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サラリーマンになったらパワハラでうつ病にされてしまいました(6)

とある9~10月のうつ状態

 自分の職場を放棄しやがって。

 心ない一言が、かすかに残された心を根こそぎ抉り取る。縋るように求めた蜘蛛の糸は、果たしてどこへ繋がっているのだろう。

 ここではとあるうつ病にされたサラリーマンが緩やかに壊れていく様を、時系列に沿ってご紹介します。

Twitterから読み取れる9月のうつ傾向

9/7 いきがくるしい
 おまえのいけんは ぜったいちでは ない
 もういい すきに いきるよ

――当時のTwitterより抜粋――

 諦め。ただ諦め。

 ここでいう息が苦しいというのは、“居心地が悪い”の比喩ではなく、物理的に呼吸が苦しいの意味です。

 大黒様(ストレッサーである上司)は話を断定的に構築し、絶対譲歩しない人物でした。まともに相手をしていると折り合いがつかないんですね。

 そこにきて、8月から突入した“どうでもいい”モード。もう、何もかもがどうでも良かったのです。

9/7 かねだけが すべてでは ないよね
 その昔、どうでもいいなんでもいい、と繰り返し謳った人がいた。そんな
 そうありたいひとがそうあればいいんじゃないかなあ

――当時のTwitterより抜粋――

 どうでもいいの加速は止まらない。

 金だけが全てではない。

 ここに来てようやく、大黒様から頂戴した最も大きな贈り物『昇進試験は受けさせない』。その経済的ハラスメントについて、諦めがついたのです。

 ここまでしないと稼げない金なら、もう要らない。そう在りたい人が、そう在ればいい。

9/14 頭はたらかね。ずっと二択が続いてる感じ。

――当時のTwitterより抜粋――

 思考の瞬発力はありませんので、複雑なことが考えられない。『はい・いいえ』を繰り返して結論を出していく。

 結論を出すまで頭の中での試行手順がこんな状態。ものすごく簡単なことでも、時間ばかりが過ぎていきます。

9/19 からおけ いきたい なー
 まっくのにほひ まっくのにほひ なにかはいっているのか な

――当時のTwitterより抜粋――

 何というか、本当、気の毒です。この頃の自分。

Twitterから読み取れる10月のうつ傾向

10/18 おなかいたい
10/19 さけのんで ようやく 正気 ってね

――当時のTwitterより抜粋――

 この数日前、大黒様から一方的に罵声を浴びせられています。

「そんな案件放っておけ。自分の職場を放棄しやがって」

 こんな状態の人間に対して罵声を浴びせるような人物に、人を預かる資格があるだろうか。甚だ疑問です。

 お腹が痛いのは入口。ここから産業医面談を申し込んだことにより訪れる状況が、心の状態をさらに急降下させていくことになるのです。

うつ病がもたらす心的変化──サラリーマンとしての目的を諦める

 相変わらずひらがなばかりです。全く回復していないことが分かります。

 そしてここに来て呼吸が乱れがちになりました。珍しい体調面の変化。『ずっと頭痛』だった頃もありましたが、久しぶりの体調変化です。

 若い頃もストレスから過呼吸になったことがあります。今回はそんな決定的な状態にはなりませんでしたが、限りなく近いと思われます。

 さて内面的な方としては、上述のとおり『どうでもいい』の重ね掛けが止まりません。

 サラリーマンになった目的は、安定した収入と家族が誇れる社会的ステータス。昇進というものは、その両方を満たすために重要なポイントです。学校と違ってサラリーマンは評価を受けなければ基本的に給料が上がりませんので、それを諦めるというのは本来あり得ないことです。

 でも、Twitterにも書いている通り、『どうでもいい』のです。

 余裕の『どうでもいい』ではなく、諦めの『どうでもいい』。

 一人の人間がサラリーマンとしての目的を諦めたのです。家族を守るためになったサラリーマンとしての目的が、もう『どうでもいい』のです。

 うつになるとは、そんな状態になるということ。そのことを、知っておいてください。

うつ期によくある症状──頭が働かない──とはどのような状態か

 よくいう『頭が働かない』とは、具体的にはどのような状態なのか。

 記憶領域が狭くなる、というのが近いでしょうか。

 パソコンにたとえてみましょうか。HDDの容量というよりも、使えるメモリが極端に少ない感じ。同時にいろんなことが考えられません。

 使えるメモリが少ないのでHDDに負荷がかかる。自分の場合はさらに『どうしてどうして』というノイズで常にHDDへ読み込みが行われている。このように高度な脳の使い方ができなくなっている状態です。

 しかし職場長として、立場上結論を出さなければならない場面が常に存在していました。複雑なことが考えられない。頭の中で延々と二択を続けながら、時間をかけて無理やり結論を出します。悪循環なのが容易に分かります。

 うつになり『頭が働かない』とは、このような状態です。

さらに一歩踏み込んだうつの症状──危機感を覚えるほど極端な自己否定

 この時期は主要客先以外の顧客を数件抱えていました。

 とある客先の案件に取り組んでいたところ、ふらりとやってきた大黒様から告げられた一言。

「そんな案件放っておけ。自分の職場を放棄しやがって」

 何も分かってもらえていなかった。

 歴代の担当者が滅茶苦茶にした職場を正し、従業員のやる気を取り戻し、主要客先から感謝の言葉をいただくまでに育て上げた職場を。歴代のどの担当者よりも真剣に向き合ってきたという自負のある職場を。よりによって『放棄している』と表現されたのです。

 こんな心の状態にされてなお、いつかは分かってもらえると信じて働いてきました。

 無駄でした。

 何も分かってもらえていなかった。この一言が止め。この一言で、何かが音を立てて壊れました。

 心が動かない。感情が浮かんでこない。それに加えて極端な自己否定。

・何を考えても正しい判断だと思えない
・人の仕事を見てもできる気がしない
・今までどうやって来たのかも思い出せない

 危機感。このままの状態でいることは危険だ。本能がそう告げています。

 まだ辛うじて、ほんの少しだけ残された危機感だけを頼りに、産業医との面談を申し込みました。

 そう、ストレスチェックです。高ストレス者に該当している場合、希望者は産業医との面談を受けることが出来ます。自分は高ストレス者に該当していました。『原則、相談者に不利益はない』との記述。それだけが蜘蛛の糸に思えたんですね。

 ですが、この選択がまた、破滅を加速させることになるのです。

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