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モトツーリズムのインフラとしての「道の駅」

 モトツーリズムはモーターサイクル(バイク)による長距離の走行もあることから、行程途中の休憩所が必要である。また、ゴールとしても駐車スペースは必要である。そこで重要となるインフラが全国各地にある「道の駅」である。本稿ではモトツーリズムの重要なインフラとなる「道の駅」について概説する。

1.「道の駅」が求められる背景
 長距離ドライブの増加や女性、高齢者のドライバーの増加に伴い、道路交通の円滑な流れを支えるため、一般道路でも安心して自由に立ち寄り、利用できる快適な休憩空間「たまり」が求められている。また、人々の価値観の多様化により、個性的で興味深い空間が望まれており、これらの休憩施設では、沿道地域の文化、歴史、名所、特産物などの情報を活用し、多様で個性豊かなサービスを提供することができる。さらに、これらの休憩施設が個性豊かでにぎわいのある空間となることで、地域の核が形成され、活力ある地域づくりや道を介した地域連携の促進が期待されている。こうした背景から、道路利用者のための「休憩機能」、道路利用者や地域住民のための「情報発信機能」、そして「道の駅」をきっかけに町同士が手を結び、活力ある地域づくりを共に行うための「地域の連携機能」という3つの機能を併せ持つ休憩施設「道の駅」が誕生した。なお、「道の駅」の設置者は市町村等で、国土交通省道路局に申請し登録する。「道の駅」は、令和6年8月7日現在で1,221駅が登録されている(図1)。

図1 全国の道の駅
出所:国土交通省公式サイト,https://www.mlit.go.jp/road/Michi-no-Eki/list.html

2.「道の駅」の機能
「道の駅」の目的としては、
 ①道路利用者への安全で快適な道路交通環境の提供
 ②地域の振興に寄与
 の二つがある。
 この目的のもとに、①休憩機能、②情報発信機能、③地域連携機能という3つの機能がある。
 まず①休憩機能については、24時間利用可能な電話や清潔なトイレ、ゆったりした駐車場の基本施設と併せて、レストランや公園、温泉・宿泊施設などが利用できる駅もある。このように「道の駅」は、誰でも快適にくつろげるような休憩機能をもっている。
 ②情報発信機能については、「道の駅」は地域の情報ステーションであり、道路情報や歴史・文化、名産品や観光地などを紹介する案内板や資料館、物産販売コーナーなどがある。さらに郷土芸能や朝市・展覧会などのイベントも催され、様々な情報を発信して、利用者との交流を図っている。
 ③地域連携機能については、「道の駅」をきっかけに、まちとまちが連携して活力ある地域づくりに取り組んでいる。駅相互の連絡を強化することによって、経営内容の改善やサービスの向上が図れるだけでなく、機能の補充もしあえるので、利用者に安心や魅力を与えることができる。

図2 「道の駅」の機能
出所:国土交通省公式サイト,https://www.mlit.go.jp/road/Michi-no-Eki/outline.html

3.道の駅の整備フロー
国土交通省によると道の駅の整備フローは以下の通りとなっている。
① 「道の駅」を設置しようとする市町村等が、「道の駅」の全体構想計画を策定する。
② 当該市町村等が、道路管理者と相談しながら、全体構想計画を踏まえ、事業計画の策定、設計等を行い、「道の駅」を整備するための事業を実施する。
③ 基本コンセプトに適合する場合に、当該市町村等が「道の駅」設置者として、登録申請手続を行う。
④ 国土交通省道路局による登録手続と並行し、「道の駅」設置者は、管理運営手法の検討及び決定を行い、国土交通省道路局の登録後に供用開始する。(図3)

