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きみの時間、わたしの時間

「タイレ〜オ!(ほんと最悪!)」

半日(!)遅れて、ピべーが研究室に入ってきました(ちなみにタイでは年上を呼ぶときに名前の前に「ピ (ー)」をつけます。だから彼のニックネームはべー)。

いつも優しい、私たちの指導教官スパン先生が、その日もにっこり微笑みながら、
「ペンアライナ、べー?(まあまあ どうしたの、べー?)永遠にやってこないのかと思ったわ!笑」
と、声をかけます。

「先生、コゥ(わたしのタイでのニックネーム)、 遅れてごめんなさい! でも聞いて! もう今日は泣きそうになったよ。道がものすごい渋滞して、バスがその場から3時間も動かなかったんだ! 3時間だよ、3時間! もうほんとに、タイレ〜オ(最悪)!」

そう、ここはバンコク。渋滞は当たり前なのですが、さすがに3時間もバスに乗ったまま動かないのは かなりめずらしい。日本なら、仕事や授業に遅れるだなんてあるまじき行為とみなされますが、この日もスパン先生は、
「マイペンライな(まあまあ、気にしないの)! じゃあ、遅くなったけど、ミーティング始めましょうか」

なかなかA(「優」)を出してくれない、学業に厳しいスパン先生も、遅刻にはものすごく寛容。笑 

そしてもちろん、ピベーも渋滞で遅れる旨、バスから連絡をくれていました。

留学当初は、
「絶対渋滞するんだから、なんでもっと早く家を出ないの??」
と思っていましたが、そのころはわたしも もう在タイ3年目。遅刻には慣れっこに。友人たちは相変わらず、にこやかに遅れてきます。

遅れる理由は、
「ごめんごめん、コゥ! 雨が降ってきたから!」
「ロッティマーク!(渋滞だったの)」
「寝てた」(← 笑顔で言うな!笑)
「ごめん、やっぱり今日はもう行かない」(←え?ドタキャン!?もっと早く言って…!!)

挙げ句の果てには2時間くらい待たせてから登場し、開口一番、
「コゥ! マイペンライな!(コゥ、大丈夫だよ、気にしないで!)」
って。ちょっとちょっと、そっちが「マイペンライ(気にしないでね)」って言う立場なの!? それ、あたしのセリフじゃないの?!笑

そのうち、あれ? 時間を守ってるわたしの方がおかしいのかな? 時間に縛られているのはわたし?? まるでミヒャエル・エンデの『モモ』(時間泥棒のお話)の世界のように、、、。

これは長年タイに住んでいる外国人なら、一度は味わったことがあるのではないでしょうか。わたしの友人たちも皆同じような経験があり、いつもこの話題になるとき、「そうそう! 遅れてきた相手がマイペンライ(気にするな)と言って、こっちが変な気持ちになるんだ」と笑い合いつつ、その後、ふたりして黙りこくり......しばし、それぞれの黙想にふけるのです。あれ? おかしいのは自分たちの方なのかしら?と。笑

そんななか、留学生向けのフィールドワークで、近隣の遺跡を巡るバスでの日帰り授業がありました。事前に配られたスケジュール表には予定がびっしり。朝6時の大学出発から始まり、何箇所かの遺跡を訪れ、「夕方5時」には大学へ戻ってくる、という内容でした。

お天気にも恵まれ、意気揚々とみんなで出発。
そして…
やっぱり??
どんどんスケジュールから遅れていきます。

あれ? もう夕方5時だよ…。予定ではもう大学に戻ってきているはずだけれど…まだ遺跡にいる。

バスに乗っている他の留学生たちも、みんなもう慣れっこ。
「やっぱりね」
と顔を見合わせ、暗黙のうちに うなずきあう。

「まぁ、なるようにしかならないだろう」

そして、ようやく大学のキャンパスに戻ってきたのが、
翌朝の2時!

