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49.ねぇ聞いて!褥瘡って厄介なの

車椅子ユーザーの心配事に「褥瘡じょくそう」がある。介護の経験がない方には聞きなれない言葉だと思う。私も下肢麻痺になるまで聞いたこともなかった。簡単な言葉で言えばいわゆる「床ずれ」。

「床ずれ」って寝たきりの人がなるんじゃなかったかな…?くらいの認識だし、実際どうなるのかも知らなかった。私が子供の頃祖父が寝たきりになり、自宅で母が介護をして看取った。その時に祖父が身体が痛いと言っていたのを覚えている。今思えばあれが「褥瘡」だった。

現在だったら介護用のベッドにエアマットなど良いものがあるが、当時は畳に布団を敷いて寝ていた。寝たきりでお尻の仙骨辺りや踵など圧迫された所の血流が悪くなり、組織が壊死してしまい、酷くなると骨まで穴が空いてしまう。稀だが最悪感染症を起こし死に至る場合もある。それもたった一晩で褥瘡になる時もあるのだから怖い。

私もリハビリ病院でこのことは強く教えられた。下肢の感覚がない私にとって、お尻の褥瘡が一番怖い。痛みで気づくということがないからだ。起きている時も寝ている時もほぼお尻はつきっぱなし。立つことができないのでお尻の筋肉や脂肪も減り、ずっと圧が掛かっている。健常者だったら座りっぱなしということもないし、気にかけることもなく自然に身体をずらしたりしている。

一応車椅子のクッションはエアクッションになっていて、普通の椅子よりは圧が掛かりにくい。それでも15分に一回くらいプッシュアップ(お尻を浮かせる)して圧を抜く。また、就寝時はエアマットレスを使用している。自動でマットレスが傾き強制的に寝返りをしている状態を作ってくれる。この機能が無ければ仰向けのまま寝返りを打つこともできない。

痛みを感じないというのは怖いもので、意識的にこういったことをしないといけないのだ。手術前にはこんなことまで起こるとは考えてもいなかった。なので簡単に外泊や遠出ができない。正確に言えばできない訳ではない。旅先では自動のベッドはないので、自分でクッションを背中とベッドの間に挟み身体を傾け、3,4時間に一回強制的に体位を変え寝返りをうつしかない。

こんなことを考えるとちょっと旅行へなんて気にはならないのだ。それでも私とほぼ同じ状態でも国内外を問わず旅を楽しんでいる方がいる。それはごく稀でそういった方は結構な割合で褥瘡になったりしている。

それでも若いうちは治りも早いが、私の歳になると一度なると深刻な場合も多い。何度も繰り返したり入院になってしまう。入院になるとひたすらお尻をつかないようにしてベッドに寝たきりだ。それも完治に数ヶ月も珍しくない。

今のところお尻は無事だ。お尻にもう一つ穴が増えたら大問題だ!こんなにお尻を大事に生活しなけらばならなくなるなんて想像もしなかった。「お尻が大きくて…」なんて言っている人がいるが、「お尻のお肉は大事だよ」と伝えたい。そのお肉がお尻を守ってくれているのですから。

50話目へ続く…





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