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『四人目の淑女』

1948年
監督:渋谷実
出演:森雅之、木暮実千代、月丘夢路、三浦光子、濱田百合子、笠智衆 他

これ、某サイトのキャスト表ではモリマの役が何故か上原謙になってるんですよね。
何故なんでしょう。最初は上原謙がやる予定だったのか?

とにかくこれは上原謙じゃなくてモリマなんです。

出征が決まった森雅之が4人の女性(木暮、月丘、三浦、濱田)に囲まれてハーレム状態で始まるお話。
この人たちは音楽学校のお友達ってことだそうですけど、なんとなく全員と男女関係がありそうな雰囲気でちょっと異様な空気である。

と、思ったらモリマの本命は濱田百合子らしく、そして両想いらしい。
4年後に復員したモリマは濱田百合子の「待ってるわ」の言葉を信じて、ヨレヨレ髭面のまま真っ先に濱田百合子に会いに行く。

ところが濱田百合子、「吉田さん(モリマ)がおみえになりました」と言われても「誰だったかしら…」と思い出せない様子。濱田百合子は家の借金を片付けるために、お金持ちの笠智衆(超ヒール役!)との結婚を決めていた。

落ち込んだモリマはほかの3人に会いに行くが、三浦光子はダンスホールの歌い手になってヒモみたいな若い男にしがみつき、月丘夢路はちょうど舞台で倒れ運ばれていくところだった。
病院まで追いかけたものの会わせてもらえず、しかも月丘夢路の周りには舞台中止による損害のことしか頭にない男ばかり。
「月丘夢路からお車代だよ」とお金を渡されここでも落胆。

恐る恐る最後に訪ねた木暮実千代は『マダムよ♡』ということでナイトクラブのマダムになっていた。なんとここにも笠智衆が登場!
どうやら木暮実千代はこのナイトクラブのマダムになるために、一度だけ笠智衆に身体を売ったことがあるらしい。笠智衆はあの喋り方のまんまで悪役やってます。

昔とはあまりにも変わってしまった女たちを目の当たりにし、絶望するモリマ。いつもは女を泣かせて不幸にする役回りがデフォなのにこの作品では逆転していて、ちょっと新鮮です。
「お金が全てじゃないんだ!正しく生きなきゃダメだ!」と力説するモリマを「世の中お金が全てなのよウフフ」と言いながらカジノへ行かせる木暮実千代。
モリマ、なんとそこで大儲け!しますが、もちろんこれは木暮実千代によるインチキです。

そのお金でモリマをお金持ちタキシードに変身させ、二人でもう一度女たちの元を訪れるが…

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モリマの小汚い復員兵モード→タキシード美男モードへの変身っぷりが素晴らしい!
ヨレヨレで前髪落ちちゃって無精髭でもモリマはキレイなんだよ。三浦光子を見つけた時のアップの目の美しさにも心臓撃ち抜かれましたど、やっぱり復員服よりピシッとしたタキシードが似合います。そりゃ濱田百合子もコロッと態度変えるよ。

そしてもうひとつの見所はなんといっても濱田百合子と笠智衆の「婚約パーテー(by濱田百合子)」です。みんなタキシードやドレス着てるのに着けてるお面はひょっとこやらキツネやらというガッツリ和テイストでその絵面はシュールの一言に尽きます。

モリマが金持ちになったと知ってコロッと態度変えてきた濱田百合子にニヤッと笑うモリマのあの顔最高ですね。お面はキツネだけど。
しかしモリマに冷たくされた途端にまた笠智衆に擦り寄って「ボロぞうきんみたいな女に興味はない」とまで言われる濱田百合子、あそこまでいくと哀れ。

結局モリマに希望を持たせてくれたのは木暮実千代だった。
モリマは何も知らないままどっか行っちゃうけど、包帯から見えるあの目はどう見たって木暮さんだし声もどう聞いたって木暮さんだぞ。

ラストの獣と女のダンスも意味不明で好き。
VHSは出てますので観る機会があれば是非。

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