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サラリーマンになったらパワハラでうつ病にされてしまいました(11)

そんな1月のうつ状態(2)

 集中はしている。だが熱中はしていない。趣味はできている。だが心そこにあらず。ただ冷静に。ただ客観的に。時間だけが過ぎていく。

 寒い。脳がむずむずする。背中が気持ち悪い。脳を引っ張り出すような感覚を、常に味わいながら過ごす日常。

 顔を隠す。出社して真っ先に顔を隠す。マスクを装着し、考え事をするときはタオルで顔を覆う。

 何となく気付いていた。

 認めたくなかった。

 自分がうつ病なのではないかと。

 忘れない。私は忘れない。私と私の家族は、この時の経験を絶対に忘れない。

 ここではそんなうつ病にされたサラリーマンが緩やかに自分を取り戻していく様を、時系列に沿ってご紹介します。

遺した日記から読み取れる1月中旬のうつ傾向

1/11 それなりに会話した 割とスッキリしている 頭は重い 夕方頭痛薬
 カラオケに行く 音程がよくわかる

――当時の記録(日記)より抜粋――

 わざわざ「会話をした」と書いている。そう、しゃべらない時は全くしゃべりませんでした。というか、疲れている感がずっと続いているので、しゃべりたくないという感じが近いでしょうか。

 それから、趣味はできますが気持ちが全く上がってこないので、妙に冷静だったりします。音程がよくわかる、というのは何か特殊な効果ではなく、妙に客観視しているからなんだと思います。

1/12 頭は重い ザラザラする感じ 脳が平らにされている感じ
 脳が引っ張られている感覚 ターチャンの金玉みたいな

――当時の記録(日記)より抜粋――

※ターチャン:ジャングルの王者ターちゃんのこと。徳弘正也のヒット作品。徳弘作品独特の下ネタギャグの中で、金玉を引っ張るという表現が散見された。現実においては作品のように伸びることはない。造形的にはカンガルーのそれに近い

 またおかしなことを書くようになりました。

 ただ、脳に違和感があるというのは確かです。基本的に頭痛はデフォで装備していますが、その痛みの角度というか感覚が、色々あります。

1/14 いやな夢を見た うっすら眠いというか目が疲れている感
 頭が痛い 頭痛薬で治まらず

――当時の記録(日記)より抜粋――

 悪夢からは逃れられません。大黒様(ストレッサーである上司)から罵倒される夢ばかり見ていました。

 相変わらず寝不足で頭痛が続きます。市販の頭痛薬では治まったり、治まらなかったりです。

 薬で治まったり治まらなかったりなんて、冷静に考えると当たり前のことです。ですが、その成功率がグッと下がります。この時期は毎日のように飲んでいました。ほぼ効きもしない頭痛薬を。

1/15 脳がむずむずする 背中が気持ち悪い

――当時の記録(日記)より抜粋――

 実際、背中とか首にかけておかしな感覚があった事は何となく覚えています。

 こういう症状は戻ってきてしまうと全く分かりませんので、元からメンタル不調になった事ない人には、到底理解できない症状だと思っています。

1/16 寝つきが悪かった 頭が痛い 考えがまとまらない 眠気がひどい
 病院へ行こうと決意する 家族に相談

――当時の記録(日記)より抜粋――

 この日、ようやく認めました。

 自分がおかしい。自分は病気なのではないのかと。

 何となく気付いていた。だけど認めたくなかった。自分がうつ病なのではないかと。

 この結論を自ら出すまで、どれくらいの時間がかかっただろうか。それまで何事もなく、普通に接してくれていた妻には感謝です。

1/17 よく寝たが眠い 腰がふわふわする カブみたいに脳を引っ張り出すようなイメージ
1/18 朝方起きる 風邪が原因か? 眠い 風邪が原因か?

――当時の記録(日記)より抜粋――

 やはり、脳に違和感を感じるというのが共通点ですね。

 カブなんて引っ張った事ありませんけど、そういう感覚があったのでしょう。

うつ病が放置で治らない5つの症状と3つの原因

 治ると思っていました。放っておけば治るだろうと。

 治りません。ハッキリ言います。治りません。その理由を以下の通り考えてみました。

 私の場合、代表的な症状が以下の5つでした。

・考えがまとまらない
・言われていることが理解できない
・ほぼ毎日頭いたい、もしくは重い
・思考にスピード感がなくなる
・同時にいろんなことが考えられない

 これらは特有の症状として、周囲の人たちから理解さえしてもらえればいいと思います。しかし「放っておいたら絶対に治らない」と言い切れるのは、以下3つの原因。

・ずっと疲れている
・起きている間はずっと眠い
・悪夢を見て疲労困憊で目が覚める

 このループにより疲労がどんどん蓄積していきます。

 休もうとしても休められない。ですから。治りません。無理です。それくらい睡眠は大事です。

 私は専門家ではありません。ここで書いていることはあくまでも、個人の経験から出した結論です。ですが、ずっと寝てなければ思考も鈍る。そんな事は普通に考えても当たり前のことです。

