで連載中の漫画である。主人公は不眠症に悩む男子高校生の中見丸太(なかみがんた)。文化祭の準備の最中に、使われなくなった学校の天文台で、クラスメイトの曲伊咲(まがりいさき)と出くわす。曲も中見と同様に、不眠症を抱えていた。

眠れないことを周囲に打ち明けておらず、一人で悩んでいた中見と曲は、秘密を共有するという不思議な関係を結ぶ。同じ悩みを抱えた二人が織りなす青春ストーリーだ。

作品の特徴としては、大事な場面ほどセリフが少ないことが挙げられる。例えば、1巻の天文台を秘密の場所として使用していることが教師にバレて、ダメ元で今はない天文部を発足させることを提案したところ、それが認められたシーン。職員室を出た二人は、安堵感で思いっきり笑う。そこにセリフは一切無い。「秘密の場所が奪われなくて良かった」という思いを、笑顔の一コマのみで表現していた、印象的なシーンである。

中見も曲も、眠れないこと以外はごく普通の高校生活を送っている。友達がいて、苦手なクラスメイトがいて、時々教師に救われたり、衝突したりする。プラスやマイナスが突出していないからこそ、「眠れない」という状態が際立つ。

2021年1月現在、単行本は5巻まで発売されており、私は4巻まで読んだ。様々な経験を共有した二人は、いずれは恋愛に発展するのだろうか。そうなったらそうなったで楽しめそうだが、やっぱりその展開だとつまらないなと思う。この見守りたい距離感を保っていて欲しいというのが、一読者である私の勝手な希望だ。

ページを通して伝わる二人の空気感、一つ一つの場面、ここまで全部を大切にしたいと思った漫画はこれまでに無かった。読むと青春の甘酸っぱさが体に浸透してくる「君は放課後インソムニア」、オススメである。

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