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『虎に翼』――「日本国憲法」がまるで美しい詩のように、祈りのように聞こえる

NHK朝ドラ『虎に翼』、戦争で最愛の夫、兄を失い、その後父も亡くした主人公・寅子は現在、残った家族を支えるべく、そして大学に通う弟の学費を捻出するべく、一度は離れた法曹界に再び身を投じました。そして新たな憲法公布のための作業に日々勤しんでいます。

その過程で、いまだ残る古い家族観(女性は男性の庇護のもとにあるべき、など)を持つ人々とぶつかるたびに、寅子は繰り返し、「日本国憲法第十四条」をつぶやきます。

すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

日本国憲法 第14条

使われている言葉も言い回しも硬くて、いかにも法律の文章という感じです。武力行使を放棄する憲法9条や、侵すことのできない永久の権利として基本的人権を定めた憲法11条と並んで、この14条も私にとっては、中学高校の「社会科資料集」の中のものでしかありませんでした。

でも、今週の『虎に翼』で、いろいろな人の口からこの一節を聞いているうち、この第14条が法律ではなく詩の言葉のように聞こえてきました。

つらいときに自分のよりどころとなってくれる詩の一節、昔自分を勇気づけてくれた誰かの言葉、元気を出したいときに思い出す歌の歌詞や、祈るような気持ちのときに思わずつぶやくお守りの言葉みたいに。

寅子の親友のよねさんは、第14条の文言を書いた大きな紙を仕事場であるカフェの壁に貼っていました。つらいときも泣きたいときも、彼女はきっとこの言葉に支えられているのだと思います。

あの時代、日本の至るところで、いろんな立場の人たちがいろんな思いで日本国憲法第14条を読み、それに救われ、支えられてきたのだと、今回初めて知りました。
私は本や読むことが大好きで、いつでも「言葉」の力に助けられてきたけれど、「憲法」の言葉がそんな役目を果たしていたなんて思ってもみなかった。
『虎に翼』は多くのことを気づかせてくれるドラマだけれど、「日本国憲法」がふつうの人々にどれほどの力や勇気を与えてきたか、実感を持って知ることができて感謝です。


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