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草木染~植物の力。

京都で平安時代の色を復元しようとしている藤原益男さん。
久し振りにお電話したらお留守のようでした。
もう、10年位お会いしていないかも・・・
平安王朝の色を再現するべく 染料も出来る限り当時の産地から採取し
媒染剤も 鉄漿はお歯黒を自作されるなど
染色家、というより研究者のような方でした。
藤原さんとお話した時の覚書が出てきましたので
残しておく意味も兼ねて ここに記しておきます。


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日本産の紫根だけで糸を染めた反物がありました。
しっとりと深い紫の無地です。
これを蛍光灯の下で見ると青みの強い紫で
白熱灯に当てると赤みが増して見えます。
蛍光灯は月明かりの元で 白熱灯は夜の篝火の光の元で
見た色色に見えるのだそうです。
これが化学染料では 色の違いが出ません。
暗いか明るいか、だけの違いです。
どうしてそうなるのか?
植物できちんと染めると
その植物本来が持っている沢山の色素を染めることが出来、
例えば紫はその紫色の中に
黄色から紫までのいろいろな段階の色素を含んでいるので
光の波長によって 見える色素に変化があるからだそうです。
紫の場合はいろいろな色素を持っているので
変化の幅が広いのですが

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↑  橡(つるばみ)で染めた場合は 色素の幅が狭いので
ほとんど色の変化が見られません

糸を染める前には 藁を燃やして出来た灰を水に漬け、
上水の灰汁で糸を煮て 染める準備をします。
この段階がきちんとされていないと
染料が上手く糸に浸透しないため きれいに染まりません。
色無地の反物は まるで後染めのようにムラがなく
全体で光沢を放っていました。
うちでも 自分で草木染をして自分で織ってられる染織家の方の作品を
いくつも扱っていますが
今までで見た、一番ムラがない色無地紬でした。
染にムラがないので どうしてるのかと伺ったところ
着物1反織るのに、9枷の糸が必要で一緒に染めるのだけど
同時に染めて同じ色に上がっても
1枷の糸は 長さは一定だけど重さが微妙に違う。
重さが違うということは糸の細さが違うということなので
9枷の糸を重さ別に3つのグループに分け、
それぞれを別の杼(緯糸を巻いておく道具)に巻き
織るときは 3つの杼を交互に通していく、と言うのです。
色無地なのに杼が3つ!
それだけの心遣いをしてこそ、ムラのない無地が織りあがるのです。

また 王朝の配色には 十二単のような、
襲色(かさねいろ)が有名ですが
他にもあ 合色(あわせいろ) 織色(おりいろ) があります。

合色は衣裳の表地の色目と、裏地の色目とのこと。
織色とは、経糸と緯糸を別々の色に染めて、
織り上げた後に生じる色目をいいます。
経糸の色と、緯糸の色の組み合わせでつくられる簡単な織物ですが
色の組み合わせで玉虫色に輝き、見る角度によって
色が変化する不思議な存在感を持っています。             

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