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本のある人生

ーーーささやかでも、家のなかに読書スペースがあり、そこには小さな書棚が置かれていて、大切に買いそろえてきた本たちがきれいに並んでいる。そこで紅茶とスコーン(もしくは日本茶と和菓子!)を頂きながら、本を読み、時折窓の外を眺めながら、ゆったりとした時間を過ごすーーー。お客さまがもし望まれるとしたら、そのような暮らしを実現するためのお手伝いができるようになりたい。最近、そう強く思うようになりました。

「最近、忙しくて、本、読んでいないんです」「最近、紙の本、買ってないんです」。そういう声を、とてもよく聞きます。そういう声を聞くたびに、私は、本屋さんは、「本のある暮らしを叶えるお店」、いや、「本のある人生を叶えるお店」なんだなあ、という思いを強めてきました。

常に何かに追われていて(追われているような気がして)本を読む時間すら確保できない。手元の小さなスマホの画面に目と脳を釘付けにされて、身の回りに意識を向けることができない。外で起きている出来事の表層(そう、「NEWS」)に振り回されるばかりで、いつまで経っても心の安寧が得られない。

そうではない暮らし。
そうではない人生。

身の回りの、じぶんが暮らしている空間にゆったりと目を向ける。いつでも手に取れる場所に、本をそっと置いておく。眺めていれば、それだけで心が落ち着く。本を読もう、って思う。そうだ、お茶いれよう、って思う。本棚のまわりを、お花で飾りたいな、って思う。種をまく。本を手に取る。紙の本の手触りを感じる。

世の中で何が起きているか。気になって仕方がないし、無関心ではいられない、って思うけれど、そう、だからこそ、自分自身が追求したいと考えるテーマ ーーそれがきっと、健康で平和な世界の実現につながるはず、って信じることーー を、本を読むことで、追求していけたらいい。傍観者、評論家のように生きていたくない。じぶんの人生のたったひとりの当事者として、じぶんはこれ、と決めたテーマを追いかけて、じぶんなりの答えを見つけて、じぶんの暮らしを創っていく。心のままに、いいな、と思えるものを、ただひたすらに追いかけていく。「美と真実だけを追求し、他は忘れろ」(ビル・エヴァンス)。最期、死の間際に、「まあ、この本を読めたから、今生の人生、よしとするか」と思えるような人生。

そういう暮らし。
そういう人生。

11か月間書店を営んできて、本屋さんは、そういう暮らし、そういう人生を実現できるように、お客様と一緒にじっくり歩んでいく仕事なんだなあ、って強く思うようになりました。

具体的に?どうやって?

いやあ、書店で時間を過ごしているうちに、「ああ、そうだよな、なにが大切なことか、忘れてたよ」って思い出してもらえるだけでも、いいなあ、って思うんです。この人だいじょうぶなの?と思われながら、書店の奥でぼやや~んとしているだけで、いいんじゃないかなあ、って思うんです。

でも、ほかにも、いくつかアイディアがあるんです。でも、それは、時間をかけてゆっくりと形にしていきます。5年、10年、15年、20年かけて。いま、(親御さんと共に)お店に遊びに来てくれている小さい子たちが、5年後・10年後・15年後・18年後(!)、成人したころ、おとなになっても自由港書店に来てくれたころ、その子たちのために、何か具体的な手助けができるようになっていたらいいなあ、って思います。

おかげさまで、弊店は2022年5月1日(日曜日)に、オープン1周年の記念日を迎えます。
4月、そして5月と、引き続きどうぞ宜しくお願いいたします!

旦悠輔|自由港書店

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