図3. 道の駅整備フロー
出所:国土交通省公式サイト,https://www.mlit.go.jp/road/Michi-no-Eki/outline.html

 「道の駅」には、休憩施設、駐車場、便所のほか道路及び地域に関する情報を提供する案内所又は案内コーナーを整備することが求められている(図4)。「道の駅」設置者は、これらの施設を自主財源のほか、要件を満たす場合には国や都道府県の補助制度を活用し、整備することになる。また、「道の駅」の整備方法には、「道の駅」設置者が単独で「道の駅」に関する全ての施設を整備する「単独型」と、「道の駅」設置者が整備する施設に加え、道路管理者が駐車場、便所など一部の施設を整備する「一体型」の2 つの方法がある。

図4.「道の駅」の施設配置
出所:国土交通省公式サイト,https://www.mlit.go.jp/road/Michi-no-Eki/outline.html

4.道の駅とモトツーリズム
ここであらためて「道の駅」の機能を確認しつつ、「道の駅」とモトツーリズムの関係性について概説する。
 まず一つ目の機能である①休憩機能である。「道の駅」にはそのために駐車場、トイレ、休憩施設が整備されている。駐車スペースにおいてはバイクを停めることができるスペースが確保されているがシーズンによっては台数的に限りがあり自動車駐車スペースまで溢れている場合がある。また、モトツーリストが多く訪れる「道の駅」では常時溢れている。したがって、整備した当初よりもモトツーリストが訪れる台数や頻度が多い「道の駅」では、需要に応じてバイクの駐車スペースの拡充などが求められる。また、バイクは車と違って車内でシートを倒して仮眠するなどの機能が無いことから、休憩施設に仮眠ができるスペースや機能などがあるとモトツーリストが快適に休憩することができ安全走行に繋がる。
 次に、②情報発信機能について、モトツーリストは「道の駅」を活用することで、地域の文化や特産品に触れる機会を得られる。これは、地方の魅力を発信し、観光客を引き寄せる重要な要素となってる。また、モトツーリストは通常、一般の観光客と比べて移動範囲が広く、未開拓の観光地や隠れた名所へのアクセスが可能である。その結果、これらの場所の知名度が上がり、新たな観光客の誘致につながることがある。したがって、「道の駅」としては、モトツーリスト特有の行動パターンを理解し、地域を回遊してもらうための情報発信を行うことで、地域の観光振興を促進することができる。
 最後に③地域連携機能である。モトツーリズムはモーターサイクル(バイク)によるツーリズムであることから長距離の移動をともなう場合が多い。そうなるとツーリズムの行程においていくつかの「道の駅」に立ち寄ることが想定される。したがって1つの「道の駅」がある1自治体でモトツーリストを誘客する仕掛けをすることも大切だが、例えばモトツーリズムのコースの複数の「道の駅」が連携して、そのコース自体をコンテンツとして整備し、プロモーションやブランディングを図ることでエリア(コース)として誘客につなげることができることも考えられる。
 モトツーリズムは地域経済に対して直接的な経済効果をもたらす。モトツーリストは宿泊施設や飲食店、地元産品を販売する店舗などで消費を行い、地域の産業やビジネスの支援に貢献する。「道の駅」は、このような消費活動の促進において中心的な役割を果たす可能性を秘めており、モトツーリスト向けの特別なイベントやサービスを提供することで、さらなる魅力を提供することができる。「道の駅」をモトツーリスト向けにいかに価値のあるものとして整備していけるかも、地方誘客につなげる上で重要なテーマである。

引用参考文献
国土交通省公式サイト,https://www.mlit.go.jp/road/Michi-no-Eki/list.html (2024年8月22日閲覧)
国土交通省公式サイト,https://www.mlit.go.jp/road/Michi-no-Eki/outline.html  (2024年8月22日閲覧)
国土交通省公式サイト,https://www.mlit.go.jp/road/Michi-no-Eki/outline.html  (2024年8月22日閲覧)
国土交通省公式サイト,https://www.mlit.go.jp/road/Michi-no-Eki/outline.html  (2024年8月22日閲覧)

※トップ写真は筆者。「カブの駅」は民間のものであり、本稿で紹介したいわゆる「道の駅」とは異なるものである。

文責 林恒宏(岡山理科大学経営学部准教授)

(一社)日本モトツーリズム推進機構公式サイト