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14.超ー!ベリーショート!

化学療法を止めると体調は回復してきた。食欲も出てきて体重も今まで通りに戻っていった。しかし、足の痺れや感覚の鈍さは悪くなる一方。化学療法の効果は無く、腫瘍の増殖を止めることはできなかった。

そして、体力も回復してきて、そろそろ次の治療を考えなければならない頃、運転免許の更新時期がやってきた。

田舎の交通手段と言えば車。車に乗らなければ自由に出掛けることもできない。杖を使って歩いてはいたが、更新は可能な状態だったので手続きをすることにした。

しかしここで、大きな問題が発覚した。
免許証と言えば顔写真が必要ですよね。

そうです〝頭〟です。〝頭〟‼︎

化学療法の副作用で髪が抜けた頭は、ツルツルでないとはいえ、がつくほどのベリーショート‼︎

ベリーショートとは言っても、まるで枯れかけのマリモのような、ホヤホヤの髪ではないか。洒落た状態どころか、まだまだ髪はバラバラで冒険中だ。

免許証には、この頭を顔写真として残さなければならない。それもよりによって免許証はゴールド免許証‼︎ 問題がなければ5年間使うことになる。

もちろん髪が抜け始めた頃、外に出掛けることも考えて、ウィッグも作ってもらっていた。

少しでも自然に見える物と思い、人毛を使った上位クラスのウィッグを選んだ。しかし、お値段なんと10万越え‼︎

 「高っ!

と言う声が聞こえてきそうだが、私もこの価格には驚いた。

ウィッグは好きな髪型にカットしてもらえたので、ボブヘアにカットしてもらった。しかしそのボブヘアは昭和感が凄かった。

中森明菜のDESIREと言えば分かる人は分かると思うが、正にあの感じ。あのボブヘアでは昭和生まれの私でも引く。令和のご時世には馴染めない。今更、中森明菜になっても時代は令和なので、ウィッグは潔く諦め、ベリーショートで撮影をした。

その後5年間、マリモ頭の免許証にお世話になることになったが、今でも記念にこの免許証はしっかり隠し持っている。

結局10万かけて作ったウィッグは、一度も陽の目を見ることもなく、ウォークインクローゼットの奥深くに眠ることになった。

15話目へ続く…


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