楽典の山場、調判定

ここ数年、ありがたいことに、高校生や社会人に楽典を教える機会が増えている。
楽典関連の本を簡単に読んだことがあるという人もいれば、全くまっさらな状態の人もいる。私は効率が良く内容的にも問題のない教え方をおおよそ体得したが、唯一「調判定」に関してはいまだ苦労が絶えない。勉強している人たちも例外なく苦労している。

私が楽典を勉強し始めたのは、正確には覚えていないが小学5年生くらいだったと思う。高校の進路を考える上で、保険のように楽典を習っていた(今思えば音大の附属に進学する選択肢を持っていたのが不思議なくらいだ)。小6か中1までに一通り内容を終え、高校・大学入試レベルの知識は持っていたので、楽理科を受験する高3の頃にはもはや復習すらしていない。

小学生の頃、やはり私は調判定に苦心していた記憶がある。単旋律の調判定がどうしてもできなかったが、教える身ともなると、有名な音大の入試問題でさえ作問の怪しいところが散見される。今となっては感覚的に調判定ができてしまうが、解説のために理詰めで考えるのは意外と難しかったりする。

話は変わるが、小学生の頃、私は算数が大好きだった。ただ、周りくどい○○算(有名なところなら「つるかめ算」、他には池の周りの「旅人算」や「植木算」などがあっただろうか)というのが心底嫌いだった。"x"や"y"という便利な文字があるのに、それを使わずして無理やり解かせる謎の小学校教育といったら…とドリルを見ながら苦虫を噛みつぶすような顔をし、仕方なく解いていたのを覚えている。
xやyを使えば簡単に解ける式も、力ずくで数のみを使う。楽理科の受験期に、そんな記憶が頭の中をよぎった。

高3の途中から「和声」というものを学び始めた。一回だけ作曲の先生に見てもらったことがあるが、それを除けば半年くらいの勉強を独学で乗り切った。その期間に、和声をある程度覚えれば調判定にも十分活かせることもよく知った。それなのに、楽典の本には和声の項目がおよそ載っていない(最近出た藝大のお墨付き的な本はそこを若干カバーしているとか。人に借りて読んだだけなのでよく知らない)。
和声を島岡和声なら2巻の後半まで勉強すれば、ソプラノ課題(=調判定なら単旋律の問題にあたるだろうか)の和音設定を習得することで大体の調判定ができるし、非和声音という厄介なものもあらかた理解できる。だから和声を楽典の勉強と並行してやってしまえばいいのに、と思う今日この頃。
※ ただ、上述した「和音設定」というのは意外と和声の本でも概略しか書かれておらず、体系的に理解するのは難儀する。

そんなわけで、楽典を教え始めた頃から調判定というものをメソッド化して欲しい、あわよくば自らしてみたい、と思っている。黄色い本の「跳躍進行する音は…」のような非音楽的なものでなく。


感覚ではわかるけど言葉では教えられない、では意味がないんだよなぁ。

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