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心に自由の風を

2022年12月30日金曜日14:00-16:30。東京・自由が丘・サクラボローさんの2階をお借りして。ごくごく短い時間、ごくごく小さな空間で、本屋さんを開きました。

東京・自由が丘・サクラボロー
光と風の通る2階をお借りしました

「2022年の終わりに、区切りとして、東京でお店をやりたい」。そう思うようになったのは、会社を退職して東京を離れて京都を経て神戸にやってきて本屋を開業するまでの約4年間の日々を綴った私小説的エッセイ「私と嘘」が収められた『USO4』(rn press)が発売された、11月も終わりのことでした。

ーー心に自由の風をーー。誰に忖度する必要もない。誰に対して恥ずかしがる必要もない。じぶんが「いい」と思うものをまっすぐに「いい」と言ったらいい。気持ちのままに、すがすがしく生きていったらいい。そう勇気づけてくれる本と出会ってもらえるような、すがすがしい本屋さんがやりたい。そう思って、須磨海浜公園に自由港書店を開きました。

須磨海浜公園

その思いを、まったく同じように、東京で、発してみたい。そう思ったのです。神戸から東京まで、本を、コンテナに詰めて、キャリーカートに積んで、持っていきました。東京だから、ということを考えず、いつも(ずっと)自由港書店に置き続けてきた、自由港書店らしい本たちを、そのまま、持っていきました。

新神戸駅
東海道新幹線

自由港書店なんだから、自由が丘でやろう。そう決心したら、すぐに、サクラボローさんと出会うことができました。東急各線・自由が丘駅南口を出て九品仏川緑道に入り、10分ほど緑道を歩いたところにあるサクラボローさんは、白く美しい建築の一部を貸しスペースとして開放しておられます。自由港書店と同じように、にぎやかな繁華街の喧騒から離れた、閑静な住宅街のなかを、まっすぐ歩いて行ったところにある建物。おまけに、ガラス窓が大きく、光が通り、明るい。扉を開ければ、風も通る。ここなら、自由港書店の空気をそのまま東京で再現できるのではないか?そう思ったのです。

九品仏川緑道を辿って

当日は快晴。いつものように、キャリーカートに看板をつけて、シンボルの青い布をはためかせれば、ほら、自由港書店です。

港の雰囲気がある階段の下に看板を
いつもの看板と青い布
いつもの絵

中央の楕円形のメインテーブルに、ぐるっと一周、一冊一冊丁寧に表紙を見せて、本を平置きしました。どの本にも深い思い出があって、2021年5月の開業から1年8か月の日々が思い出され、感慨深いものがありました。間違いなく、自由が丘に自由港書店がありました。どの本も、心に自由の風が吹き渡るような本ばかり。ご来店くださいましたかたには、ささやかなお礼として、ーー心に自由の風をーーと書いたメッセージカードを差し上げたのですが、思った以上にみなさまに喜んでいただけて、とても嬉しく思いました。

入口から入ると中央に楕円形のメインテーブル
ぐるっとずらりと並びます

14時のオープンと同時に次々とお客様がいらしてくださり、16時半のクローズまで、お客様が途切れることはありませんでした。みなさん、ぐるっと、港を一周するように店内をゆっくり回遊して本選びを楽しんでくださっていて、とっても嬉しかったです。

ぐるり一周

窓際に置かれたビビッドカラーの椅子3脚を利用して、小津夜景さんの『花と夜盗』(書肆侃侃房)刊行記念フェアも可能な限り再現しました。須磨のお店で展開してまいりました小津夜景さんの『花と夜盗』刊行記念フェアは反響が非常に大きく、関東のお客様から問い合わせやリクエストをいただくことも多かったのです。がんばって一式持っていきましたが、結果、多くの方に喜んでいただけて、よかったなあ、と思いました。

窓際の椅子3脚を生かして小津夜景さんの『花と夜盗』フェアを再現

ーーー今回、一カ所だけ、東京での出店を意識して組み上げたコーナーがありました。店内一番奥に置かれた美しい木製のサイドテーブルを活用して、新しい暮らしの窓を開いてくれるような本を並べたコーナーを設けたのです。

新しい暮らしの窓を開く

奥山淳志さんの著書『庭とエスキース』『動物たちの家』(どちらも、みすず書房)+奥山淳志さんに直接お願いして仕入れさせていただいた、『庭とエスキース ブックレット』(私家版)。柊有花さんの画文集『花と言葉』。川内倫子さんが滋賀県甲賀市にあるアートセンター&福祉施設「やまなみ工房」の日々を写真におさめた『やまなみ』(信陽堂)。2017年から刊行が続いている植物をテーマにしたリトルプレス「ideallife with plants」。調香書でありながら詩集のようでもある魅惑的な一冊『香りのアルケミー』(ハタヤ商会 AYA・著)。かつて首都だった大きな都市に、最後に残ったのはひとりの女性だった――森泉岳土さんが「眠れる都市」を描いた『アスリープ』(青土社)。『日本地域情報コンテンツ大賞2022』有料誌部門最優秀賞を受賞した、徳島のありのままを伝えるマガジン『めぐる、』(あわわ)。

お客様みなさま、中央のメインテーブルのまわりをまわっているうちに、このコーナーに気が付かれ、立ち止まって、じっくりと本と向き合ってくださいました。

サイドテーブルにはミニコーナーを

「人生は、ままならない」。だけれど。おぼろげながらでも、「こんな感じなんだ」というイメージさえあれば。そして、光を感じる方へと歩みを進めていけば。気が付けば、ひとつ、またひとつ、と縁が生まれて、気が付けば、「なんか違う」と思わない、「しっくりくる」道を歩いている。そう信じられるような出会いが、今年もたくさんありました。自由港書店に接してくださったすべての方に感謝します。2023年も、皆さまの心に、自由の風が吹き渡りますように。よいお年を!

皆様に感謝です どうぞよいお年を

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