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Day10「コスト合理性とは?トータルコスト費用感と算出項目の整理」 @ ガバメントクラウドについて考えるAdvent Calendar 2022

この記事は、ガバメントクラウドについて考える Advent Calendar 2022のDay10「コスト合理性とは?トータルコスト費用感と算出項目の整理」となります。

※こちらの記事は基本的には公開情報を元にしていますが、個人的な妄想・意見も含まれておりますので、ご承知おきください。

このAdvent Calendarは、日々活動している中で課題として感じることなどをどこかで整理しなくてはいけないと思っていて、ちょうど良いタイミングだったので、全日自分が思うところを書くというスタイルにチャレンジして、どこまで続けられるかやってみたいと思います。
https://adventar.org/calendars/8293

以前、以下のツイートに多くのことをまとめてみたのですが、改めて整理していきます。

コスト合理性とは?

令和4年10月7日に閣議決定された「地方公共団体情報システム標準化基本方針」では、標準化システムにガバメントクラウド以外の利用を選択することも条件付きで可能とされました。

地方公共団体が標準準拠システムにおいてガバメントクラウドを利用すること は、標準化法第 10 条により、努力義務とされている。地方公共団体は、標準準拠システムの利用において、ガバメントクラウドの利用を第一に検討すべきであるが、ガバメントクラウドと比較して、ガバメントクラウド以外のクラウド環境その他の環境の方が、性能面や経済合理性等を比較衡量して総合的に優れていると判断 する場合には、当該ガバメントクラウド以外のクラウド環境その他の環境を利用す ることを妨げない。

https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/c58162cb-92e5-4a43-9ad5-095b7c45100c/6dbf8e35/20221007_policies_local_governments_policy_02.pdf

また、こちらを考えるにあたり、変わったポイントは以下です。多くの方々がガバメントクラウドの利用料をデジタル庁が負担してくれると思っていたため、無条件に移行したほうがメリットがあるという感覚でいたと思うのですが、ここではそもそもこれらは元々自治体で運用経費に相当するものだよねということで、かなりの確率で地方自治体がガバメントクラウドの利用料を払うことになりそうな感じがします。

地方公共団体の基幹業務システム等が活用するガバメントクラウドの利用料については、クラウド利用料は地方公共団体が現行システムで負担する運用経費に 相当するものであること、標準準拠システムを効率的に構築・運用していくため の競争環境を適切に確保していく必要があること、ガバメントクラウド上の各種サービスへの円滑な接続など他の環境にはない利点があることを踏まえ、ガバメントクラウドの利用に応じて地方公共団体に負担を求めることについて、業務全 体の運用コストや利用料等の見通しの情報を明らかにした上で、デジタル庁、総務省、財務省、地方公共団体等が協議して検討を行う。

そのため、先のガバメントクラウド以外の選択肢というものが提示されているのではないかと考えております。これに伴い、今回の標準準拠システムへの移行についての補助金についても、ガバメントクラウド以外の環境で構築されたものについても例外的に対象に含めるという方針に変わっています。補助金については、Day13で触れる予定なので、ここでは引用だけに留めます。

また、ガバメントクラウドを活用した環境で構築された標準準拠システムへの 移行に対して補助することが原則であるが、ガバメントクラウド以外の環境で構 築された標準準拠システムへの移行に係る事業については、次の条件をいずれも 満たすものを例外的に対象に含める方向で、検討を行う。

では、ガバメントクラウド以外の選択をする場合の「性能面や経済合理性等」のうち、経済合理性とは何なのか、そしてどうやって示せばよいのかについて考えていきたいと思います。ちなみにこちらの基本方針についてはこれ以上の情報はないため、経済合理性を示すためにどのような情報の共有が必要なのかについては現時点では明らかになっていません。

トータルコスト費用感と算出項目の整理

こちらを考える上ではシステム全体に係る総合的な費用を検討する必要があると思います。結局どんな区分けに費用が分類されようとも、自治体が支払う金額は支払う金額です。これらの費用を網羅するための、システムを構成する費用に関わる項目を整理する必要があると思われます。

