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損失補填 1 自主的な紛争解決と損失補填

有価証券売買取引等において、金融商品取引業者の故意・過失により、顧客に損害が発生した場合、私上の一般原則のもとでは、業者は顧客に対して損害賠償する必要があります。

しかし、損失補填禁止の原則のもとでは、有価証券売買取引等において、金融商品取引業者の故意・過失により、顧客に損害が発生した場合であっても、業者が顧客に対する損害賠償を自由に行うことは、原則、禁止されています(金融商品取引法39条1項・2項)。

有価証券の売買等も私人間の取引です。有価証券取引において、金融商品取引業者の故意・過失により、顧客に損害が生じた場合、私的自治の原則のもとでは、当該事案について、当事者間で解決できるのであれば、本来、方式等を含めて当事者に委ねてもよいはずです。

しかしながら、金融商品取引においては、損失額の算定など技術的に難しい面があります。また、当事者間の解決に委ねてしまうと、私的な紛争解決と称して不当な利益が供与されるおそれもあります。

そこで、金融商品取引法は、有価証券売買取引等について、金融商品取引業者の故意・過失により、顧客に損害が生じた場合、金融商品取引業者が顧客に対して損害賠償する場合の方式について定めていると考えられます(金融商品取引法39条3項等)。

金融商品取引業者は、有価証券売買取引等において、たとえ明らかな故意・過失があったとしても、原則、事故確認等の手続きを経なければ、顧客に対して損害賠償することはできないことになります。


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