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『虎に翼』――優未ちゃんと同い年の父が生きた人生

毎朝、登場人物と一緒に笑ったり泣いたり、はっとさせられたり、じんとさせられたりしてきた『虎に翼』、いよいよ終盤ですね。

先日、寅子の娘、優未ちゃんの成長を見ながら「優未ちゃんは写真でしかお父さんのことを知らないのだな」とぼんやり考えていて、そういえばうちの父も同じ境遇だったと思いました。

朝ドラでは優三さんと赤ちゃんの優未ちゃんの写真が何度も出てきますが、私の父も同じように生まれたばかりの頃に父親(私の祖父)が出征し、そのまま亡くなったため、「写真でしか父親の顔を知らない」とよく言っていました。

……とそんなことを思い出しながら、ドラマで語られる年代をもとに優未ちゃんの年齢を計算してみたら、父と同じ年だったのです!

その事実に、私はいくつかの意味で衝撃を受けました。
まずは血のつながった私の祖父と祖母も、優三さんと寅ちゃんが味わったような巨大な苦しみと悲しみを、戦争によって味わっていたということです。
『虎に翼』が始まってから戦争のむごさ、平和の大切さを改めて考え直していましたが、涙を流さずには見られなかった優三さんと寅ちゃんのあの苦しみを、自分の祖父母が経験していた――そのことに胸が苦しくなりました。

そしてもう一つ衝撃だったのは、優未ちゃんと私の父の境遇の、あまりの差です。もともと裕福だった寅ちゃんの家庭と、地方の貧しい家の生活が違うことは当然なのですが、それでも……
私の父は四人兄弟で、祖母はそれこそ寅ちゃんたちと同じように親戚や一族の力を借りながら子供たちを育てました。四人のうち一人はとても勉強ができたそうで高校へ進学しましたが、他の3人は中学を出てすぐ就職です。しかもうちの父は〝金の卵〟として15歳で集団就職で東京に来ています。

ドラマの中で優未ちゃんが高校に進学した際、「うわあ、うちの父はまさに同じときに夜行列車で集団就職に来たわけか……」と愕然としました。
「父親がいなくて、何しろ貧しかった」とは聞いていましたが、同じ日本で同じ時期に生まれても、本当に人生はいろいろです。

でもまあ、どちらが恵まれていたか、幸せかはまた別の話ですよね。私の父は幸運なことに最初に住み込んだ工場から好きな仕事につく道が開かれたし、その後も結構楽しい人生を送ったのではないかと思います。

どんな時代にも、どんな状況にも、さまざまな暮らしや人生があり、それぞれの人がその人なりに生きている。『虎に翼』は今まで自分が気づいていなかった人たちの存在、ものの見方、考え方をいくつも教えてくれたけれど、今回の気づきも私にとってとても有意義なものでした。





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