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迫りくる失業危機ーAIの未来

自動化のテクノロジー、そしてロボット工学とAIの進展は、20年以内に3分の1の仕事を奪い取ると予測されている(失われるとされる仕事のリストには、それぞれに確率が付与されている)。 多くの反復作業、および非熟練労働は、より効率的で費用効果の高いロボットに置き換えられ、その結果、先進国が陥るであろう失業危機はかなりのスピードで現実化しつつある。これは深刻な問題だ。すでにAmazonの巨大ウェアハウスを行き来するロボットたちは商店街のパパママ・ストアを閉鎖に追い込んでいる。

ロボットに追い出された人々は、我々人類の歴史上はじめて、搾取と収奪の対象ですらなくなってしまうのだ。「無価値層」として雇用の可能性ゼロとなった人間が労働層の1/3を占めたとき、我々にはいったいどのような解決策が残されているのだろうか。現在のパンデミックが作りつつある21世紀の大恐慌は、将来的なさらなる失業危機へのプロローグとして教訓の役割を果たしてくれそうだ。

主な解決策(そして多くの専門家の視点からは唯一の解決策)は、すべての成人市民に無条件の生活費を支払うベーシックインカム(以下UBI)を制度として導入することだ。 実際に今年の3月以降UBIを導引するかどうかが公開で討論されることも増えてきた。これは、19世紀半ばにはじめて提案されたアイディアだが、自動化のテクノロジーによってこのアイデアがついに経済的に実現できる可能性が出てきたようだ。

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UBIはこの地上から貧困を完全に根絶できる可能性を秘めているだけでなく、日々繰り返される決まり切った仕事と金銭的不安から解放され、本当にやりたいことを自由に選択できるようにする仕組みだ。 ベーシックインカムが家賃、請求書、食費、育児費、その他の費用をカバーしている場合、我々の優先順位は必然的に、劇的に変化するのではないだろうか。 新たに勉強を始めたり、芸術を専攻したり、ボランティア活動をしたり、リスク要因が高い起業プロジェクトに参画することも選択できる。 または、子どもを育てる安定した環境を作り、それを維持するために自由な時間を投資する人もいるだろうし、純粋にどれだけの充実感を得られるかという観点から職業を選ぶ人も増えるだろう。

「人々が怠惰になる」など、UBIへの反論は多い。 何もしないことを選ぶ人も出てくるだろうが、長期的に見るとその比率はおそらく現在とあまり変わらないのではないかと思う。 あらゆる職種の労働時間が短縮されるはずだが、人々が十分に休息し、仕事に情熱を持ち、健康的なワークライフバランスを保ち、ストレスやストレス関連の病気に陥らない場合、全体的な生産性は向上すると考えられている。 我々は非常に好奇心旺盛な種なので、退屈に突き動かされ、最終的にはほとんどの人が魅力的でやりがいのある活動を求めるのではないかと僕は期待している。

最大の課題は、どのようにUBIの資金を調達するかである。 現在の社会福祉制度に取って代わるため、部分的にはそれでカバーできるだろうが、全国規模の無条件の支払いになる場合、かなりの部分を別の形態の課税によって調達する必要がある。 では、誰に課税するのか。 税金が確実に支払われるようにするにはどうすればよいのか。

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ロボット税はかなり分かりやすいソリューションである。各ロボットが取って代わった(解任させた)人間の労働時間で測定し、それに応じて課税される。 ビル・ゲイツ、イーロン・マスク、スティーブン・ホーキングは、この税制の支持者だ。 データ税も興味深いオプションである。 データの価値がますます高まるにつれて、FacebookやGoogleなどデータの巨人が顧客データの使用と引き換えにUBIの一部に資金を提供する仕組みだ。

しかし、数多くの多国籍企業が今現在、莫大な資産をオフショア(海外)のタックス・ヘイブンに隠し、脱税していることを考えると、はるかに大きな税金をUBI実践国に支払うとは到底信じられない。 国境によって厳しく制限されている我々に、自由自在に世界を動き回ることができるグローバル企業に課税を強制する方法はあるのだろうか。 厳しい法律を施行しても、これらの企業は別の国に逃げるだけである。

