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えんぴつの先から一本のせんが生まれます。

すべての物語は一本のせんからはじまる―――『せん』(スージー・リー 作|岩波書店|2018年刊行)自由港書店に入荷しています。

『せん』(スージー・リー 作|岩波書店)

「世界的絵本作家スージー・リーが贈る、驚きと幸福感にみちた魔法のような絵本」(公式紹介文より)。本を開けば、1ページ1ページ、本当に魔法のよう。線はどこまでもつながって、あらゆる境界線(ボーダー・ライン)を超えていきます。「線(せん)だけでここまで表現できるのか!」と、驚きが止まりません。

『せん』(スージー・リー 作|岩波書店)

画家・イラストレーター、横山雄さんの作品集『BODYCOAST』(DOOKS|2023年11月刊行|印刷製本・藤原印刷)自由港書店に入荷しています。"BODYCOAST"って素敵なタイトルです。からだの輪郭ってまるで海岸のよう。あいまいで、滲んで、波打って。そうして生まれる、優しく新しいかたち。

横山雄さんの作品集『BODYCOAST』(DOOKS/2023)

横山雄さんの作品集、2019年にDOOKSさんから刊行の『FRAMEWORKS』も取り扱わせていただいております。フレーム・ワークス。「枠組み」。オブジェクトを構成する「枠組み」を手探りするかのように、線が引かれていきます。線はなかなか形になりません。しかし「枠組み」を突き破ろうとする<エッジ>や、逡巡を感じさせる<カスレ>に強い力が宿りだし、あるものを形にとどめようとする「枠組み」が生まれていきます。そしてそこには斬新な構図が生まれます。

横山雄さんの作品集『FRAMEWORKS』(DOOKS/2019)

澤直哉さんの散文集『架空線』(港の人|2023年10月新刊)自由港書店に入荷しています。"今、これほど澄みきった声で、本を、詩を、語ることのできる人がいるだろうか。若きロシア文学者による渾身の散文集。"(公式紹介文より) 澤直哉さんは、1987年、ドイツ連邦共和国ハノーファー生れ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学、修士(ロシア文学)。早稲田大学非常勤講師。本とは、詩とは。思いが空に架かります。

澤直哉さんの散文集『架空線』(港の人|2023年10月新刊)

人間の思い、心や言葉は、まず虚構として空に架けられる―――
(文芸科の学生たちへ向けた講義をもとにした文章「本をめぐる こころの ことばの 形にふれる」(『架空線』所収)より)

―――ぼくはね、詩というものを知ってる。読んだことがあるよ。
(ある少年と交わした会話をきっかけに、心に湧き上がる数々の思い出や詩人たちの横顔を綴った文章「発生へ」(『架空線』所収)より)

表現の自由、解釈の自由、自由詩―――自身から自由でない自由ほど疑わしいものもない。他者なくして自由はない。
(「跋」(『架空線』所収)より)

本も詩も、降って生るのを寝て待つのでなく、立ち上がり、足で強く地を蹴って、空を切るように手を伸ばし、架空を束の間摑んで作られる。だから人の心をかくも狂わせ、慄わせ、高鳴らせる。
(「跋」(『架空線』所収)より)

真っ白な本。
装丁は港の人装本室によるものです。

人間は、連続する線上を歩いていくことしかできません。一足飛びにはいけません。そうして歩まれていく線は、必ずしも真っ直ぐなものになるとも限りません。折れ曲がったり、かすれたりもするでしょう。それでも歩いていかねばなりません。

線はベクトル。方向性があります。東西南北、進むなら、どちらかにしか行けません。時間には限りがあります。東に行くなら、もう西へは行けない。南に行くなら、もう北へは行けない。選んで、歩いていかねばなりません。

藤岡拓太郎さんの傑作絵本『ぞうのマメパオ』のマスキングテープが入荷しました!マメパオが、線の上を一生懸命歩いています。マメパオといっしょに、一歩一歩歩いていきましょうね。

藤岡拓太郎さんの傑作絵本『ぞうのマメパオ』も再入荷しています!

青木亮人先生による『教養としての俳句』(NHK出版)自由港書店に入荷しています。

「教養」というのは「知っておかないと恥ずかしい常識」とか「知識としてひけらかして蘊蓄を述べて自慢するためのもの」とかではなくって、ドイツ語のBildung、英語のBecomingにあたる、自分を養い、自分を自分として形成・確立させていくことだ、と青木亮人先生は言います。

すなわち俳句は日本のリベラルアーツであるのだ、と。俳句を通じて、「わたし」と日常をむすび直す、とは果たしてどういったことなのでしょうか。本書は、平易なことばで、深遠なテーマを明瞭に解説してくれます。

青木亮人『教養としての俳句』(NHK出版)

「青い空白い鳥さん飛んでいる」までいれたらいっぱいになってしまう、5・7・5の可愛らしい器、俳句。短歌であれば、そのあと、「あのひと無事に帰れたかしら」などとつなげられるけれど。そんな小さな器だからこそ創り出せる、じぶんと世界とのつながりがあります。

ここで2句:

寒雀低く飛ぶ先水たまり 旦悠輔
吐く息の白さ余寒の家の中 旦悠輔

佐藤文香第4句集『こゑは消えるのに』(港の人|2023)

兵庫県神戸市生まれの俳人・佐藤文香さんの第1詩集『渡す手』(思潮社)が、第29回中原中也賞を受賞されました!おめでとうございます!円熟の第4句集『こゑは消えるのに』(港の人|2023年12月刊行)神戸・須磨・自由港書店に入荷しています。

秋は春へ砂糖楓の赤をゆく

ーーーもうすぐ春です。

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