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アート作品の掲載許諾で地味に苦労した話

新企画編集部の白戸です。大晦日ですね。なんか早起きしたのでnoteを書いています。

ちょうと発売中の「ハウ・トゥ アート・シンキング 閉塞感を打ち破る自分起点の思考法」ですが、Amazonさんレビューもちょくちょく増えてきて嬉しい限りです。ありがとうございます。引き続きよろしくお願いします。

こちらの本、じつは地味にくろうしたのが掲載するアート作品の使用許諾をとることでした。なかなかマニアックな話ですが、複雑な著作権が絡んでくる所なので、だいぶ気を使いました。

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今回掲載したアート作品は、
①パブリック・ドメインのもの
②作者は故人となっているが、著作権は生きているもの
③現役アーティストのもの

①は基本的に作者の死後70年は著作権は生きますが、それ以降は法的な保護がなくなるというものです。ただ、死後○○年は国によって異なります。
*パブリックドメインとは


*世界各国の著作権保護期間の一覧

②に関しては、現時点でピカソとかは以外と死後70年経っていなくて、著作権が生きているんですね。本書では、「アヴィニョンの娘たち」を掲載していますが、以下の手順をとりました(ほかもだいたいこんな感じ)。
1.フォトストックサービスで写真を借りる
2.ピカソの著作権管理をしている日本の管理団体※に問い合わせる

3.フランス著作権事務所が本国の著作権団体に使用許諾を取る
※誌面レイアウトの提出が求められる
4.許諾認可下りる
5.支払い

使用サイズやカラーにもよりますが、トータルで3万円(写真代+写真使用量+許諾手続き)くらいでした。

今回の本で一番厄介だったのは、バーネット・ニューマンの作品です。本書ではバーネット・ニューマンの「ブラックファイアⅠ」(ページ見本の一番上)という作品を掲載しているのですが、ここもともとは「アンナの光」という作品を掲載する予定でした。

「アンナの光」は「DIC川村記念美術館」に所蔵されていましたが、2013年にどこかのコレクターに売却されました。その値は103とか104億とも言われています。本当はこれを使いたかったのですが、まず画像がどこを探してもありませんでした。画像がないので、ピカソのような手順が取れません。じつは内心では「どこかから写真くらい借りられるだろう」と油断していて、校了直前で「やばい、ない! どこにも写真なくない?」という状態になりました。

このバーネット・ニューマンの作品も、作品の著作権自体は、本国の「The Barnett Newman Foundation」が管理しており、ここの許可さえとれれば大丈夫だろと鷹をくくっていたのです。知っている人から見ればそんなの当たり前だろってことなんでしょうが、こういうところは著作権だけを持っていて、画像自体は持っていません。この辺のことをあまりよくわかっていませんでした。

結局、画像がないので他の作品に差し替えようと探し始め、ようやく同じバーネット・ニューマンの作品「ブラックファイアⅠ」をイギリスのフォトストックサービスに見つけました。急ぎ問い合わせ、Paypalで決済して、ページを作り、日本の管理団体JASPARさん(多くの海外作品の著作権に関する日本の窓口団体)に必要書類とレイアウトを送り、JASPARさんからThe Barnett Newman Foundationに使用許諾を取り付けてもらい、なんやかんや正式に許諾が下りたのが、校了日前日でした。マジで焦りました。

そんな感じでアート作品の著作権に関しては、許諾申請してから許可が下りるまでにそれなりに時間がかかるので、余裕をもったスケジュールで進めましょう。という自戒を込めたレポートは以上になります。少しでも何かの参考になればと思います。

にしても、今回Google翻訳にはめちゃくちゃお世話になりました。精度がものすごく上がっていますね。難しい著作権とか使用許諾申請とかも、Google翻訳使いながら本国の権利団体に送ってふつうに通じたし、返信もすべてほぼ正確に訳してくれて本当に助かりました。

あと、どうしてもわからないときに頼ったのが、CRIC公益社団法人著作権情報センターさんです。本当に助かりました。ありがとうございました。

それでは、みなさん良いお年を!

まとめ

・著作権は複雑だから専門家に聞きながら慎重に

・著作権が個人所有のものは許諾を取るルートが見つけづらい

・だいたいの作品はどこかの大きな「著作権管理団体」窓口として存在する

・ややこしそうな物は余裕を持ったスケジュールを

・Google翻訳はすごい

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