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『大怪獣のあとしまつ』ー「最初からそうしろよ!」とのツッコミの是非

※2024/4/23 「空想法律読本2」からの引用を追記

 「禍威獣ガボラの死体を倒したその場で持ち去ったシン・ウルトラマンこそ“シン・大怪獣のあとしまつ”だ(笑)」的揶揄を目にするたびに、「うるせぇ〜、初代ウルトラマン自身はそれこそ一体の死体も片付けてないやろが」と憤っていたが、よくよく考えると自分でも論点がズレてることにあらためて思い至る。

 それこそ端から「最初からそうしろよ!」とツッコませるためのオチなので、実際観客のその殆どから「最初からそうしろよ!」との感想を引き出しているわけで、その狙いについてはほぼ成功していて、構成的に間違ってはいない。ただ、面白いと思った人よりふざけるな!💢と思った人のほうが圧倒的に多かった模様。

 それが面白いか滑り倒しているか等の各々の観客がどう咀嚼したかはまた論点が別の話で、肯定的であれ否定的であれ少なくともオチのこの構造は理解したうえで感想を述べてる人は読解力があるのだろうし、オチが間違ってると本気で「最初からそうしろよ!💢」と糾弾してたり「シン・ウルトラマンのほうがキッチリ後始末している」と捉えているのは、この作品の話の構造の理解には及んでいないんでないだろかとは思われる。


※2024/4/23 追記

 Xに投稿されてた方の配信を拝聴して、2003年7月刊の「空想法律読本2」(著:盛田栄一)にて怪獣の死体の後始末テーマが取り上げられていたことを知った。

「第6章 ウルトラマン怪獣死体遺棄事件」にて法律の観点からその是非を問うている。大怪獣のあとしまつはまさにこれが実際に元ネタなのではとも思われるが、この第6章で問うている主旨は怪獣の死体を放置して立ち去ったウルトラマンの行為の正当性についての検証であり、大怪獣のあとしまつが描かんとしているのはオチこそあれだが、誰が後始末するのかな?との押し付け合いやグダグダな怪獣の死体の後始末を巡るドタバタ劇である点で、退治された怪獣の死体という同じ題材への異なるアプローチの作品だと捉える。

 ちなみに当著書ではこのような見解も示している。



「最初からそうしろよ!💢」が作外ではなく、もし作中のアラタに対して向けられるのであるなら、法律面だけに限らずやはりその批難は違うんじゃないかなとは思っている。



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