え? 真っ暗なんですけど…、ここで解散?!
まだ真っ暗なバンコクに、私たちはバスから放り出され、なんとかタクシーをつかまえて帰宅。笑

大学でさえ、こんな感じなのです。
スケジュール表は、あくまでこんなふうに進めばいいなという「希望」。笑
タクシーの窓から、まだ真っ暗なバンコクの街の様子をぼんやり眺めながら、
「ま、とりあえず帰って寝よう」

時々、タイで散々待たされた出来事をなつかしく思い出します。

あれから日本に戻り、「時間にきっちり!」社会にまたとっぷり浸かりましたが、今は自分のペースで動けるようになり、それがやっぱり心地いいなと感じています。

お天気が色々なように、その日の気分はその日にしか分からないし、その日の体調で動ける量もやっぱり違うと感じています。それは植物を見ていてもおんなじ。

植物だって、毎日きっちり同じだけ成長するわけじゃないし、むしろ、ある日一気に伸びたり、お天気によってすごく低迷したり。年(天候)によってもその様子は全然違います。

ちいさな畑ガーデンをつくるようになり、わたしはますます待たされるようになりました。

種まきをしても、たった2日で芽吹く子もいれば、何週間もかかったり、1年以上かかる場合もあります。あれ?これは2年前に種をまいた子では?!と思う子が、今年芽を出したり。そこはもう、待つのが当たり前の世界。

みんなそれぞれのペースで、土壌も自分も整ったときに出てきます。

冬至カボチャ

最近出てきた、秋まきの冬至かぼちゃくん♡ 周りをめぐる太い茎は、かぼすけ🎃。かぼすけとも根っこでおしゃべりしているかな、、、☺️


今年、わたしのちいさな畑にいるレモングラスは、春に全く目覚めませんでした。

今年はもはや出てこないのか? 残念すぎるなぁ、、、と思っていた夏。ようやくちいさな葉っぱが出始めて、ゆっくり大きくなり、、、

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つい最近さらにぐん!とのびて、わたしの背丈を飛び越えました。

れもんぐらす2

(じゆうな木)「今年は、おそかったね。もう あえないかとおもった🥺」
(レモングラス)「うん、ねてた♡」


朝顔もまた、例年は発芽率はとてもいいのに、今年はほとんど発芽せず、非常に低迷しながら夏を越え、今になってようやく!気持ちよさそうにお花を咲かせています。

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今は かぼちゃが絡みつき、、、ジャングル状態に、、、😅


植物、それぞれの年の それぞれのペースがあって、人間もきっとおんなじなんだろうな。

同じ「ものさし」のなかに入れられてしまうと、やっぱりすごく窮屈で、早ければ(あるいは「速ければ」)いいか、といえばそういうわけでもない。

「ごめんごめん、コゥ! 雨が降ってきたから!」
「ロッティマーク!(渋滞だったの)」
「寝てた」
「ごめん、やっぱり今日はもう行かない」


あのころ、さんざん待たされながらも、あれ? 自分の方がおかしいのかな?
と、ふと考え込んでしまったのは、きっと無意識のうちに、それを心の奥で感じていたからかもしれないな、と今になって思います。

「コゥ! マイペンライナ(大丈夫だよ、気にしないで)!」

笑顔で遅れてくるタイの友人たちの顔を思い浮かべながら、、、

そうだね、わたしも毎日ちがうから、、、待たせることもあっていいし、自分のペースを大事にしたいな、、、
と思いつつ、ついつい休憩時間が長めの日々、、、。笑


【おまけ: 畑ガーデンのひとこま(里芋の葉っぱのうえ)】

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(じゆうな木)「カマキリさん、なんかモデルみたいですね〜! 1枚撮らせてもらってもいいですか??🥺」
(カマキリ)「おうよ、さまになってるだろう?✨ あんたもちょっと くつろいでいきな、風は感じるために吹いているんだぜ」
(じゆうな木)「きゃ〜、かっこいい💓」
 パシャリ📸✨