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母の刺繍作品の「醍醐味」を知る~!

「パッ!と観ただけでは分からないところ」に刺繍作品の「醍醐味」って、あるように思う。作品に近づいて、どんなふうに刺されているのかをじっくり見て、初めて「わ~」と思う作品がある。

母の刺繍作品の中にも、改めてよく見てみると、ものすごく手が込んでいると感じるものがある。最近、そう感じたのが、緑の布地に、黄色い花が描かれているこの作品だ。(額縁サイズ:45㎝×57㎝)

黄色いユリ2

この作品が、実家で飾られていた時期があったのを覚えている。

当時、私は、細かいところまでちゃんと見ていなかったので、シンプルな「ただの黄色いお花」にしか見えていなかった。

先日「これは、いつ頃刺したの?どこで展示したの?」と尋ねたら、地域の文化祭で展示するために、「図案」「色」、さらに「どんなステッチを使用するか」全て自分で決めて作成したとのことだった。

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花びらのところに、数種類のステッチが施されている。

花の中心には、ミラーがはめられている。

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さらに、緑の布地の四隅に細かい模様が刺されている。写真だとわかりずらいけど、金色と緑の2色の糸で刺されている。余白を埋めてあるスッテチが、さりげないく、作品を引き立てている。

画像6※額縁は、神田小川町の草土舎

花びら部分について「なんていう刺し方なの?」と私が尋ねると、「もっと近くで、よく見ないと~」とか言って、サッとは言葉が出てこない。

「これ見たらわかるかしら~?」と言って私が、本棚にあった「雄鶏社」から出版された重たい「刺繍の教本」を引っ張り出し、母に渡した。

すると「これよ~」とかい言ってくるので、だんだん私は面倒臭くなり「後で見るから、付箋貼っといて~」と言うと、一日かけて、本の中から、この作品に使われている「ステッチが掲載されているページ」を探し出し、後で見たら、ちゃんと付箋が貼られていた。

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使用されているスッテッチは、こちら

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母が現役で「おんどり刺しゅう研究グループ」で活動してた当時、「雄鶏社」から出版された刺繍本に掲載されている「母が刺した作品」は、「テーマ」や「刺し方」などが、ある程度、指定されていて、指定通りに刺しているものが多い。必ずしも、作りたいものを自由に作っていたわけではない。

そんな中、この作品は、それらとは異なり、「母自身の感性」のままに作成されたものだ。

「この図案を、ただロングアンドショートで刺したら、つまらないでしょ。」と母が言った。

確かに、ただ刺繍糸で花びらを埋めただけだと、面白くないかも~

ピアノで例えたら、ハ長調の曲は、C(ド・ミ・ソ)とF(ド・ファ・ラ)とG(シ・レ・ソ)の和音で、だいたい伴奏ができるけれど、そこに属音(7コード)を入れたりして「複雑な和音をつけて演奏すると音楽性が上がる」みたいなこと~と私は思った。

母のように手芸的な表現方法を持っていない私は、この作品を眺めながら、何故このステッチでこの部分を刺したのか、あるいは、何故スッテッチの間に、金色の糸で縁取りを入れたのか等々、様々な疑問が湧く。

そもそも何故、このような作品をつくろうと思ったのか~、母に限らず、創作活動をする人に対して、「そうしなければならない理由」は無いのに、何故~と時々、私は不思議に思うことがある。

最近、母の作品整理をしながら、様々な作品と向き合い「まどろっこしい母の説明」を聞く中で「刺繍作品の醍醐味」とは、なんと奥深いのだろうかと日々、感じている。

それと同時に、母の「創作能力」と、92歳にして娘の私に対抗してくるかのような「しぶとさ」に、改めて感心している「毒娘の私」なのだ…








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