紅型の歴史と染めの工程
紅型の起源にはさまざまな説がありますが、
中国の影響を受けた型染めが、既に15世紀の沖縄には存在していました。
インドやジャワの更紗の技法、さらに16~17世紀にかけては
京友禅の技法も伝わり、色彩豊かな琉球の衣が確立していきました。
紅型の最も大きな特徴は その色彩にあります。
沖縄の強烈な太陽があって初めて、生まれた色です。
しかし、琉球王国時代、紅型は庶民には無縁の存在でした。
着用を許されたのは王族や士族。
中でも黄色は王族だけの特権でした。
染める布地は贅沢品であった絹のほかに
木綿なども使われ、王府が直接製作に関わっていました。
製作を受け持ったのは貝摺(かいずり)奉行所。
貝摺師と呼ばれる絵師を指揮し、
直接管理のもとで漆器の生産を行なっていましたが
その所属絵師が紅型の図案も描いたのです。
絵師は中国南画を学んでいましたが
紅型の文様には 龍や鳳凰といった中国好みの文様以外に
菖蒲や牡丹、松竹梅、菊などの植物、鶴や雁などの動物、
さらには瑞雲や霞などの日本風な風物が豊富に描かれています。
インドネシアのバティックを参考に、
日本、中国、東南アジアの様々な文化が混じり合って
生まれたとされる紅型は
沖縄ならではのチャンプルー(混ぜ合せ)精神の賜物なのです。
染めの工程について 画像を追って説明いたしましょう。
1.図案に従って版を作ります。
(版には補強のため紗が貼ってあります)
2.生地に版を置いてヌカと餅粉で作った糊で
柄以外を糊伏せします。
3.薄い色から下塗りします。
4.順次濃い色へ
5.紅型の特徴でもある隈取ぼかしを入れて
立体感や奥行きを表します。
6.蒸篭(セイロ)で蒸し水洗いして糊を落とします。
7.地色がある場合には柄部分を糊伏せして
地色を塗ります。
言うのは簡単ですが根気のいる細かい作業です。
紅型を染める顔料は染料よりも色の粒子が粗いのが特徴です。
布に染み込み難い分、明るく力強い発色になります。
かつては色落ちしやすい、という欠点がありましたが
現在では定着剤の向上や
擦り込みの技法の向上等により克服しています。
紅型の中でも藍だけで染めたものを
特に藍型(えーがた)と呼びますが
空気媒染の藍をどうやって擦り込むのか不思議に思っていたのですが
藍甕の上に浮かぶアクのような泡だけをすくい
乾燥させて乳鉢で擂った粉末を使うのだそうです。
美しい紫などはコチニールに藍や墨を混ぜて作っています。
手作りの道具は 使う人が使いやすい形に。
右の四角いのは島豆腐を乾燥させたものでクルジュ―と呼び、
型を彫る時の台にします。