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映画「ジョーンの秘密」から読み解く”スパイ”の悲哀

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実話の映画化です。
時は2000年5月。
80代になり、郊外の自宅で余生を静かに生きるジョーンは、イギリス情報部MI5により、ある日突然逮捕されてしまいます。理由は、第二次世界大戦時の「スパイ容疑」でした。

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1941年から核兵器開発機関において働いていたジョーンは原爆開発に深く関わっていたのです。

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大学時代に共産主義者の学生たちとの交流の延長戦上で、機密漏洩を大学時代からの恋人のレオに迫られますが、その都度、断固として拒否の姿勢を崩すことはありませんでした。

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たとえ、愛する人だとしても、祖国を裏切ることはありえないからです。
1945年、尊敬するデイヴィス教授とともに尽力した原爆実験が成功。そして、広島・長崎に原爆が投下されるのです。

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映画館でそれを知ったジョーンは絶望します。自分のやってきたことの重大な罪深さにおののいたからでした。
内的葛藤の末に、彼女はついに祖国を売る決意をします。レオに機密文書を渡す「スパイ」の役割を果たすことに同意したのでした。

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次々に危ない橋を渡るジョーンですが、研究者として渡ったカナダで面識があった科学者が、ソ連のスパイ容疑で告発され、自分の勤務先にも捜査の手が忍び寄る恐怖に耐えながらも、自分の信念を貫き通します。

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MI5に、学生時代の交友関係に始まり、捜査の対象として、綿密に積み上げられた自分の経歴を暴露されながらも「私は無実」と言い張るジョーンの脳裏には、過去の出来事が次々と甦ります。
若かったころの物理学に対する情熱や、恋人の愛を疑ったこと、そして新しい恋人となったデイヴィス教授との苦しくも充実した研究生活。それらが捜査当局に暴かれるたびに胸に去来するのでした…
スパイとして機密文書を敵国に渡すという、こんな大胆な行動に駆り立てられたジョーン。

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彼女には気の休まる時がなかったかもしれません。
バレれば国家反逆罪は免れません。それでも自分を信じて貴重な情報を敵方に渡し続けた信念に、心を動かされない人はいないのではないでしょうか。
執拗に彼女の助力を求める恋人の愛情を疑いながらも、「人類の世界平和への道」を孤独に歩む勇気と強い精神力には、本当に頭が下がります。

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突き詰めていけば、ジョーンの真理はただひとつ。「自分の行為があったからこそ、世界は救われた」だったのです。
アメリカの核開発が成功することで、しのぎを削っていた各国間の熾烈な戦いに不均衡が生まれるのを阻止するためには、複数の国が原爆を持つことだと信じていたからでした。

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そこには、彼女だけが気づき、他には誰も知りえなかった「真実・真理」があったのですね。

私も最近ニュースで知ったのですが、原爆は3,4発目が存在していたそうですね。日本の全面降伏を待たずに投下計画が出来上がっていたとか。
それを聞いて私は震え上がりました。それほどまでに日本が「世界の脅威」となっていたとは…

あれだけの破壊力を持つ原爆が2回で済んだことに、純粋に感謝の気持ちを持ちました。

通常の爆撃とはまったく次元の異なる殺人兵器づくりに自分も関わった罪悪感が、ジョーンをスパイの道に進ませたことは悲劇的ではありますが、一人の人間としての尊厳を保ち続けたその勇気は決して責められてはならないのかもしれません。

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ジョーン役にはジュディ・デンチ。現在のジョーンの感情表現は見事というほかありません。過去と現在に揺れ続ける一女性の姿を生々しく伝えてくれます。
レオ役には、英国ドラマ「女王ヴィクトリア」でアルバート王子を演じたトム・ヒューズが扮しています。甘いマスクと真剣な眼差しには、女性はなびいてしまうだろうな、という説得力がありました。

・・・◇ ◆ ◇・・・

私はスパイ小説やスパイ映画が大好きです。こんなにワクワク・ドキドキさせてくれる世界って、他にはないとは思いませんか?

古くはジョン・ル・カレが自身の経験を書いたスパイ小説、そしてその映画化「007/ダブル・オー・セブン」に始まり、現在まで数多くのスパイ映画を鑑賞してきました。

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私がなぜスパイ小説/スパイ映画が好きなのかをこっそり教えちゃいましょう!
それは、その世界に描かれている、諜報活動に欠かせないスパイの才能(資質)が自分の日常に使えるからなのです。
どういうことかというと、人は突発的な出来事に弱い生き物ですよね。
その絶体絶命の時に、どう思考し、行動するかはとっさには頭に浮かんでこないことが多いのではないでしょうか?
危機を切り抜ける方法。それがスパイ小説やスパイ映画にはびっくりするほど詰まっているのです。
一例を挙げると、あるスパイが敵に追い詰められ、それを切り抜ける手段を瞬時に判断する必要に迫られます。では、どうするか?
彼の頭の中では、今そこにある危機を脱するためのアイディアが、閃光のごとく浮かび上がります。決して慌てない凄腕スパイ!
彼らの臨機応変な対処法は、数えあげればきりがないほどです。
その時々の状況に応じて、敵同士が繰り広げる情報戦と頭脳戦はまさに息を飲むという表現がぴったり!
それらのエッセンスを自分のものとして蓄積(疑似体験)することで、あなたはいつ如何なる時にも、心に余裕をもって対処する自分を作りあげることができるのです。
どうですか?簡単でしょう?

ジョーンの秘密⑲


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