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私と嘘

はじめに

野口理恵さんが経営されている出版社「rn press」さんが、年1回、秋に発行されている文芸誌、「USO(うそ)」。その、最新刊、vol.4が発売されました。自由港書店にも、たくさん入荷しております。その、「USO4」に、私(旦悠輔)が書いた「私と嘘」というタイトルの文章を載せていただいています。

共感を集める文章を書こう、とか、同情を誘う文章を書こう、とか思わず、ただただほんとうのことを書きました。嘘の多い生涯を送って来ました。「USO」という場所だからこそ書けたことがありました。声をかけてくださり、原稿を受け止めてくださった野口理恵さんに深く感謝です。

雨の神戸港

私と嘘

「私の嘘」ではなくって、「私と嘘」。

嘘は、私の内側にあったのではなくって、絶えず、影のようにそこにあって、つかず離れず、そう、いまもなお、そこにあって、私をじっと見つめているのでした。

嘘は、わたしがついたものではなかったのでした。
嘘は、わたしがコントロールできるようなものではなかったのでした。
嘘は、わたしの外側にあって、私の意思とは無関係に、私という存在に作用してくるのでした。

嘘が、わたしの内側にあるのではなかったのでした。
嘘を、わたしが、わたしの内側から吐き出したのではなかったのでした。
わたしの内側にはいつだって本当しかなくて、それを、嘘が覆い隠してきたのでした。

嘘というものは、存在に覆いかぶさるヴェールのようなもので、私は、存在そのものが嘘的だったのでした。

だけれど。

YOU SAY YES, I SAY YES.
じぶんの人生にイエスという。
自由について、ありったけの思いを綴りました。

ぜひお読みください。
よろしければ、どうぞご感想もお聞かせください。

私と嘘と雨の神戸港

『USO』について

「USO4」に寄稿した「私と嘘」という私小説的なエッセイには、離婚をし、会社を辞め、東京を離れ、京都で激しく挫折し、神戸に辿り着いたものの店を立ち上げることができず、どうにもならない状況に陥ってしまっていた私が、神戸の西、須磨で、ようやく書店を立ち上げるところまで漕ぎつけた、その間(2017-2021)に起きた出来事のすべてを書きました。いままでも、断片的なエピソードとして、ぽろぽろと雑感を書き綴ってきたことはありますが、時々の本当の心情を含めて、時系列の流れをすべて書ききったのは、今回がはじめてです。そして、今回でおしまいです。

神戸港・中突堤旅客ターミナル

「USO4」には、私の書いた文章だけではなく、よくぞこの方が、と思ってしまうような方々が書きあげた渾身の文章がたくさん収められています。よくぞ書いてくださいました、と、読後にスタンディングオベーションしてしまうものばかりです。シリーズ4巻目にして、最大のボリュームとなり、分厚い仕上がりとなっています。これだけの「重たい」文芸誌がこの世にこうして存在するのは、間違いなく、責任編集・発行人の野口理恵さんの強い力によるものです。「USO4」には、野口理恵さんの書かれた文章も掲載されています。野口理恵さんが書かれる文章を読むと、いつも、頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けるのですが、でも、やっぱり、ホロリとしちゃうんですよね。表から見える姿、言葉から感じられる印象と、実際の、心の奥底の感情というのは、やはり、違うものですものね。

もうすぐクリスマス、そして、年末です。
どうぞ、「USO」を開いて、あなたの心の扉も、開いてみませんか。
そして、あなたも、あなたの「USO(嘘)」を、文章にしてみませんか。

神戸港の光

もはやすでに伝説の文芸誌となっている「USO」は、一時期、「vol.4」で終了となってしまうのでは、と囁かれていましたが、どうやら、形を変えて、続いていくような話も聴こえてきています。どうでしょうか。本当のことは、簡単にはわかりませんね。本当のことは、誰にもわからないのかもしれません。本当は、嘘も本当も、ないのかもしれません。明日は、どんな一日になるのでしょう。誰にもわかりません。でも、晴れると良いな。そう思います。

神戸三宮・サンポチカ(2022)

補記

私は、私のことについて、この「私と嘘」で、すべてを書ききることができました。これからは、私を離れて、私が書きたいことを、自由に書いていこうと思っています。

草原を駆ける馬のことを。
海をゆくクジラのことを。
空を飛んでいくカモメのことを。
土に潜むモグラのことを。

私は、ようやく、私からも自由になれました。

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