【エッセイ】嫌な思いすら出来なかった
読書が好きなので、よく書店に行く。私にとって大型書店は、歩くだけで心をプラスの感情で満たしてくれる場所である。
書店に何度も通って、売れ筋の本を観察すると、その時々のトレンドが見えてくる。最近はなんとなく、「いかにして嫌なことから逃げるか」がテーマの本が増えている気がする。
少し自分の話をすると、2021年8月から通っていた就労移行支援事業所に、体調や人間関係の問題で通えなくなり、働くどころか働くための準備すら出来ない状態だった。
無職であり、無職から抜け出すための行動も取っていない場合「この世の中で嫌なことすら味わえない」という状態に陥ってしまう。
その間何をしていたかというと、とにかく楽しいと感じることで時間を埋めていた。ただ、私は壁とか課題とかに立ち向かって、それらを乗り越えて成長してきた人間だと思うので、それが無いまま楽しいことを味わうのは難しい。
書店で「嫌なことから逃げるためのノウハウ」が詰め込まれた本を見かけることは、「嫌なことに立ち向かっている世の中の人間」と自分を比べてしまうトリガーになっていた。それがかなりつらかった。
嫌なことが蔓延している世の中についてあれこれ言うのはまた今度にして、書店に行くたびに疎外感を感じていたのは事実である。
最近、そういった状態から抜け出すチャンスがやってきた。就労継続支援B型事業所に通うことが決定したのだ。事業所とは雇用契約を結ばないので、最低賃金以下の工賃しかもらえないのだが、働くことに慣れるということにはうってつけの場である。
そのB型事業所で、もちろん嫌な思いはしたくない。とはいえ、ここで働くことによって、「世の中」を味わいたい。そう思っている。
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