しかし、もしかしたら、実に小さな可能性であるが、グローバル・ガバナンスという新しいモデルが誕生するかもしれない。 地球上のすべての人類を統治する単一のエンティティ。 気候変動の影響から水不足、貧困と土壌劣化、そして爆発的な難民の増加まで、長期的なビジョンを持ち、統一された存在として行動しなければ解決できない問題が過多ある。

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しかし、このアイディアは基本的な歴史観を持っている人なら誰でも当然のことながら恐れを感じるはずである。 国家という小さな規模でさえ、権力の乱用、収賄や腐敗があらゆるレベルまで浸透し、しばしば壊滅的な結果をもたらしてきた。 では、どのようにして汚職がなく、権威主義に陥ることのない、すべての生物の長期的な幸福を念頭に置いて行動する、公正で情け深い惑星レベルの統治システムを実現できるのだろうか。

人工知能は、このシステムを実現する上で重要な要素になるのではないかと思う。 グローバル統治システムは、人為的ミス、誤判断、悪の権化に対するセーフガードを備えている必要がある。 4,5年という短期間の民主的ガバナンスはそれを保障する方法であり、20世紀には比較的うまく機能した。 しかし、何百もの利己的(自己本位的)な国家が関与しながらも、長期的なビジョンに基づいて迅速な意思決定を必要とする世界ではあまりにも不十分である。

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AIガバナンスに人的エラーがないことが保証されている場合を想像してみよう。AIは、我ら血の通う単なる肉体が頻繁に陥り、しばしば判断を曇らせる欲求、ニーズ、感情の影響を受けない。もし、それが、考えられる膨大な数のシナリオを計算し、すべての生物の全体的な幸福を確保するための最も効率的な方法を導き出すことができたならどうだろう。 重要な決断を下し、数百年にわたる詳細な計画を作成し、次の1万年間の私たちの種の生存と幸福を目指してそれを実行に移すことができたらどうだろう。その計画は一体どんなディテールを含んでいるのだろう?僕が思うに、そのような仕組みがパーマカルチャーに似ている可能性は非常に高い。

この考え方に沿って現れる次の質問は、我々よりもはるかに優れた知能を持ち、凄まじいパワーを備えたAIが悪意を持たず、慈悲深く、ハッキングされないことを確証できるのか、である。 我らを簡単に凌駕することができる超知性を持つAIに、悪意を持ち破壊的行動へと動く可能性をゼロにする防御システムを埋め込むことができるのか。 AIが独自のアルゴリズムを操作、および変更したり、人間の利益を完全に無視した独自の一連の原則を使用して、制御はもちろんのこと、理解の範囲をはるかに超えた超インテリジェントAIを設計および構築することを妨ぐ方法はあるのだろうか?

これらはまだ非常に未知数の多い分野だが、分散された複数のAIによる民主的統治モデルならば、中間ステップとして可能性があると思う。それぞれの国家を代表するAIが、デジタル国連において光の速さで重要な決断に投票することができ、各議案につき全生物の長期的な存続という基準から必ず何かしらの合意を導き出し、1つの悪意を持つAIにコントロールされる可能性を排除することができる。 中央権力が存在せず、ハッキングされた単一AIが過半数を支配できないため、本質的にハッキングからも保護される。つまり、同時ハッキングを回避するためにはAIレベルにおいても多様性(ダイバーシティー)が求められてくるのではないだろうか。

確かなことは、我らが今、人類史上最も大きな変化の中を生きているということだ。 多くのボラティリティを秘め、想像を絶する可能性と危険に満ちた新しい時代の玄関口を今潜ろうとしている。 我ら人類が、多くの困難を乗り越え、いずれ全ての生物にとって幸せと繁栄をもたらす守護者へと変われることを心から願っている。

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