記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

「またヴィンセントは襲われる」感想(ネタばれあり)

監督 ステファン・カスタン フランス 109分


簡単なあらすじ

ヴィンセントはある日職場のインターン生から突如暴行を受ける。
後日別の同僚にも襲われるが加害者たちはその記憶を覚えていなかった。
ついには見ず知らずの人物まで襲い掛かってくるように。

ヴィンセントは自分に襲い掛かってくる者たちが「自分と目が合った」という共通点に気づき生き残るために行動していくことに。

感想(ネタバレなし)

目があった人物が襲い掛かってくるという不条理系スリラー
最初は主人公にもちょっとアレなところがあるのかな?と思わせてくるが進むにつれてそんなことも無く本当に「目があっただけ」で襲い掛かってくるのでストーリー自体は非常にわかりやすい。
進み方もラストも凄い衝撃を感じるというのは正直無いがそれでもこのアイデア一本勝負でやりきった感があって個人的には好きな作品でした。
若干の哭悲ぽさはあるがグロさも暴動度もさすがに抑えめ。
だが序盤と後半に殺意高めの攻撃が繰り出されてくるので若干の痛々しさは勿論ある。

あと犬が可愛い。


感想や考察(ネタバレあり)


ここから先はネタバレあり







現象の謎について


現象が最後まで「目があったら襲われるかもしれない」ということしか分からない。
途中主人公と同じように「襲われる側」の人物と出会い、「襲われる側」の人物同士は目を合わせても大丈夫そうにふるまったり、コミュニティサイトの存在を教えてくれたり犬を飼えなどのアドバイスをしてくれる。
その後マルゴー(ヒロイン)が登場し襲い掛かってくるも一晩明けたら目が合っても豹変しなかったので同じ人物が再度攻撃的にはならないのでは?というようなやりとりがある。

だがこれらもどこまで信用しきっていいのかが分からない。
「襲われる側」同士なら攻撃されないというのがたまたま上手くいっただけでもしかしたら攻撃されるかもしれないという不安が拭えない。誰も正体も何もわからないので確証がもてない。
マルゴーに関しても視聴者が「確かに二度目は無いんじゃないか」と思ってたタイミングでもう一度攻撃的になってヴィンセントに襲い掛かってくる。

現象の正体もウイルスの突然変異とかなのか?と主人公が調べたりするシーンがあったりするのだが結局ラストまで何故この現象が起きたのか誰がなってしまうのか、いつなってしまうのかも全く理由が分からないままで終わってしまう。

人によってはちゃんと答えを示して欲しいと思うかもしれないが最後まで何もわからないままというのが人間にはどうしようもすることのできない絶対的な不条理を感じたままラストシーンに浸れる。

後予告や本編見て多分ほとんどの人が「目線が合うと襲われるならサングラスかければ?」と思うだろうし自分も正直そう思っていたのだが終盤ヘルメットをかぶっている警察?特殊部隊?に銃撃されるシーンがあるので恐らくサングラスも意味がないように考えられるし実は発生条件も「目と目が合う」ではなく、「自分を見ていると自身の目で認知する」ことがトリガーなのかもと想像をめぐらすこともできる。

ラストについて

現象の被害が主人公にも広く発現してしまい世界はパニック状態に。
移動を続けるうちにヴィンセントが「襲われる側」では無くなったが今度はマルゴーが「襲われる側」になってしまいヴィンセントが襲い掛かる。
間一髪のところでヴィンセントの目を塞ぐことで助かりヴィンセントに目隠しをしてマルゴーの有する船でどこへともなく旅立つというエンド。
世界は普通に最悪な状態なのだがラストのヴィンセントとマルゴーの穏やかな雰囲気は悲壮感を感じさせない。
むしろヴィンセントのように時間経過で現象が収まる可能性だってある。(数か月経ってようやく収まるようだったり、収まっても再発する可能性もなくはないが)
そんなところもあり状況に反してどことなく希望を感じられる良いエンドだったと思います。

正直気になってしまった点

・主人公の迂闊さ
割と早い段階から目が合うと襲われること自体には気づくのでそこはいいのですが結構な頻度で目元を隠したりせず目を合わせて普通に会話しようとしたりします。
全員が襲ってくるわけではないので油断があったかもしれないと言われればそれまでですが相手は結構本気で殺しにかかってくるのでもうちょっと警戒した方が良いのではと思ってしまいます。

・犬
中盤でヴィンセントは「犬は襲ってくる人物を感知できるから犬を飼え」とアドバイス通りに犬を飼うことになります。(序盤でカウンセリングのような人物と犬の攻撃性云々の話もある)
問題は犬の精度がやたら高いわりにヴィンセントに対する敵意以外には全く反応しないのが凄い気になってしまう。
近くにいる相手に唸るならわかるのだが何故か車内に犬、スーパーマーケット内にヴィンセントという状況でもしっかり感知して唸ってくれる。
またヴィンセント以外に向けられる敵意には周囲がそれこそ阿鼻叫喚な状況であっても何故かまるっきり反応しない。
敵意が感知できるのはわからなくはないがここまで感知の精度が優れていると「流石に凄すぎではw」という気持ちが勝ってしまう。
そもそもヴィンセントが飼いだしてからそんな月日が経っていなさそうなのにここまで正確かつ親身に教えてくれるのも気になる。ハイスぺ忠犬といわれればそれまでだがなんとも言えない気持ちになってしまう。

・目隠し
マルゴーが「襲われる側」になった際何故か現象が収まったヴィンセントの方が目隠しをするようになる。

「襲われる側」が目隠しした方が良くない?と思ってしまう(実際その後マルゴーが銃撃されてるし)

・エンディング
映画の雰囲気とかけ離れてしまって笑ってしまった。
割と真面目しっとり系の映画だったのでもうちょっとしっとりしてもよかったのでは。





総評 3.5/5 点

個人的には結構楽しめた作品
ちょいちょい突っ込みたくなるとこもあるが全体的な雰囲気は良くスーパーマーケットや道路の渋滞場面でのシーンなどの見せ場もある。
意味も分からず攻撃され徐々に事態が悪化していき最終的には全世界的にとんでもないことになっていく様に、最終的にどう着地していくのかヴィンセントやマルゴーはどうなるのかなど楽しみながら見れる。
タイトルのようなはっちゃけ感はなく正直地味な感じはあるもののシンプルなアイデアながらほどよく考察のしがいもある良作だと思いました。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?