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【エッセイ】思い出せなかった曲名

最初にその曲を聴いたのは、高校の体育祭の競技中。

当時はジャンル問わず音楽に詳しくなかったので、歌っているグループも曲名もわからなかった。それでも「走り出した 足が止まらない」というサビの歌詞は、競技が終わり、グラウンドから退場してからもなんとなく頭に残っていた。

数年経って、それがチャットモンチーというバンドの「風吹けば恋」という曲だということを知る。

大学生になってから、多くのミュージシャンの曲を聴くようになった。様々な手段で音楽の情報を入手し、名前だけ知っていたグループから、全く知らなかった人達まで、片っ端から聴いた。

チャットモンチーも、音楽を熱心に聴くようになってから、割とすぐの段階で聴いた。「ハナノユメ」という曲を好きになった。2015年にはライブを観た。対バンツアーの広島公演。なぜかゲストは柳沢慎吾だった。

好きなバンドではあったけど、つい最近困ったことが起きた。ふと頭の中で歌った時、「風吹けば恋」というタイトルが出てこなかったのだ。

歌い出しもわかる、サビの歌詞も覚えている、チャットモンチーの曲だということももちろんわかる。それなのに、タイトルが思い出せない。「チャットモンチーの『駆け抜けて恋』みたいな曲なんだっけ?」みたいな状況に陥った。

好きなバンドの曲なのに忘れてしまった、というよりも、オリジナリティのある曲名なのに忘れてしまったというショックの方が大きかった。

そもそも、「さくら」とか「三日月」のような、ありふれた曲名の方が忘れないのだろうか。元々知っている言葉が曲名だから、忘れることはないとは思うが。

私の敬愛するバンド「ソウル・フラワー・ユニオン」は、他のミュージシャンにはまず見られない、特徴的な名前の曲が多い。ソウルフラワーのほぼすべての楽曲を作っている、ギターボーカルの中川敬さんは、曲名を付けたらまずググるらしい。「さらば青春の光」というソロ曲を作った時は、ググったことで布袋寅泰さんにも同名の曲があることを知って「あばよ青春の光」に変えたとライブのMCで語っていた。

オリジナリティのある曲名は、目に入った時に覚えやすいが、忘れた時のリスクが大きい。元々馴染みのない言葉なのだから、脳内の引き出しから出てこないのも無理はないと思う。

結局、自力ではどうしても思い出せないし、「チャットモンチー 駆け抜けて恋」で検索してもヒットしないので、「走り出した 足が止まらない」という歌詞で調べて、ようやく曲名を思い出した。おそらくもう忘れない。

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