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理想の夢と現実⑥

夏休みに入る少し前、変な噂話が学校で流れ出した。ネットで『夢の民の望』と検索すると一個だけ検索ヒットするらしく、見たい夢を何でも見る事ができるらしい。何でも、そのネットに登録すれば、なりたい自分になれるし、未成年でも登録可能という所謂夢サイトだそうだ。無料で登録でき、来る者拒まず去るもの追わずなシステムらしく、既にクラスの半分以上が会員登録しているらしい。
陰湿な嫌がらせにあっていた彼女が夏休みに入る前から持病が悪化したとかで入院していた為、暇を持て余した生徒達にとっては絶好の遊び場になったらしい。

家に帰って山程ある宿題の山を机の上に置き、引き出しに閉まっていたスマホの電源を入れる。夏休みは明日からなので、もうスマホをいじっても勉強さえしていれば何も言われはしないだろう。そのサイトは学校では評判はいいので、取り敢えず会員登録してみようと検索フォームを開け、ワードを打ち込む。すると、本当に一個だけ検索がヒットした。注意書きを読む。

※会員登録の際、本名は防ぐこと
※夢を見たい時に当サイトにアクセスすること
※寝る際にどんな夢を見たいか頭に思い浮かべること

やはりクラスメイトが言っていた通り、この3点だけだった。僕は最近変にイライラが収まらなかったため、取り敢えず三分で会員登録を終わらせた。

(夢を見たまま戻ってこないとか無いよな…?)

と思ったが、そんな考えは一瞬にして通り過ぎた。今日、今夜見よう。そう思い、フォームに

“今夜夢を見たいです”

と書き込んだ。スマホを置いて暫くすると通知が届いた。

“かしこまりました。お待ちしております”

と書かれていた。今のところ半信半疑だが、この世界から一時でも離れられるなら良いかと考え、ネットを閉じた。

夜、何故かドキドキしてなかなか眠れなかった。
遠足前の幼稚園児か!と自分で突っ込んだ。耳を澄ますと、キッチンからクラシック音楽が流れているのが聞こえる。母の好きなクラシックだ。名前はなんだったっけ?
等と考えながら暫く聴いていると、いつの間にか深い眠りについていた。

⑦へ続く…

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