私もまだまだ整理段階なのですが、一旦こちらのスライドのようにまとめてみています。まずこちらを見ていただいても分かる通り、既存環境からガバメントクラウドへの単純リフトと比較するのか、クラウドネイティブシフトと比較するのかが明確ではありませんが、とりあえず両方のケースについて考えています。

比較カテゴリについては、ネットワーク、運用・標準化アプリケーション・設計・インフラとしています。一番下に委託サービスレベルとありますが、ここは運用費に跳ね返ってくる部分ですが、直接的な費用のカテゴリとはしていません。

ネットワーク

ネットワークについては、中間報告の考察でも述べましたが、20業務をガバメントクラウドに移行する場合に、20業務以外もガバメントクラウドに移行するか、引き続きオンプレミス・プライベートクラウドに配置し続けるかで、複数の拠点に対してのネットワークの敷設が必要かを検討した結果によって、費用感が変わってくると思います。言わずもがなですが、拠点は集約したほうがネットワークの費用は抑えられるでしょう。ただ、補助金の項目にもあるのですが、オンプレミス・プライベートクラウドに20業務を配置したとしても、ガバメントクラウドに対して接続しておきなさいということにはなっているので、最低限の敷設は必要かもしれません。こちらもその時のネットワーク設計の難しさがあると考えていまして、別日に記事を書きたいと思います。

運用

運用はネットワークとも絡むところなのですが、複数拠点・複数技術を利用するかによって費用算出が変わってきます。複数拠点を別々の業者に頼んで、統合する業者を立てるのか、1業者で双方を見させるのかなど、自治体が普段からお付き合いのあるお近くの業者さんがキーとなってくるポイントになりそうです。複数技術を見るということは求められるスキルセットが違うということなので、両方とも長けている方であれば問題ありませんが、それもおそらく限られてくるでしょうから、人材不足による二重運用や、そもそも人材確保なども費用に跳ね返ってくると思います。

いずれにしても、そもそもガバメントクラウド上の20業務と、残された20業務以外のシステムを双方運用していくのは、スキルセットだけの問題ではなく、性質の違うプラットフォームに対して、異なるアプローチをする必要があるので、今までとどのように変わるかを整理しなければ、安易な費用試算になってしまうと思います。そのため、またこちらも別日になりますが、そもそもクラウドの運用をするにあたって、どのように頭の中を変えなければならないかについて、整理した記事を書く予定です。

標準化アプリケーション

こちらは昨日記事を書きましたので、そちらをご覧いただければと思います。

設計

設計も基本的には運用と似ています。クラウドだからといって設計が要らなくなるわけではないでしょうし、むしろ20業務以外との繋ぎの設計が追加で必要になると思います。そのため、20業務側のクラウドの設計と、20業務以外の設計と、その繋ぎの設計が必要になり、これらの設計は整合性がとれていないといけないので、1業者でやらなくてはいけないのではないでしょうか。

インフラ

インフラ観点では、ここだけの単純比較でどうにかなる問題でもないわけですが、クラウド側の価格が公開されていることに比べて、20業務以外についてはベンダーや業者の価格は確定しておらず、規模感に応じても変わってきてしまい、一概に比較できないのが難しいところです。

いずれにせよ、このように20業務とそれ以外のものについて係る費用を網羅的かつ総合的に洗い出して、試算していく作業が必要になりますし、クラウドを利用することにより、自治体側で今までのシステムに関する考え方を受け入れられるか、受け入れるにあたってどのように自分たちだけでなく庁内に認識してもらうかが重要となりそうです。

まとめ

今回はあくまで「トータルコスト費用感と算出項目の整理」ということで、あくまで課題感の全体像を整理するに留まりました。これから中盤後半にかけては、これらを具体化していく記事になっていくと思いますので、引き続き、よろしくお願いいたします。

執筆後記

このようにガバメントクラウドを考えるAdvent Calendar 2022では、以下の流れで進んでいくことになると思いますので、Day10以降もお待ちいただければと思います。

  • ガバメントクラウドの在り方

  • ガバメントクラウドの整備における課題感

  • ガバメントクラウドの利用における課題感

  • ガバメントクラウドの今後について考えてみる

Twitterなどで情報発信していますので、もしよろしければ覗いてみてください。