 ゆえに断言します。うつ病は放置しても治りません。

「ちょっと待ってね」

 この時期の口ぐせは「ちょっと待ってね」です。

 普段なら即答するくらいの質問に対して、まず待ってもらう。考えて、考えて、考えて、結論を出す。ゆっくりと、単語の一つひとつを間違わないよう気を付けながら、ゆっくりと話す。

 自覚はしています。でものんびり生活していれば治ると思っていました。治りませんでした。

 ついに諦めました。事実として認めて、妻に相談しました。

 この結論を出すのは本当に勇気がいります。認めるのです。自分がうつ病じゃないのかと。

 自分も辛いですが、妻の方がどれだけ辛かっただろうか。シャッキリしていた人がこんなふわふわした状態にされて、それでも普通に接し続けてくれたのです。

 私は、私と家族は、この時のことを忘れない。絶対に、忘れない。

集中しているが熱中していない──動けること自体はうつであるか否かとは関係ない

 趣味に関してはできます。できますが、ただやれているだけと言った方が正しいです。

 集中もしています。しかし妙に冷めている自分がそこにいます。熱中していないと言いかえてもいいです。どちらかというとちょっと離れた空間から自分を見ているような感覚。話に聞く幽体離脱とか、そんな感じが近いのだろうと思います。

 この時期はまだ2つあるバンドのうち1つはサポートだったので、どちらかと言えばドラムの方になりますか。前述の通り客観的に見ているので、音の粒が綺麗に聞こえてきたことを記憶しています。

 音の粒が聞こえるだけです。上手く叩けるというのとは同義ではないです。

 ただ、身体が動くか否かで、うつかどうかを判断される方は多いです。趣味ができる。元気じゃないか。うつだというのも嘘だろう。そう言われがちです。

 趣味はできます。できますが、こういう状態です。

 やれている。ただそれだけなのです。

空虚感による寒気──幻覚でも物理的なものでもないうつ期特有の症状

 寒いです。季節によるものではなく、本当に寒い。

 気候的な寒さでも、風邪による寒気とかでもなく、背中から魂が抜けていくような感覚。

 背中から魂が抜けていく。首の後ろから蓋が開いて小いさい人がぞろぞろ出てくる。そのような表現で日記へ記しています。実際に目に見えない何かが、抜けているのかもしれません。そのくらいの空虚感です。

 具体的にはどのくらい寒いのか。防寒着が手放せません。

 暖房の効いたオフィスに座っているのに、コートを着ています。別のエピソードで書きますが、マスクも着用しています。フル装備です。繰り返しますが、オフィスに暖房は効いています。

 ボーっとした目つきの人が、コートやマスクをフル着用して、お菓子食べながら仕事しています。自宅ならともかくオフィスで。

 思い返せば異様としか言いようがありませんが、本人だって好きでこんなことしているわけではありません。

 こういう場合、お気の毒とか思わず普通に接してくれることが救いになります。

うつ期は顔を隠すと落ち着く──出勤して真っ先にやることがマスクの装着

 顔を隠すと落ち着くので、よくマスクをしていました。

 常時マスクを着用していたのと、よくタオルで顔を覆っていたことを覚えています。

 出勤して真っ先にやることが、マスクの装着でした。冬場なので特に違和感はなかったと思いますが、無いと落ち着かないので極自然に着用していました。

 職場としても風邪やインフルエンザの予防として配布していたので、「真面目だな」くらいの印象だと思います。実際にはそれ以外での奇行が常だったので、そんな普通の印象ではないはずですが。

 この時期ずっと大黒様(ストレッサーである上司)の暴言がフラッシュバックしています。大黒様の暴言とは、何一つ認めず罵倒される、という内容です。それにより自己否定が繰り返され、自信がなくなっている状態です。

 この顔を隠すという行為は、そういった心理的な部分の現れかも知れない。そう思っています。

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