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みさやま紬ってどんな紬?山漆で染めちゃいます。

みさやま。感じで書けば三才山です。
長野県の松本市と上田市の境辺りの山です。

信州は 元々養蚕の盛んな土地ですから
長野県内でも 多くの紬の産地があります。

代表的なものに
伊那紬、上田紬がありますが
かつて 各々50軒以上あった織り元も
今では10軒ほどに減ってしまい後継者不足に悩んでいます。

みさやま紬を名乗るのは 横山さんの家一軒だけです。
以前は家族で染めて織って、とされていましたが
ご両親が相次いで亡くなられ
現在は 俊一さんご夫婦でされています。
 
お父様(横山英一氏)の代から
自宅の裏山で採れた植物を使い 
自宅の田んぼで採れた藁を焼いて灰をつくり精錬に使ってきました。
今もそのままの手仕事が続けられています。
自宅で採取した植物は新鮮で発色が良いのが自慢です。 
売っている材料では濁った発色になるとおっしゃいます。
「山に染色用の木を採りに行く前には 神様にお祈りして
  山のものを頂きます」と挨拶するそうです。

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また葉や花では堅牢度が低いを感じるそうで
木本体の皮や枝、実を使用して染めています。
山漆で染めるのはとても珍しく
美しい灰白色から深い墨黒まで発色します。
機場には6台の機がありました。
かつては 家族一人に一台使っていたそうですが
今は ご主人と奥様で一度に2,3台を使い
同時に織進めているそうです。

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ここでも問題は後継者でした。
今までも、幾人もの若い人がお弟子さんとして来ては
数年で辞めていったそうです。
横山さんの工房では、単に機を織る、ということだけでなく、
機場の掃除から様々な雑用もこなして糸の扱い、
染めの技法、織の組織などを覚えなくてはなりません。
大きな工房のような分業ではないのです。
修行に近い形ですから一層難しいでしょう。

自分の信じる「良いもの」を作るために研究を重ね、
独自で作り上げた技術を伝えるには、
10年は共に苦労しないと本当のコアな部分は伝えられないのに、
そこまで育った人はいないのだそうです。
ご両親もご健在の時は、ただ作ることだけに専念していたけど、
今になって後継者をきちんと育てていなかったことを
とても後悔しておられるそうです。

民藝運動の柳さんを通じて知り合った郡上紬の宗廣陽介さんともお友達で、時折会えばお互い息子さんが居ず後継者を育てなかったけれど
今からそれをする時間も気力もない、と
自分たちの代で工房を閉めざるを得ない悲しみと、
今のきもの業界では娘に継がせても苦労させるだけだから、
と話されるそうです。

染め場を拝見すると磨き上げられていて土足厳禁でした。
専用のサンダルか長靴に履き替えて入ります。
それは靴の裏の土や不純物が染めの化学変化に影響を与えることと、
糸を落としたりして汚すのを避けるためだそうです。
真剣勝負の染めです。
柔らかで透明感のある美しい糸が染まります。

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デザインも横山さんがなされます。
縞、格子がほとんどですが
技巧に走らない分、
色の美しさと風合いの良さを身上としている着るための紬です。

豪華さはありませんが日々着ていて飽きることがなく、
糸質が良いので、シワになり難くとても軽いのが特徴です。
単衣でもお勧めです。

「30年以上やってきて 人間以外のなにかに生かされていて
  その中で 出来る限りのことを命をかけてするしかない」

熱い心と ロマンチストな想いを抱えた横山さんのみさやま紬。

10/14(水)にじざいやで みさやま紬セミナーを開催します。
講師は 着物文化検定の講師もされている京都の紬問屋の若旦那。
13時~ と 17時~ 同じ内容で2回講義します。
コロナ対策のため 1回5名様まで。
参加費無料です。
興味のある方は お問合せください。

じざいや  
横浜元町です。JR石川町・みなとみらい線元町中華街駅から徒歩7分。
045-662-8005

https://jizaiya.yokohama/
 


 

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