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落合博満「コーチング」読み やるべきことをやっているだけなのに、何故か「オレ流」と言われてしまう人(笑)

大阪の地に生まれ、多感な小学4年生の頃に、阪神タイガースの日本一と道頓堀に放り込まれるカーネル・サンダースを見た自分は、野球は嫌でも自分の人生に影響を与えてしまっているものだと思います。
父が近鉄バファローズ(→球団消滅後、楽天イーグルス)ファンのテレビ桟敷の影響で、野球の持つ投手と打者の「間」と言いましょうか、駆け引き、一球ごとに変わる状況変化といった、野球の楽しみは、否が応でも身にしみてしまっています。
趣味が少ない父と、私の共通言語という意味もあったりもします。
まぁ、付き合いでゴルフや麻雀を覚えてしまった、みたいなもんですよ。

野球の書籍は、今はなき野村克也氏と、落合博満さんの書籍が好きで、つい読んでしまいます。野村さんの場合はちょっとした京都人的な癖があるのに比べると、落合さんのそれは、東北の方出身の朴訥さのように思えることがあります。例によってよう知らんのですけど(関西人のお約束のセリフです)


落合監督のこの書籍は、タイトルは知っていたのですが、なかなか読む機会がなく、正月休みの間などに一気読みしました。
野村さんの場合も落合さんの場合もそうなのですが、どちらも難しいことは言っていないのに、実践するとなると難しい、という共通した点があります。いや、実践するのが難しい、というのは、単に自分がズボラなだけかもわかりませんが。。。

今、人にものを教える(現在は福祉施設でITやプログラミングを教える、という仕事をしています)という事をしていると、ここに出てくる言葉はためになることも多いですね。
「方法論は教えられるが、やり方は教えられない」
学習に来る人はそれぞれ事情が違うので「絶対これ」という教え方はないですね。

それとは別に、今回気になったのは
「監督は「勝つこと」を、選手は「自分がすべきこと」だけを考える」
という節についてです。

この部分を読んで思い出したのは、2007年の日本シリーズでの「完全試合」での継投策です。
ざっとかいつまんで説明すると、この年、落合監督率いる中日ドラゴンズは日本ハムを相手に3勝1敗と、53年ぶりの球団日本一に王手のかかった状態で、日本シリーズ第5戦を迎えます。試合は、1-0で中日リードのまま、8回を終了します。
中日先発の山井投手は、8回まで無失点・・どころか、ヒットはおろか、四死球も与えない、まさに「完全試合」を継続していたところでした。
日本シリーズで完全試合というのは前例もなかったため、9回の山井投手に登板・完全試合達成を期待しているかたも多かったと思います。(野球に興味が薄い方でも、2022年は佐々木朗希投手が完全試合を達成して話題になったりもしたので、偉業については少しはわかっていただけるかと思います)
ところが、9回になったところ、当時の絶対的な抑え投手の岩瀬投手にあっさり交代。その後岩瀬投手もランナーを出さずに9回を投げたため、2人の投手による「完全試合リレー」で日本一を果たすことになります。

この采配は、色々議論を呼び、おそらく落合監督の監督史・・にとどまらず、球史に残る采配として、語り継がれるものと思われます。
これについては、わざわざwikipediaで議論があるくらいの話なので、興味あります方はこちらへ

先程の「コーチング」の書籍に戻りますが、先の「監督は勝つことを考える」で言えば、この考えは妥当なところに落ちる気もするんですね。
完全試合であれどうあれ「8回終了時点で、投手戦の1点差」と考えると、勝つ確率で行けば、絶対的な守護神の投入は自然に思います。
(あと短期決戦の日本シリーズに有りがちなのが、こういう状況で逆転負けをすると、勝運が一気に逃げることがある)おそらくこれは、究極のマイナス思考・引き算から出た「岩瀬投入」という結論だと思うんですね。実際にあの頃の岩瀬投手は、それだけの投手だった、という点も落合監督にそういう決断をさせたことでしょう。
そういう点では、落合監督は「勝つべきことをやった」ということでしょうし、真に褒められるとしたら、監督の期待どおりに「やるべきことをやり」日本一をつかんだ岩瀬投手にあると私は考えます。

で、わざわざこの話を書いたのは、実のところ、この「コーチング」という書籍は、落合氏が2001年に上梓した書籍なんですね。例の采配の6年前のことです。
いうなれば、2007年の采配は、もうこの時点である意味予告されていた、ということも言えるのかなと思うわけで。そういう点では、実にシンプルな考えをシンプルに実行しただけ、という解釈もできる。

ただ、それが、大人になり社会に出ると、なんと難しいことになるのか。色々考えさせられる書籍であり、また、人に教える機会が自分にある以上は、度々読み返す羽目になるだろうな、と思わされる書籍でした。

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